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「なんか…色々えぐられる事件だったな…」 帰りの電車の中で錆兎がつぶやいた。 いつものごとくその横では錆兎の肩に頭を預けて義勇がすやすや寝息をたてている。
「時を遡る事20年前。俺達が生まれるより前の話です。 この新館はまだ出来てなかったんですが、ここから数キロ先の同系列の旅館に二組のカップルが旅行にきました。
30分後、現在宿泊客のいない使ってない離れ。 「あ~!竈門さんっ!どういう事ですかっ?!」
その時携帯が振動する。和田からメールだ。 昨日聞いた情報について調べてくれたらしい。
その後聞きたい情報を和田から全て聞き出して錆兎は頭の中でそれを整理し始める。
二人きりになった離れ。 そこで茶をいれてそれを啜りながら、錆兎は考え込む。
善逸が氷川夫妻の離れに行って20分ほどした時、錆兎達の離れの玄関で 「ごめんください」 と声がかかった。 「は~い」 その声に止める間もなく義勇が転がり出て行く。
「…たく…。心配性だから、錆兎は…」 氷川夫妻の離れへ向かう道々、善逸はそう言って苦笑した。
こうして離れに戻り中に入って和室にあがりこむと、錆兎はタンスの側に自分の鞄をおいて中を探りつつ、善逸に座る様に指示をする。
「錆兎、何かわかった?」 厳しい表情で部屋に駆け込んで来た錆兎の様子に善逸が声をかけると、錆兎はうなづいた。 「炭治郎は一人の時に何か拾って、さらに母屋で氷川澄花と接触。 で、義勇が拾った時計の持ち主は氷川雅之だ。 つまり…炭治郎を返したくなかったのは氷川澄花で義勇を返したかった...
「もう、やる気足りないよなっ」 食事を摂りながら義勇が唐突に言った。
眩しい…。 善逸は眩しさに腕で明りをさえぎった。 「善逸っ!!気がついたか…」 聞き慣れた声がそう言って明りと自分を遮るように影ができる。 そのすぐ後ろで大きなため息が聞こえた。
嫌な予感がする…。 犯人の指示で警察を含む全ての人間が外庭に出るのを禁じられているので、錆兎は不安な表情で母屋から外庭に向かう善逸の後ろ姿を見送った。 まあ…おそらく色々巻き込まれすぎて自分は過剰な悲観的になっているんだろう…と思ってはみるものの、嫌な感じがぬぐえない。 (やっぱ...
善逸が母屋の取り調べ用の部屋につくと、すでに義勇を伴った錆兎は着いている。 「遅くなりました」 と善逸は和田に軽く礼をすると、勧められた椅子に腰掛けた。 そこで和田が錆兎の時と同じくプリペイド携帯を善逸に渡す。 今回は19:00に連絡があるらしい。 一応刻限は21時。 それは犯人...
目が覚めたのは鳴り響く内線でだ。 疲れきっていたせいか、錆兎にしては長く寝ていたらしい。 14 時にベッドに入って時計に目をやるともう 18 時だった。
一番端にある現在宿泊客の泊まってない離れ。 誰もいないはずなので鍵はかかっていない。 錆兎は靴もぬがずに中に入って寝室の洋室に駆け込んだ。
「おはようございます。お呼び立てして申し訳ありません。 今回の捜査責任者の和田と言います」 母屋の、昨日事情聴取に使われていた部屋に連れて行かれると、捜査責任者らしい男が立ち上がってお辞儀をする。
二人が中に入ってくると、錆兎は温かいお茶をいれる。 善逸は湯のみを手にしてようやく自分が冷えきってた事に気付いた。 「善逸君、良かったじゃないか。錆兎君が意外に元気そうで」 雅之が温かい笑みを善逸に向ける。 善逸はそれに笑みを返して応えた。
コール音 5 回で、かけた電話は留守電に切り替わった。 事情聴取が終わって戻った一人きりの離れ。 和室 2 部屋に洋室 1 部屋のそこは、一人きりだと妙に広い。 善逸はとりあえず落ち着こうとお茶を一杯入れて口に含んだ。 そのまま湯のみを手に思考の海に沈み込...
シン…とした室内。 音のない部屋に 1 人で居ると、色々と悪い想像が脳裏をぐるぐる回る。 正直待つのは苦手だ。 本当ならあちこち探し回ったりしたいところだが、別件で宿泊者の 1 人である小澤の殺人事件が起こったせいで、全員が容疑者である。