諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_40_水柱、最後の説教

──兄弟子相手に最低だよね…
久々に見る絶対零度の真菰。

──どっちかってえと、粂野よりお前が土下座するとこじゃね?
と、宇髄の視線も冷ややかだ、

そして前回は手を差し伸べてくれた水柱はと言えば……
──匡近、とりあえず土下座はやめろ。話をするなら目を見てと真菰が言ってただろう?
とまず匡近にそう声をかける。

その様子に自分に対してはどんな対応なんだろうか…と、実弥はドキドキしながらその言葉と視線を待った。

こうなったらもう彼、水柱渡辺錆兎が唯一の自分の生命線だ。
彼が自分を見捨てたら、もう匡近がどれだけ頑張っても除隊だろう。

そう思ってぎゅっと手を握って俯いて固まっていると、はあ~っとため息が聞こえてきて、
──お前は…少し考えて行動しろ。
と呆れたような声でそう言われてホッとした。

他の二人と違ってまだ温度のある声音。
おそらく呆れはしているものの、見捨てるまでは行かない…そんな感じに聞こえる。

「とりあえず…ここは水柱屋敷の正面、いわば顔のような所だ。
うちわの揉め事を話すのにふさわしくはない。
場所を移すぞ。
匡近と実弥はついてこい。
宇髄と真菰は…自由にしてくれ」

そう言われて匡近と実弥は拒否権なく宇髄と真菰は気になって、先に立って歩きだす錆兎の後をついていく。
錆兎が向かったのは母屋の端にある道場だ。
そこでドカリと胡坐をかいて座ると、匡近と実弥にも座るように言った。

まず匡近が正座をして、その後実弥もそこは空気を読んで匡近にならって胡坐ではなく正座をする。
宇髄と真菰は錆兎の横に座り、全員が落ち着いたところで錆兎がため息交じりに言った。

「実弥っ」
「はいっ!」
名を呼ばれて実弥は返事をする。
こんなに素直に返事をしたのはどのくらいぶりだろうかと思うくらいに神妙な面持ちで返事をした。

「お前は柱というものの意味をわかっていなさすぎる。
いったい柱をなんだと思ってるんだ」
と、そう続く錆兎の言葉。

正直前世では風柱だったのだからその言葉は心外ではあったが、そこで反抗するほどには状況が読めていないわけではない。

「隊士の中で一番力の強い奴の呼称じゃないですか?」
とそれでも黙っていても仕方ないのでそう言うと、錆兎は小さく首を横に振った。

「正確には剣術が強いというのは手段であって目的ではない。
ただ力が強いだけでは柱としては不十分だ。
柱は剣術も所作や生き方も、その他全てにおいて隊士の模範であるべき存在だ。
力が強くてもそれを誇示するだけなら意味がない。
その他よりも強い力をどう使うかが問題なんだ。
自分のためだけに使って強い人間だともてはやされたいなら、柱になんてなることはない。
ひたすらに強い鬼を斬り続ければいい。
そうだな…一人で上弦の1体でも斬れば、柱より強いと証明されるんじゃないか?
そこを目指して鍛錬をすればいい。
柱に必要な資質は、自分の強さをいかに隊全体のため、自分よりも力のない隊士や一般の人々のために使えるかだと思う。
個人の強さが単独で強い敵を倒すことならば、柱の強さは必要な人間を全て守り、他者に安心感を与え、隊士の希望になることだ。
今回お前は別に匡近を拘束して危険に晒そうとしたわけじゃなくて、おそらく自分が多くの鬼を斬る事で階級を上げて柱に近づこうとしたんだろうと思う。
だが他者を出し抜いて命令を無視して倒した鬼の数で階級を上げたところで、柱として認められる隊士になれるかというとそうではないんだ。
やってきたことを他に知られたなら、よしんば他になる人間が居なくて数合わせのように柱になっても、軽蔑はされても尊敬はされない。
柱になったから尊敬されるわけじゃない。
尊敬されるような行動を規範として生きる人間の中でたまたま強かった者が柱になるんだ。
お前はそういう意味では他者よりも自分の気持ちを優先しすぎる。
今の状態だと、剣士として強くなったとしても、上に立つ者としてはふさわしいとは言えないと思うぞ。
誤解のないように言っておくが、それが悪いというわけではない。
例えば宮本武蔵とかは剣術家としては知らぬものが居ないほど有名で剣術の腕は誰しもに賞賛されているだろう?
だが集団の長にはなる人間ではない。
お前が自分を変えられないと言うなら、目指すのはそういう方向じゃないか?」

あ~…あんたはそうだよなぁ…と錆兎の話を聞いて実弥は納得した。
たぶん前世での煉獄もそうだ。
2人とも強いのは当たり前として、その行いや性格で皆に慕われ敬われるお殿様だ。
そして求められる柱と言うのは理想としてはそういうものなんだろう。

