結局もう匡近の継子となるしか鬼殺隊に残る道はない。
今回の任務で自分がやらかしたことが周りにどう映るか、周りに何を懸念されるかを説明されて、さすがの実弥も納得せざるを得なかった。
…ということで、実弥はこれから匡近の継子として匡近がお館様から拝領した風柱屋敷で暮らし、任務は匡近と二人きりのもののみということになるので、今後はなかなか他の人間と…もっと言うなら義勇と接触する機会がなくなってしまった。
前回、錆兎に預けられた時に最終的には信頼を取り戻して普通に任務に戻ることを許してもらえたし、今回も匡近の元で真面目に大人しくしていればまた許してもらえるだろう。
そうは思うものの、それがいつになるかはわからない。
前回は半年強だったから、二度目の今回はもう少しかかるだろうか…。
それまでに変な虫がつかないようにしないと…と実弥は真菰に最後に真菰も一緒でいいから義勇と話したいと申し出た。
長い時間をかけてようやく少しばかり築いた真菰の信頼は、今回の任務で地の底まで落ちたらしい。
久々に見るゴミクズを見るような真菰の視線。
だがそこは傍にいた錆兎が
「会う会わないの判断は義勇に任せないか?
あまりガチガチに管理をしすぎると、目を盗むようになる可能性もあるぞ?」
と間に入ってくれた。
この屋敷に居る間、義勇は決して実弥に対して友好的な様子ではなかったため、あるいは自分で断るだろうと思ったのだろう。
真菰がそれを了承したことで、錆兎が自ら義勇に聞きに行ってくれる。
しかし意外なことに義勇は飛んできた。
しかも満面の笑顔で。
一瞬それに喜んだ実弥だが、その可愛らしい笑顔で紡がれた
「とうとう出ていくんだなっ!元気でなっ!」
と言う言葉で思い出した。
自分は何故か義勇に錆兎を取ってしまう人間として警戒されていたんだった。
ああ、そうだった…とがっくりして、しかし今生はそういう態度にもいい加減慣れてきたのもあって、すぐ立ち直る。
ところがところが、そこで全く悪気のない錆兎の
「こら、義勇。言い方が悪い!
それではせっかくの実弥の新しい門出なのに、出ていくことを喜んでいるみたいに聞こえるぞ。
それを言うなら、『実弥もやっと兄弟弟子水入らずで暮らせるようになったんだな』とかだろう?」
と言うフォローの言葉でまた落ち込んだ。
何が悲しくて惚れた相手から離れる事を喜ばれていることをライバルに慰められなければならないんだろう。
しかも義勇は義勇で
「いや?実弥が出ていくのが嬉しいという解釈が正しい。
錆兎を取られずに済む」
などと錆兎に説明をして、実弥の傷口をぐりぐりと広げてくれる。
しかし、しかしここはその誤解を解いておかねばならない。
しばらく会えないかもと思えば余計に”今!”解いておかねばならない!!
そこで実弥は言う。
思い切って言う。
「俺は別にお前から錆兎を取ろうなんざァ思ってねえ。
つ~かよ、俺が惚れてんのは錆兎じゃなくててめえの方なんだよ、冨岡ァ」
言ったっ!ついに言ったっ!
もう緊張して頭が真っ白になったがついに言った!!
……が、あまりにも必死で実弥は周りに錆兎も真菰もいることを忘れていた。
いきなり始めてしまった告白劇に二人ともぽか~んとしている。
うああ~~!!!そうだったっ!二人きりじゃなかったんだっ!!
と、今更ながら思ったが後の祭り。
もうここまで言ったなら言ってしまえと半分やけくそで
「だから…俺が匡近のとこで真面目に勤めを果たしてまた許されて自由に出歩けるようになったなら迎えに来るから一緒に暮らすぞォ!」
と言うと、義勇は綺麗な青い目を丸くして…しかしいつもの錆兎ばりの淡々さで
「お前が言うとこれから刑務所に入る罪人みたいだな」
と頓珍漢な感想を述べた。
もう慣れた。義勇の頓珍漢さには慣れたつもりだったがあまりに斜め上な感想にさすがの実弥も言葉を失う。
そんな実弥を前に義勇はさらにとどめを刺しに来た。
「なんで俺がお前に迎えに来られるのかも、一緒に暮らさなきゃいけないのかも全然わからない」
「いや、だから…その前に言っただろうがァ!俺はお前に惚れてるから…」
「お前はそうまでして錆兎から俺を引きはがしたいのか。
俺は騙されないし錆兎は渡さない。
錆兎は俺のだ」
もう諾否以前に信じてもらえない。
というかここまで言ってもまだ実弥が錆兎を狙っているのだと信じ込んでいる。
俺は騙されない…とか、まるで前世の伊黒かよォと実弥は頭を抱えたくなった。
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