ブルーアース初の敵基地攻略のための初遠征。
その随行員用の移動車両の中で、片手にお玉、片手に鍋を持ちながら乙女が絶叫する。
戦闘補佐と情報収集のためのブレイン部員8名と、ブレイン支部長フランソワーズの研究分析を手伝うためのブレイン部員1名、そしてその全員の移動中の食事を担う調理部員1名の計10名。
ブレイン8名は男性で、他2名は女性だ。
4部屋ある私室は男性陣が3,3,2名に、女性2人は1部屋という形に分かれて使用。
ところが本部が敵の襲撃を受けたということで、ジャスティスのルートとそれを送るためにブレインが2名、突然この2号車で帰還する事になって、残った随行員は1号車に合流する事になった。
その報を聞いて、その女性用の部屋で調理担当として随行した黒木翼は仕事道具を両手に絶叫していた。
「私が作ったものがアーサーさんの体内に入ってその血となり肉となる!!
それだけでも十分やばいのに、私、アーサーさんと同じ車両で寝泊まりしちゃうんですか?!
密室ですよっ?!密室!!!
遠子さん、これ本当にヤバいと思いますっ!!!」
──ええ…ヤバいですよね…主にあなたのそのテンションが……
と、桜あたりがいたら、そう突っ込んでくれたかもしれない。
だが、ここにいるのは、その桜にいつも突っ込みを入れられている、アーサー厨の暴走気質な極東ブレイン部員、遠子である。
今本部ブレインは皆忙しい。
そんな中で1人だけ暇だったので、今回のフランソワーズの補佐の研究員として抜擢されたのだ。
「ええ、急がないと!!急がないとヤバいですっ!!
私思うんですよっ。
この人数が1号車に行くとするとですね、一番広いギルベルトさんとアーサーさんの部屋を大勢いるブレイン部員に開け渡すことになるでしょう。
で、私と翼さん、ギルベルトさんとアーサーさん、フランソワーズさんとエリザさんが普通の私室に泊る事になる可能性が極めて高い!
つまりですねっ!!!」
と、そこでカメラやICレコーダーをいじりながら、遠子は血走った眼で翼を振り返った。
「アーサーさんとギルベルトさんのお二人が防音じゃない部屋に泊るんですよっ!!
てことは、アーサーさんのあの時の声がきけるかもしれないわけですよっ!!
頑張れば聞けるっ!!絶対に聞けるっ!!!
頑張れ私っ!!そして頑張れ私の機械達!!!」
と、翼にも勝るとも劣らぬ大絶叫。
ギルベルトに知れたら、良いからお前が真っ先に本部に帰れと言われそうである。
「私がアーサーさんを襲いそうになったら…」
「私がギルベルトさんに車外にツマミ出されそうになったら…」
「「止めて下さいねっ!!」」
と、そこだけはそれぞれハモる2人であった。
そんな期待を胸にわくわくしながら一号車に移動したものの、警戒されたのだろうか…部屋は端と端に割り当てられてがっくりと膝をつくことになった。
…が、そこで乙女達はめげない。
「「旅館でこそっ!!!」」
と、拳を握りしめる。
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