kmt ツインズ!錆義
ということで、半ば一目ぼれと言う、実にこれまでの自分らしくないと思える形でげっとした年上の彼氏は、恋愛という事になるといちいち照れるし子どもっぽい可愛い一面もあったが、人生経験はアオイよりずっとあって、苦労もたくさんしていて、付き合えば付き合うほどに恋情はもちろんだが、尊敬の念も...
ツインズ!錆義
「パパが捕まったぁ??」 アオイが高校から帰ると、ちょうど母が身支度をしていた。 父親が今警察にいて、身元引き取り人になって欲しいと電話がかかって来たというのだ。 いったい何があった?と訊ねたいところだが、なんとなくわかる気がする。
「へ…?父親??」 結局その後、警察が来た。 そして救出。 錆兎は気を失っている義勇に付き添っていて、後の事は全て真菰がやってくれたらしい。 色々ショックが大きかったのか、義勇はまだ意識が戻らずベッドの上だ。 殴られたのが顔、ようは頭だったので、どちら...
運が良かったのだろう。 随分と頑張ってくれるタクシーだった。 追跡は運転手に任せて、錆兎は真菰に電話をかける。
トランクの中に押し込まれていたので視界的には何もわからない。 頼りの耳にしばらくは入って来ていた他の車の音が入って来なくなった時点で義勇は恐怖した。 すなわちそれはこの車が他の人間もいる街中を抜けて、人通りの少ない場所へと向かっていると言う事だからだ。
こうして色々をつらつらと考えている間に目的地へ。 元々 10 分前行動を心掛けているのだが、今日は特に自分の用事でつきあってもらうので遅刻はできないと、それより多少早く着くように出て来た。
義勇が高 3 の 1 月の終わり。 2 月 8 日生まれの義勇の誕生日がもうすぐ来る。 そしてそれは錆兎にとって特別な事を意味する。
「今日は炭治郎は部活だし、叔父さんは外せない仕事、俺はちょっと野暮用だから、可哀想だけど家で大人しくしててくれ」 土曜の朝のことである。 いつもは誰かしらいる家も、今日は皆予定があって不在らしい。 錆兎は今週は食事当番なので朝食を並べながら、当番が決まって...
──ふ…ざけるなっ!! リビングに通されて事情を聞いた時、錆兎は頭にか~っと血が上った。
錆兎の叔父、耀哉も少し遅い朝食を摂り終わって身支度を終えると、義勇が連れて行かれたのは病院だった。 確かに殴られたはずみで口の中を切って唇に血がついていたので、錆兎にはひどい怪我のように思われてそう聞いたのかもしれないが、他はせいぜい打撲くらいだ。
幼い頃からもう、義勇には神様に救いを祈るという発想すらなかった。 だって、神様が救わなければならない大きな不幸を背負った人達はいっぱいいて、義勇のようにちっぽけな不幸程度しかない人間にまで手は回らないだろうと思ったから。
清々しいほど晴れた休日の朝の事である。 男 3 人所帯なので食事当番は週替わり。 今週は自分の当番なのでキッチンに立っている炭治郎はかなり緊張しながら、家族 3 人プラス急きょ増えた客人 1 人、合わせて 4 人分の朝食を作っている。
そして 5 分後…錆兎は叔父の分と2つコーヒーの入ったカップを持ってリビングへ。 「遅くに訊ねて悪かったね」 と、こんな時間に呼びだしたのに先に謝られてしまった。
なんとお姫さんが男だった! 朗報なんだか悲報なんだか微妙なところだ。
そして大通りにつくと、タクシーを待つ。 その時に錆兎が言った ──かぼちゃの馬車は休業中だから、今日は悪いけど車な? という言葉は普通にあり得ないと思うのだが、ここまでの展開があまりにあり得なさ過ぎて、 休業中じゃなければ本当にかぼちゃの馬車で迎えにくるの...
子どもの頃は暗闇が怖かった。 寝かせるためにと親が電気を消してしまった部屋にいるのが怖くて、よくこっそり隣のアオイの部屋に行って一緒に寝てもらった。
付き合い始めて日課となった 21 時半の確認コール。 もちろん無事変わりないとわかったから即るとかではなく、そこから約1時間ほどはマイク&オンフック状態でアオイの可愛いおしゃべりを聞きながらお仕事タイムである。
「服良し、財布良し、靴も良し。 スケジュールもたててあるし、行く予定の場所や店の連絡先も OK ! 抜けはないな」
──もし自分が少女だったなら…… 義勇はよくそう思っていた。
速報──彼女が可愛い、本当に愛らしい。 もう今までの 17 年間、自分に恋人がいなかったのは彼女と出会うためだったんじゃないだろうか…そう思う勢いで彼女が可愛い。