諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_48_不死川実弥の迷走

…ぎゆうから…は…さね…み…の…たのもしさ…に……

あれからずっと実弥は風柱屋敷にいた。
しかし柱とはいえ新人柱で、しかも真菰のように雑務を全て引き受けてくれる有能な姉弟子が居るわけでもない匡近はかなり忙しい。

なので錆兎の所で厄介になっていた時のように、柱の任務以外に実弥を連れていける任務を引き受ける余裕は滅多になく、匡近の同行なしで任務を受けられない実弥は家事と鍛錬の時間以外は自分と義勇の物語の制作に時間を費やしていた。

無駄に時間があるので字は上手くなったと思う。
なので山のような量の物語を書いては見たが、匡近に読ませると相変わらずため息交じりに
──面白くない…。というか、義勇君には錆兎さん一択だろ。
などと他の女性隊士達のようなことを言う。

あまつさえ
──任務で疲れてるんだ。お前も時間があるなら仁美先生のような話を書いて読ませてくれ。
などと、どうやら錆兎と義勇の恋愛を描く有名な女性隊士の名をあげてまで否定してくる。

ダメか?そんなに俺の小説はダメなのか?!

確かに匡近は慣れぬ柱の任務で疲れ果てていて、今までのように実弥を思いやってくれる余裕がないのだろう。
しかしあまりにきっぱりと否定されるので、さすがに実弥も落ち込んだ。

そして落ち込んで落ち込んで落ち込んで…思いつく!
あれから2年ほどが経ち、実弥だって文章が上達してきたはずなのだから、そこまで面白くないわけがない。
匡近は疲れていて、身内の自分に少しばかり八つ当たりしたい気分なのだろう。
ならば他の人間に読んでもらえばいい!!

さてどのあたりに読んでもらえばいいのか…と考えた時にまず、女性隊士達には錆兎と義勇の話が広まり過ぎていて、いきなりその二人以外の恋愛小説を読ませるのは難しい。
だから目指すは男性隊士の間に広める事。

鬼殺隊は女よりも男の方が多いのだから、男にウケて男の間で広まれば多数派になれるし、そのうちに女性の方でも読む人間が出てくるかもしれない。

任務は行けない…じゃあどうやって他の隊士に読ませるか…。
考えて考えて考えて…そしてハッと思いついた!
藤の家だ!
隊士が立ち寄るであろう藤の家に本を置かせてもらえばいい!

そう思い立つと実弥はこれまで書いた話を紐で綴じた物を風呂敷に包んで、風柱屋敷を出てここいらで家のない隊士がよく泊めてもらう藤の家を回ってそれを置いてもらった。

これで広まるはず!…と、そう思ったのだが、それから数週間経っても何も変わった様子はない。
匡近も特に何も言わない。

おかしい…と思った実弥は本を置かせてもらった藤の家を回って隊士達が読んでくれたかを聞いてみたが、家の人間は申し訳なさげに、いったんは暇つぶしにと手に取る隊士も居たが、すぐに読むのをやめて戻していたと報告してくる。

…つまらない…という匡近の感想の言葉が実弥の脳内をくるくると回った。
真菰の仲間達が書いた本は人気でなかなか借りられないと匡近が言っていたので、書きさえすれば読まれるものと思っていたがそうではないのだと実弥はここにきてようやく悟った。

そしてようやく他人に読んでもらうには他人が読みたいような要素をいれねばならないのだというところに行きつく。

真菰の仲間の本が女性隊士にウケるのは、まず人気の柱とその継子の恋愛物語という点で、そのあたりは義勇の相手は自分でなければならないので参考にはならない。

あとは…洒落た言葉や出来事というのもあるが、それも実弥には知識がなさ過ぎて真似できない。

そうやって一つ一つ考えてみるが、なかなか模倣できそうなものがない。
しかし…しかしだ、とりあえず読者層が女隊士ではなく男隊士なら、なにも女性向けの話を模倣しなくてもいいんじゃないだろうか…と、実弥はさらにそこに行きついた。

女にウケなくてもとりあえず名が売れるまでは男にウケれば良いのだ。
そして男にウケるとしたら…ネタはもう一つだろう。
そう思って実弥は新たに題材を絞った新作を書き始めた。




0 件のコメント :

コメントを投稿