そこで茶をいれてそれを啜りながら、錆兎は考え込む。
まずアリバイを聞かれたのは17:20~18:40。
遺体が発見されたのは20時40分だったから、おそらく硬直が始まる程度に時間がたってたから単純に2時間以上たってるということで20時40分の2時間前で18時40分という感じなのだろう。
しかし始まりの17:20分というのはなんなんだろうか…。
情報が…欲しい。
情報が…欲しい。
「殺人事件の方の情報欲しいな…」
つぶやく錆兎に、隣で機嫌よく着替え用の色とりどりの浴衣を見ていた義勇が首をかしげる。
「教えてもらえないのか?」
「そりゃ…第三者だからな。
親の事あるから疑われはしないが、立場的にはここにいる人間全員容疑者なわけだし。
そんな立場の人間に捜査情報もらせないだろう。
誘拐事件は当事者だから全部教えてもらえたけど誘拐事件と殺人事件の関連性を証明出来ない限り殺人の方は無理」
「だって…両方結びついてるって錆兎は言ってたじゃないか」
全然わからない…と思い切り顔に書いてある義勇に錆兎は苦笑して、彼にしては出来うる限りの簡単な言葉で説明する。
「状況的にはそうなんだけど、証拠がない。
ようは…俺が女物のハンカチ拾って警察に届けたとするだろ?
それは俺と善逸と秋さんしかいない場所で拾ったとして、善逸は男だから女物のハンカチなんて持たないだろうから、持ち主はまず秋さんしかいない。
でもそこでハンカチに秋さんの名前とか書いてなければ、それが絶対に秋さんの物であるって証拠がないから善逸がそれは自分の物じゃないって言わない限り秋さんは返してもらえない。そういうこと」
錆兎の言葉を理解しようと義勇は真剣な顔で考え込んだ。
これでも難しかったのか…と苦笑する錆兎に、ようやく理解し終わったらしい義勇が顔をあげてきっぱり宣言する。
「善逸が自分のじゃないって言ってたって言っちゃえばいいんじゃないか?
事実ならあとで善逸に言っておけば無問題だ」
おい…錆兎はその発言にため息をついた。
つぶやく錆兎に、隣で機嫌よく着替え用の色とりどりの浴衣を見ていた義勇が首をかしげる。
「教えてもらえないのか?」
「そりゃ…第三者だからな。
親の事あるから疑われはしないが、立場的にはここにいる人間全員容疑者なわけだし。
そんな立場の人間に捜査情報もらせないだろう。
誘拐事件は当事者だから全部教えてもらえたけど誘拐事件と殺人事件の関連性を証明出来ない限り殺人の方は無理」
「だって…両方結びついてるって錆兎は言ってたじゃないか」
全然わからない…と思い切り顔に書いてある義勇に錆兎は苦笑して、彼にしては出来うる限りの簡単な言葉で説明する。
「状況的にはそうなんだけど、証拠がない。
ようは…俺が女物のハンカチ拾って警察に届けたとするだろ?
それは俺と善逸と秋さんしかいない場所で拾ったとして、善逸は男だから女物のハンカチなんて持たないだろうから、持ち主はまず秋さんしかいない。
でもそこでハンカチに秋さんの名前とか書いてなければ、それが絶対に秋さんの物であるって証拠がないから善逸がそれは自分の物じゃないって言わない限り秋さんは返してもらえない。そういうこと」
錆兎の言葉を理解しようと義勇は真剣な顔で考え込んだ。
これでも難しかったのか…と苦笑する錆兎に、ようやく理解し終わったらしい義勇が顔をあげてきっぱり宣言する。
「善逸が自分のじゃないって言ってたって言っちゃえばいいんじゃないか?
事実ならあとで善逸に言っておけば無問題だ」
おい…錆兎はその発言にため息をついた。
何か不都合がおきても錆兎ならなんとかできるだろう?と、妙に根拠のない自信を振りかざす義勇。
ああ、お前だったらやるよな、で、確かにお前が何かやらかしたら俺は絶対にフォローに入ってなんとかするんだろうな…と錆兎が思っていると、それは例えの世界で終わらなかったらしい。
義勇はおもむろに内線を取って
ああ、お前だったらやるよな、で、確かにお前が何かやらかしたら俺は絶対にフォローに入ってなんとかするんだろうな…と錆兎が思っていると、それは例えの世界で終わらなかったらしい。
義勇はおもむろに内線を取って
「和田さんお願いします♪」
と、いきなり和田を呼び出した。
そして…電話口に出た和田に止める間もなく
「あの…今思い出したんですけど、そういえば炭治郎とさらわれる前におしゃべりしてて、炭治郎があの日小澤さんの離れで人影見たって言ってたんです」
と、いつものおっとりした口調で言い放った。
うっああ~~~と思うものの…もう大切な恋人様が暴走し始めたら追いかけるしかない。
「義勇、代われ」
と、電話をかわると、
と、いきなり和田を呼び出した。
そして…電話口に出た和田に止める間もなく
「あの…今思い出したんですけど、そういえば炭治郎とさらわれる前におしゃべりしてて、炭治郎があの日小澤さんの離れで人影見たって言ってたんです」
と、いつものおっとりした口調で言い放った。
うっああ~~~と思うものの…もう大切な恋人様が暴走し始めたら追いかけるしかない。
「義勇、代われ」
と、電話をかわると、
「さらわれる直前…義勇も炭治郎と色々話ししてたらしいんですけど、義勇は本人が興味ない事以外思い出さない体質で…ふとした瞬間に色々思い出すんです、いつも。
今のもそれで…。
申し訳ないですが、そのあたりでご相談したい事もありまして、和田さん、ご足労願えないでしょうか?
