聖夜ぷえ
聖夜の贈り物 1章 2章 3章 4章 5章 6章 7章 8章 9章 10章 幕間1 幕間2 続聖夜の贈り物 1章 2章 3章 4章 5章 6章 7章 8章 9章 10章 11章
そしてカークランド家の一室。 水と土の石はすでにアーサーの手に戻され、火と風の石はギルベルトとフェリシアーノの中でそれぞれ光っている。
「俺に判断を任せてもらっていいのか?」 「ええ、もちろんです」 「ならば選択肢は一つだ。4つの石の力を相殺させて宝珠自体を消し去る」
そしてカークランドの城の前…。 「マシュー…無事だよな?」 「もちろん!絶対に元気にしてるに決まってるわよっ!」 声をかけるのを躊躇するロヴィーノの背中をエリザがポン!と叩く。
「すごいわねっ。伝説再びよっ!」 興奮するエリザにギルベルトが冷ややかにつっこむ。 「でも島の平和とか抽象的な願いが叶うわけじゃないってわかったわけだし、何に使うんだよ」 「あ~そうだよねぇ。ならいっそヒマワリでも良かった?」 「いや…ここ北でヒマワリ咲かせようって...
「じゃ、そういう事で行こうか♪」 イヴァンは鼻歌を歌いながらアーサーの腕を掴んでナターリヤ達の方へ向かいかける。 「ちょ、待て~!!!」 そこでギルベルトがアーサーを奪い返した。
「ナターリヤ……君まで僕を置いていくのかい?」 ナターリヤはそこで初めてくらいイヴァンに気にとめられた気がした。 たぶん…自分も兄も自分からは環境を変えないし、環境が変わる事も想像してないし、だからこそ変わる事に拒絶反応を起こして変えまいとするのだろう。 しかしそこから...
その反応はイヴァンのお気に召さなかったらしい。 むぅ~っと拗ねたように口をとがらせ、 「ほら、変な顔されたじゃない?」 とナターリヤを振り返った。
「こんなに広いのに人の気配が全くしないって…不気味だよな…」 ナターリアに案内されて中に入って広いホールに足を踏み入れた瞬間、思わずそうつぶやいたロヴィーノの言葉に 「不気味でごめんね」 といきなり声が降ってくる。
「さみぃ…」 ロマーノはがちがちと歯を鳴らしながらつぶやいた。 北の地方の気温は暖かい地方に育った人間にはつらいらしい。 フェリシアーノもハグ~ハグ~と言いながらルートヴィヒのマントの中に潜り込んでいる。
もう降参でいいんだぞ!」 戦闘は始まったばかりなのに突然アルが宣言した。 ピタっと動きを止めるギルベルトを放置でアルはナターリヤに走り寄る。
こうして騒々しく言い争いをしながらも、一行は街外れの空地へ。 「一応どちらかが降参するか動けない、あるいは立てなくなるまででいいな? 死ぬまでやってもお互い困るしな」 「いいだろう」 ギルベルトの言葉にそう応じると、ナターリヤは紅い宝石のついた杖を静かに構える。
「お前…相手は女の子だぞっ!」 慌てて止めるロマーノを制してギルベルトはナターリヤに二コリと笑みを向けた。 「女の子だって思わなくてもいいんだろ?」 「無論だ!」 うなづくナターリヤ。 「そ、そんなのダメなんだぞ!ナターリヤが戦うくらいだったら俺が戦うんだぞ!」 ...
アルとナターリヤがイーストタウンについたのはその数日後。 どうせならチビの自分ではなく、マスターを守れる大きな自分を見て欲しい、と、途中でアルはナターリヤに強請ってコーラを買ってもらい、それを口にする。
「俺のマスターも“選ばれし者”だったんだぞ」 アルはマジックドールだから寒いという感覚はないが、ここの気温がかなり低い事はわかる。 どうやら北の地方らしく、イーストタウンにつくまでにはかなりの時間がかかりそうだ。
ナターリヤは背筋をピンと正してまっすぐ離れにある自室へ向かう。 その目からは涙がこぼれおちているのに、表情も物腰も凛としていて、それがとても綺麗だとアルは思った。
「イヴァンちゃん、あのね、お姉ちゃん良い事きいちゃったの」 ドイ~ンと驚くくらい大きな胸を揺らしながら入って来た女性に、イヴァンが表情を緩めた。
「ようやく起きたか。お前、さっさと支度をしろ。兄さんに引き合わせる」 あれからどこをどう飛んだのかわからない。 生まれて初めて負わされた傷に不覚にも敵前逃亡してしまったアルはいつのまにか気を失っていたようだ。
スコットさんは本当に忙しい人らしい…と、マシューが知ったのは食事を持ったスコットが戻ってきた時だ。 食事のトレイを片手に、もう片方の手には山と書類を抱えている。
「どこか痛むか?」 という質問にいいえとマシューが首を横に振ると、 「嘘つきやがったら殺すぞ」 とギロリとにらみつけてくるスコット。