実弥だって自分は前世の柱でその地位にふさわしい強さがあるんだと思いつつも、困った事があった時にはそのあたりに相談したくなる。
それは彼らは困っている者を見捨てない、そんな雰囲気を醸し出しているからだ。

「柱は文字通り皆を支えるためにそびえ立ち、困った時には頼り寄りかかれる大黒柱のような存在でなければならない。
我欲に走った行動を取った時点で、もう誰もそうは思えなくなるだろう?」
と錆兎に言われれば、実弥だって御説ごもっともと言いたくはなる。

しかも実弥のようにそうなれない者を切り捨てるでもなく、他の道を示してくれすらする懐の深さはもう感動ものだ。

確かに実弥のように他人を優先できない人間は孤高の武蔵の方がまだ目指しやすいのかもしれない。
しかしそれではダメなのだ。
孤独な人生にならないよう、人に慕われて囲まれるために今生を生きているのだから、孤高の剣豪になっても何の意味もない。

「…俺は…剣豪になりてえわけじゃねぇ。
惚れた相手に好かれて頼られて頼らせてやって…ずっと一緒に生きていく…そんな人生を送りてえだけだァ」

無理だとはっきり言われても別の道を示されても、それでも諦めきれなくてそう呟く実弥に錆兎は
「別に誰か想い想われる伴侶が欲しいだけなら柱にならなくてもよくないか?」
と不思議な顔をする。

「…お前も真菰も世間の奴らも…柱にくらいならねえと冨岡との仲ァ認めねえだろうがァ」
と、もう隠す気もなくそう言うと、

「別に?柱だろうと義勇本人が嫌がれば認めないし、柱じゃなくとも義勇本人が好きだと言うなら止めはしないが?
まあ…何かあった時に助けられるよう見守りくらいはするが…」
と錆兎が、
「はあぁ??柱になろうがなるまいが、あんたなんかに可愛い義勇を任せられるわけないでしょ?」
と真菰がきっぱりと言った。

そして最後に宇髄が
「まあ義勇の頼れる男の基準は錆兎だからな?
柱になったってこれを超える男になれねえなら無駄だし、一生かかっても無理じゃね?」
と容赦なくとどめを刺して来る。

唯一何故か全く気付いていなかったらしい匡近が
「え?え?義勇君を??
実弥、そうだったのかっ…。
う、う~ん……」
と土下座の姿勢で顔だけあげて動揺した顔で戸惑っていた。


「義勇に好かれるという意味でも、今回のやり方は逆効果だな。
というか相手が義勇じゃなくとも兄弟子を出し抜いて斬った数を増やすような方法で柱になっても軽蔑されはしても好かれはしないと思うぞ。
実弥は剣術的には本当に以前とは比べものにならないくらいに強くなった。
だから今度は精神を磨け。
卑怯な手を使ってなる柱より、兄弟子をしっかり支え助ける一般隊士の方が絶対に心証は良い。
とはいえ、本当に今度こそ普通の任務には出入り禁止だろうから、残れるとしたら匡近が常に共に就くという前提で匡近の継子になるくらいか…。
それなら俺も一緒に頭をさげてやる。
あ、でも匡近は弟弟子可愛さに早めに引退して譲ってやるとかはやめろよ?
それをやるといよいよ実弥が完全に孤立するからな?」

最終的に錆兎からそういう言葉が出て、匡近は心底ホッとした顔をしてまた土下座。
実弥は継子という話が出た時点で、柱の後継者なら匡近の気持ち次第では…と一瞬気持ちが浮上したが、そのあたりは錆兎にしっかり釘を刺されてがっかりする。

…が、まあ仕方がない。
鬼殺隊を首になったら本当に義勇と全く接点がなくなってしまうし、なんなら家族も知り合いもいなくて孤独死まっしぐらだ。

「…わかった。じゃあそれで…」
と仕方なしに頷いたなら、また何かが凄い勢いで飛んできて、頭を掴んでガン!と床にうちつけてくる。

そして
「あんたねぇっ!!何他人事みたいに言ってんのよっ!!
『わかった』じゃないっ!!!
わ・か・り・ま・し・たっ!匡近様、そのようにして頂ければ大変ありがたく思います。何卒よろしくお願いいたします』でしょっ!!!
今回は下手すれば殺しちゃうかもしれなかった相手にお世話になるんだから、丁重にお願いするところでしょっ!!」
と、久々に真菰に礼儀を叩き込まれた。






2 件のコメント :

  1. 不死川は相変わらず自己中ですね😑呆れますね😓どのような方々が錆兎達の味方で登場されてくるのかこれからの展開が楽しみです。

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    1. 次回から少しずつ、宇髄に続く第二の協力者が流され始めます😁

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