あまりおおげさにして、また義勇の方に危険が及ぶと怖いので」
と、和田を呼び出す。
ああ、バレたらすごくヤバいよな…とは思うものの、それこそバレなきゃいいわけで…。
自分だけでは決して踏み出す事のないその一歩をいつもいつも踏み出す恋人様には色々な意味で感心する。
「失礼します」
3分ほどたった頃、和田が離れを訪ねて来た。
「本当にお手数おかけして申し訳ありません」
錆兎は立ち上がってそれを迎え、深々とお辞儀をする。
「いえ、貴重な証言です。大変助かります」
とそれに対して和田も深々と礼を返した。
そして双方テーブルを囲んで座り、錆兎はお茶をいれてそれぞれの前に置くと、そのまま義勇を隣に座らせて始める。
「早速なんですが…さきほど電話で申し上げた通り、義勇は誘拐される前、炭治郎が小澤さんの離れの前で人影を見たというような話を聞いてたらしいんですが、それを聞いた当時はまだ小澤さんの遺体も発見されてなくて、それが殺人事件の犯人の特定につながるかもとは思ってなくて、気に留めてなかったんです」
今のもそれで…。
申し訳ないですが、そのあたりでご相談したい事もありまして、和田さん、ご足労願えないでしょうか?
あまりおおげさにして、また義勇の方に危険が及ぶと怖いので」
と、和田を呼び出す。
ああ、バレたらすごくヤバいよな…とは思うものの、それこそバレなきゃいいわけで…。
自分だけでは決して踏み出す事のないその一歩をいつもいつも踏み出す恋人様には色々な意味で感心する。
「失礼します」
3分ほどたった頃、和田が離れを訪ねて来た。
「本当にお手数おかけして申し訳ありません」
錆兎は立ち上がってそれを迎え、深々とお辞儀をする。
「いえ、貴重な証言です。大変助かります」
とそれに対して和田も深々と礼を返した。
そして双方テーブルを囲んで座り、錆兎はお茶をいれてそれぞれの前に置くと、そのまま義勇を隣に座らせて始める。
「早速なんですが…さきほど電話で申し上げた通り、義勇は誘拐される前、炭治郎が小澤さんの離れの前で人影を見たというような話を聞いてたらしいんですが、それを聞いた当時はまだ小澤さんの遺体も発見されてなくて、それが殺人事件の犯人の特定につながるかもとは思ってなくて、気に留めてなかったんです」
「なるほど。
つまり竈門炭治郎さんが誘拐されたのは身代金目的ではなく、犯人を目撃されたからかもしれないという事ですね?」
「はい。
相手も炭治郎に気付いていたとしたら、その可能性は充分あると思います。
そう思って考えてみれば、あの身代金の受け渡しは不自然だと思うんです。
元々一人しか返す気がないなら、俺にあんな条件付けするのは無意味だと思いませんか?
身代金の二重取りをしたいなら最初から俺が自力で戻れない場合は、あと5000万出さないともう一人返さないと言えばいいわけで…。
それ以前に、1億欲しいなら2度も身代金の受けとるなんて危ない橋渡らなくても、始めから二人分で1億よこせですむはずですよね?
犯人は炭治郎を返したくなくて、でもそれを気付かれたくなかったんじゃないかと思うんです」
「なるほど!さすが総監のご子息ですね」
錆兎の言葉に身を乗り出して言う和田。
なるべくそちらに話を持って行って欲しくないんだがなぁ…と、錆兎はそれに対して内心苦笑しつつも続ける。
「そう考えるとですね…誘拐と殺人は同一犯の可能性が出て来るんで、殺人が解決すれば誘拐も解決するんじゃないかと思うんです。
で、さきほども申し上げた通り、義勇なんですが…」
と、そこで錆兎はチラリと義勇に視線を向け、義勇はきょとんと錆兎を見上げた。
「情報の取捨ができないというか…きっかけがないと思い出さないと言うか…。
あるいは炭治郎からもっと重要な情報を聞いてるかもしれないんですが、今の時点だと忘れてて思い出さないんです。
逆に言うと、何かのきっかけで今回の様なすごく重要な事を思い出す可能性もなきにしもあらずで…。
俺も警察関係者の身内なので、それが許されない事で、本当に無理なお願いというのは重々承知しているんですが、義勇が思い出すのに与えるべき情報以外は絶対に俺一人の胸のうちに閉まって漏らしませんので、ある程度の殺人事件の側の捜査状況を教えて頂けないでしょうか?
