──元忍、ジャンケンねっ
──おうっ
2人ともそれが何のジャンケンかを理解していて、
──勝った~!あたし、匡近っ。元忍、クズの追跡ねっ!
と出したグーをそのまま振り上げて言う真菰に、
──マジかぁ~…
と宇髄は自身が出したチョキに目をやりがっかりとうつむいて、しかし、さっとその場から木の上を移動し始める。
そう、匡近を補佐するか、不死川を見張るかのジャンケンだった。
こうして不死川を追う宇髄を見送って、真菰はぴょんっ!と木から飛び降りて、利き手の袖を拘束されて手間取っている匡近の前に姿を現すと、匡近の袖を拘束する短刀を抜いて手を自由にしてやる。
そして
「ありがとうございます!真菰さんっ!
実弥の奴を追わないとなのでお礼はまた…」
と駆け出しかける匡近を遮るようにその前に回り込むと、自分よりもだいぶ大きい匡近を下から見上げて
「大丈夫っ。こんなこともあろうかとあたし達が待機してたからっ。
あっちは宇髄さんがこっそり見守ってるからね。
勝手なことしたらどれだけ大変かがわかったあたりで、助けてくれると思う。
で、匡近はあたしと鬼退治っ!
こっちだよっ」
と、にこりと笑って、進むべき方向を指さした。
「そ…そうだったんですね。
ありがとうございます」
とそれを聞いてぽか~んとしていた匡近はお礼を言いつつ、早く早くっ!と真菰に急かされて走り出す。
前世で死んだときの匡近の遺書によると、彼は目の前で弟を鬼に殺されて鬼殺隊入りを決意。その後出会った不死川の事は亡くした弟に重ねていたということだった。
だからもしここで宇髄が居なくて不死川が一人だったなら、おそらくこの先に居る鬼を斬れば柱になれると言われても、当たり前に引き返しただろう。
そういう意味では宇髄が居て本当に良かったと思う。
まあもしかしたら宇髄はそのあたりを考えて柱として忙しい中来てくれたのかもしれないが…。
あるいは宇髄がそういう行動を取るということも錆兎はわかっていたのかもしれない。
ここで錆兎が来れば義勇の事があるだけにあとで色々揉めそうだし…と、真菰がそんなことを考えながら宇髄の調査で本体が居たという村の中央あたりに位置する長老の家に足を運ぶと、やはりそこを住処としていたのか、庭の地面から鬼が生えていた。
正確には…上半身が地面から生えていて、下半身は地面に埋まっている。
おそらく地面の下からは数本の足が村のあちらこちらで侵入者を食らおうと待ち構えているのだろう。
ここに来る途中にも何回か出没したが、全て真菰が斬り捨てて、再生する前に駆け抜けた。
いまここに来てもやはりあちらこちらで鬼の形を取った下弦の手足が出没するので、
「こいつらは擬態した手足だから本体を斬らないと無限に出てくるのっ。
だから手足はあたしが引き受けるから、匡近は本体を斬りに行ってっ!!」
と真菰がそれらも素早い動きでひたすら斬り捨てながら言うと、匡近は
「わかりましたっ!真菰さん、ここをお願いしますっ!」
と頷いて駆け出していく。
元々はこの無数とは言わないまでもかなりの数の手足があるので、それを引き受ける役を真菰が…そして本体を斬るのを匡近にやらせるつもりだったところに不死川が割り込んできたわけだ。
まあ幸い、その不死川はおそらく今頃は弱い鬼を斬って数を稼ぐつもりでどこぞで足止めをされているのだろうから、問題なく進んで良かったと思う。
この攻防を併せ持つ手足が厄介なだけで本体は普通の鬼なので、手足に邪魔をさせなければ甲の匡近なら問題なく斬れるはず。
そう思いつつ、しかし多すぎる数の手足をさすがに余裕もなく捌いていると、やがてそれがすうっと消えた。
そして耳に響く鎹鴉が飛び回る羽音と、
──カアァァ!粂野隊士により下弦ノ参消滅!粂野隊士、下弦ノ参を討伐しせりーー!
という声が聞こえる。
(やったっ!!)
ほ~っと肩の力を抜く真菰。
さすがに汗がどばっと噴き出た。
匡近はというと、これが下弦だとは知らなかったため唖然としている。
おそらくこの村のどこかでもう一人唖然としている人間がいるだろうなぁ…と、その様子を見て真菰は苦笑しながら、
──とりあえず本部へ報告!それをやって初めて任務終了だよっ!
と匡近に声をかけた。
これからまたひと悶着あるんだろうなぁ…と思いながら。
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