ナターリヤはそこで初めてくらいイヴァンに気にとめられた気がした。
たぶん…自分も兄も自分からは環境を変えないし、環境が変わる事も想像してないし、だからこそ変わる事に拒絶反応を起こして変えまいとするのだろう。
しかしそこから抜け出さない事にはいつまでたっても自分達は変わらない。
「兄さんも…行きましょう?」
ナターリヤは片手でアルの手をつかみ、もう片方の手をイヴァンに差し出した。
「こいつは無神経で弱虫で泣き虫でどうしようもないダメな奴だが…きっと私達を変えてくれます」
その言い草にアルは口をとがらせてブーブー文句を言うが、
「だまれ!100キロ先に置き去るぞ!」
と、ナターリヤが脅すと、
「卑怯だぞ!」
と言いつつも黙る。
「う~ん…僕無神経な子は嫌だなぁ…」
「俺だって後ろ向きなごつい呪術師なんて嫌なんだぞ!」
「……100キロ先に……」
「君……ひどいんだぞ」
恨めしそうな眼を向けるアル。
しかし次の瞬間
「でもお前はそういう私が好きだろう?」
と、花がほころぶような満面の笑みを浮かべるナターリヤ。
「…ぅあ……」
ぽか~んとアルが見惚れている間に、スッと元の無表情に戻る。
「ということで…こいつに文句は言わせないので、行きましょう、兄さん」
そうこうしているうちに、とりあえず呪術は解いてくれたらしい。
全員動けるようになって各々身体をほぐしている。
「女は強いなぁ…」
と感心するギルベルトに
「うん。でも素敵な強さだよね♪やっぱ女の子いいよね~」
とニコニコ応じるフェリシアーノ。
「そうだな…ナターリヤ美人だし…」
と、そこでアーサーが口をはさむと、
「俺様だって、いい男だろっ!」
と、ギルベルトは慌ててナターリヤに向けているアーサーの視界を遮った。
「でも…髪とかサラサラだし、スタイルいいし…」
「あ~、もういいわっ!」
アーサーの言葉を遮って、ギルベルトはつかつかイヴァンに駆け寄った。
「もうヒマワリ咲かせるでも、妹とどっか行くでもどうでもいいから早く決めてくれっ!」
「男の嫉妬はみっともないよ?」
詰め寄るギルベルトににこやかに言うイヴァン。
「確かに僕の妹だけあってナターリヤは美人さんだしねぇ…」
ううっ…と恨めしげに黙り込むギルベルト。
そこでアルが
「じゃ、そう言う事で俺達は行こう!ナターリヤ」
と、すかさずナターリヤの手を引っ張った。
それを見たイヴァンはまたにっこり…
「やっぱりギルベルト君よりアル君の方がからかい甲斐ありそうだなぁ。
そっちにしよっと♪」
うぁ…性格悪っと思わずつぶやくギルベルトに
「何?やっぱりゆっくり考えて欲しい?」
とイヴァン。
「いえいえ、行って下さい」
と、ギルベルトは慌てて首を横に振った。
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