このまま知っていて思い出さないままだと、義勇の方にも危険が及ぶ可能性がありますし。
つまり竈門炭治郎さんが誘拐されたのは身代金目的ではなく、犯人を目撃されたからかもしれないという事ですね?」
「はい。
相手も炭治郎に気付いていたとしたら、その可能性は充分あると思います。
そう思って考えてみれば、あの身代金の受け渡しは不自然だと思うんです。
元々一人しか返す気がないなら、俺にあんな条件付けするのは無意味だと思いませんか?
身代金の二重取りをしたいなら最初から俺が自力で戻れない場合は、あと5000万出さないともう一人返さないと言えばいいわけで…。
それ以前に、1億欲しいなら2度も身代金の受けとるなんて危ない橋渡らなくても、始めから二人分で1億よこせですむはずですよね?
犯人は炭治郎を返したくなくて、でもそれを気付かれたくなかったんじゃないかと思うんです」
「なるほど!さすが総監のご子息ですね」
錆兎の言葉に身を乗り出して言う和田。
なるべくそちらに話を持って行って欲しくないんだがなぁ…と、錆兎はそれに対して内心苦笑しつつも続ける。
「そう考えるとですね…誘拐と殺人は同一犯の可能性が出て来るんで、殺人が解決すれば誘拐も解決するんじゃないかと思うんです。
で、さきほども申し上げた通り、義勇なんですが…」
と、そこで錆兎はチラリと義勇に視線を向け、義勇はきょとんと錆兎を見上げた。
「情報の取捨ができないというか…きっかけがないと思い出さないと言うか…。
あるいは炭治郎からもっと重要な情報を聞いてるかもしれないんですが、今の時点だと忘れてて思い出さないんです。
逆に言うと、何かのきっかけで今回の様なすごく重要な事を思い出す可能性もなきにしもあらずで…。
俺も警察関係者の身内なので、それが許されない事で、本当に無理なお願いというのは重々承知しているんですが、義勇が思い出すのに与えるべき情報以外は絶対に俺一人の胸のうちに閉まって漏らしませんので、ある程度の殺人事件の側の捜査状況を教えて頂けないでしょうか?
このまま知っていて思い出さないままだと、義勇の方にも危険が及ぶ可能性がありますし。
もちろん、義勇の方にも教えた事の口止めはします。危険ですから」
錆兎の言葉に和田は悩んだ。
しかし最終的に覚悟を決めたようだ。
錆兎の言葉に和田は悩んだ。
しかし最終的に覚悟を決めたようだ。
「これは…露見すれば私のクビが飛びますが…鱗滝さんの身元、これまでの経歴や行動を信用しましょう。
ただし他に知れると絶対にまずいので、私個人の携帯とのメール連絡にして下さい。
メールは内容を確認したら即消す事。よろしいですね?」
まあ…苦肉の選択なんだろうな…と錆兎は自分で言い出しておいて心中和田に同情する。
捜査情報を部外者に漏らすなんて事は本人も言っている通り絶対に許されない、クビですまないかもくらいの事だ。
しかし…ここで下手に断ってそれが原因で”警視総監の息子の関係者”を万が一死なせるような事になったら…それはそれですごい騒ぎと言うか…下手すればマスコミにない事ない事書き立てられて警察人生どころか人としての人生が終わりかねない。
「もちろん…情報の漏洩には細心の注意を払います。
道義的にも許されないというのもありますし、俺も…警察関係者の身内でそういう事を熟知している身でありながらそんな事をお願いしたと父に知れたら確実に勘当されますから」
まあこれも事実なわけで…自分の方も崖っぷちな事情は和田の方にも明かしておく。
あまり長くいると問題になるので、それ以上はメールでと言う事にして和田は帰って行った。
ということで、警察が知りうる限りの殺人関係の情報は入って来る事になった。
ただし他に知れると絶対にまずいので、私個人の携帯とのメール連絡にして下さい。
メールは内容を確認したら即消す事。よろしいですね?」
まあ…苦肉の選択なんだろうな…と錆兎は自分で言い出しておいて心中和田に同情する。
捜査情報を部外者に漏らすなんて事は本人も言っている通り絶対に許されない、クビですまないかもくらいの事だ。
しかし…ここで下手に断ってそれが原因で”警視総監の息子の関係者”を万が一死なせるような事になったら…それはそれですごい騒ぎと言うか…下手すればマスコミにない事ない事書き立てられて警察人生どころか人としての人生が終わりかねない。
「もちろん…情報の漏洩には細心の注意を払います。
道義的にも許されないというのもありますし、俺も…警察関係者の身内でそういう事を熟知している身でありながらそんな事をお願いしたと父に知れたら確実に勘当されますから」
まあこれも事実なわけで…自分の方も崖っぷちな事情は和田の方にも明かしておく。
あまり長くいると問題になるので、それ以上はメールでと言う事にして和田は帰って行った。
ということで、警察が知りうる限りの殺人関係の情報は入って来る事になった。
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