諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_52_元忍が来るまでの仕分け

──結論から言うと、実弥はこちらが関わらず周りから潰させる。

さきほどまであれほど疲れたような不安そうな顔をしていたというのに、その言葉を口にした時の錆兎はもう、筆頭家を率いる大将の顔をしていた。

それに対して真菰も怜悧な軍師の顔をして、
「自分で潰すのは多少の爽快感はあるかもしれないけど、義勇を守るというのは一過性の事じゃないからね。
長期的な目で見ればそれが正しいね」
と頷いて見せる。

そう肯定したあと、しかし真菰はそこで続けようとする錆兎を制止した。

そして
「絶対的に裏切らない味方で絶対的に他に漏らさない理性がある人間を動かすなら、状況は共有しておいた方が良いと思う。
元忍も呼んできちんと話をしよう:
というと自分の鎹鴉を呼んで、宇髄に早急に館に来てくれるようにと伝えて飛ばせる。

その一連の行動を行う間、錆兎が異議を唱えなかったので真菰はそれを了承とみなして宇髄が来るまでの時間について
「とりあえずあの人のことだからすぐ着くとは思うけど、時間は有効に使わないとね。
まだ読んでない冊子半分貸して。
無理やり描写と性描写のあるものだけ省くんでしょ?手伝うから」
とやまと詰まれた冊子の方へと手を伸ばした。

「…めちゃくちゃ読みにくくて疲れるぞ?
こちらで対処しなくても、あるいは問題部分まで読み進めるやつは少数かもしれないが…」
と言いつつも、錆兎は実弥が暇に任せて書いた多数の冊子の山を半分渡して来る。

それを受け取って一番上の一冊のページを開いてみて、真菰は
──うわぁ…
と思わず声をあげた。

──しょっぱなから無茶読みにくい文だね。
ととりあえずの感想を言うと、

──読む人間の事を全く気にせず思いつくまま書きたいままを書いてるんだろうな
と錆兎はため息。
自分もさきほどから目を通していた一冊の続きのページを開いた。

一文が無駄に長い。
字が汚い。
え?と思うような誤字が多い…もう内容以前に読むのが辛い。

「おそらくな…元々本を多く読めるような環境に育っていないのだろう。
だから自分の脳内で思いつくままではなく、他人に読ませるために言葉や内容を精査した文章というものを知らないから書けない。
さらに言うなら読んで適切な忠告をしてくれる人間が匡近しかいないからな。
匡近だってどうしてこうなるのかというところを未熟な相手に説明できるほどにはその手のことに長けているわけではないだろうし、単にこれでは読みにくい、他人に読んではもらえないと言ったところで素直に聞くような人間ではないだろう?」
と言う錆兎の言葉は確かにその通りだと思う。

今では書く人間も多くなってきた同志達にしたって、最初はみなそう言う事に長けた仁美の小説の読者で、そこから無意識に楽しめる文と言うのを学んでから自分も何か…となっているのだ、

不死川はあまりに錆兎と義勇の仲を描いた小説が広まり過ぎて割り込めないであろう女性隊士を諦めて、それなら男性隊士に広めれば、とそのあたりを狙って、男ならエロが好きだろうと書き始めたのだろうが、そもそもが文章が稚拙すぎてそこまでたどり着くのが辛すぎる。

そして頑張ってそこまでたどり着いても、その肝心の描写がやっぱり稚拙で、誰と誰がというのを置いておいたとしても全く萌えない。
興奮するのは恐らく稚拙な文章でも自分の脳内で変換できるくらいには想像力豊かな上にとてつもない加虐趣味なやつくらいだろう。

正直…読んでいて気持ち悪い。

──気持ち悪かったら無理に読まないでも良いぞ?
と、よほどそれが表情に出ていたのだろうか…錆兎が苦笑交じりにそう言ってくる。

──でも…
──そういう描写があるなと思った時点で仕分けすればいいだろう?
──なるほど!

確かにそうだ。
別にそれについて感想を求められるとかではないのだから、仕分けをするだけなら読む必要はない。
あるかないかだけチェックすればいいのである。

「これでさ…よく自分の協力者を作れると思ったよね…。
はっきり言って主人公の実弥、嫌な男すぎなんだけど?
こんなゲスにさ、周りが憧れるとかって設定もさ、ありえなくない?
どこのドクズ地域の話よ?
ある意味、おとぎ話だわ。…ただし地獄が舞台のね」

チェックするのに目を通すだけでも気持ち悪すぎて苛々する。
ならやめればいいのにとも思うが、自分がやめれば錆兎がその分多く検閲することになるので、真菰はそれでなくても疲れている柱の弟弟子の負担を少しでも減らすためと割り切って頑張ることにした。

それでもついつい口を突いて出て来た悪態に、窓の外から爆笑する声が聞こえてくる。

「なんだ、そりゃあ。俺にも何冊か寄こせよ。
派手に腹抱えて笑うから」
と、行儀悪く窓から入ってくる宇髄に錆兎が大きくため息をつくと黙って冊子の山を半分渡した。

もちろん、宇髄もそれが何のために行われているかはわかって言っているので、どっこいせとその場に遠慮なく胡坐をかくと、冊子に目を通し始める。

こうして3人でチェックして、全ての仕分けが終わると、

「さて、真菰、とりあえず茶でも煎れてくれ」
の錆兎の言葉に真菰が3人分茶を煎れると、いよいよ作戦会議が始まった。








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