kmt 狙われやすい少年について
こうして義勇がまず着いたのは胡蝶家だった。 そこには胡蝶姉妹と2歳下の従妹の栗花落カナヲが3人で住んでいる。 今日はそこに義勇と錆兎さん、それに錆兎さんが呼んだ真菰さんが集まっていた。
まだ小さいから…あの着物が似合う頃になったら… と言われてから10年ほど。 おりしも両親が亡くなって叔父が接触してきたのが、まさにあの着物を着られるくらいの年頃なのが怖い。
上への階段の裏側。 ずっと物置か何かのドアだと思っていたそれを開けると、なんと下に伸びる階段があった。 ある程度の年になった今ならその時点で危機感を感じるところだが、なにしろ小学1年生だ。 まるで秘密基地のようだとワクワクしながら叔父に抱えられて地下へと降りた。
祖父の葬式以来なので、1年弱ぶりくらいの母の実家。 義勇が訪ねていくと、まずキッチンで少し冷たいお茶を出されてその場で飲むように言われる。
思えば両親、特に母は義勇にとっての防波堤、高い防御壁だったのだと思う。 それが父と共に一度になくなって、義勇は一気に身の危険にさらされている。
なし崩し的に助勢をすることになってしまったが、少なくとも自分は現場責任者ではあっても総責任者ではないはずだ。 自分をまきこんだ責任者にもそれなりに動いてもらおう。 錆兎はそう判断して、その場で真菰に電話をかけて、義勇に凸されてから今までの流れを説明する。 そのうえで言った。
ホームにつくとまず目に入ってくるのは甘露寺の派手な色合いの髪。 その横には当然のように伊黒が立っている。 そうして心配そうな表情の甘露寺の視線の先をたどると、ホーム中央あたりにあるガラス張りの待合室の椅子で泣いている少年。
さて、何から手を付けるべきだろうか…… 冨岡弟、もとい義勇を車で自宅に送ったあと、錆兎はオフィスに戻って少しだけ仕事を片付けて、いつもよりもだいぶ早めに自宅マンションに戻った。
──姉さん、ただいま~ 錆兎さんのオフィスから車で家の前まで送ってもらって、義勇がドアを開けて玄関を入ったら見慣れぬ男物の靴があった。
あれから錆兎さんに連れられて、彼が友人達と一緒にやっている会社のオフィスに行ってきた。 都心のど真ん中とは言わないが、まあそこそこ栄えている都市の駅近の立派なビル。
(…真菰のやつ…これ、俺が放置で逃げられないとわかって面通ししただけであっさり引いたんだな…) 錆兎は大きくため息をついた。
初っ端にいきなり全てを断ると拒否された時は厳しい性格の人なんだと思ったが、今こうしてみるとこの人はずいぶん優しい人なんだなと思う。 暑いところで話をするのに、自分の分だけじゃなくて押しかけて迷惑をかけている義勇の分まで当たり前に飲み物を用意してくれて、さらに飲むのが遅い義勇のため...
こうして連れていかれたのは大学の中庭だ。 残暑の続く9月の終わり。 まだ暑いのもあって人気はなく、込み入った話をしても聞かれないような場所である。 ただパラソルで直射日光はさえぎられているが暑いには暑い。
気分は決死隊だった。 これがダメなら取れる選択肢は二つだけ。 姉を犠牲にするか自分が犠牲になるか…だ。 だから内向的で人見知りの義勇にとっては本当に大学の方に行くだけでありえないくらいの行動だった。
とある週末、真菰さんの従兄弟に会うことになった。 その前日も父方の伯父から姉に従兄と結婚すればいい、そうすれば未成年の義勇ごと保護してやれるという電話が来ていた。
こうして八方塞がりに思えた現状を打開するきっかけをくれたのは、姉の大学の友人だった。 姉と同じようにいかにもお姉さんといった感じの優しくきれいなその人は、義勇の高校のクラスメートの胡蝶しのぶの姉だったらしい。
やるということと出来るということの間には大きな違いがある… 一所懸命にやったからと言って、必要な結果にたどり着くとは限らないのだ。
人生何がどう転ぶかわからないものである。 例えば今こうして飲み物を勧めたのは、あまりの会話のなりたたなさに、一息入れるだけのはずだった。
目の前の少年は綺麗な青い目をしていた。 正門で錆兎を探していた時にはかろうじて目のふちに踏ん張っていた透明な雫が、今は宝石のような青から形成された水晶のように溢れ出て、白い頬を伝ってころんころんと零れ落ちている。
「ということで、おそらく事情はおおかた伝えられて知っていると思う。 念のため、ここに来たのはカナエの妹のしのぶから姉が暴走していると思うから助けてくれと言われたからだ。 だが、真菰がここにいると言う事で、俺に何かさせようと思っているのだろうと言う事は今察した。 それがカナエのいう...