続聖夜の贈り物_11章11

その反応はイヴァンのお気に召さなかったらしい。

むぅ~っと拗ねたように口をとがらせ、
「ほら、変な顔されたじゃない?」
とナターリヤを振り返った。


「い、いや、ちょぃ待て!
だってそれってすげえ大変な思いして集めないといけない宝玉の力を使ってまでする事なのか?
ヒマワリ自体は悪いとは言わねえけどさ…」

あわててフォローに入るギルベルトに
世界征服したい…とでも言って欲しかった?」
とにっこりほほ笑むイヴァン。

いえ、ヒマワリで結構です…と、ギルベルトはぶんぶん首を横に振った。



「本当はね僕も世界征服したいとは思うんだ」
少し遠い目をして始めるイヴァンに思い切り引く一同。

「宝玉の力でこの一帯以外を不毛地帯にしちゃえば皆僕と一緒にいてくれるかな~って思わないでもないんだけど…。
でもそれじゃあここまで来れる子しか会えないじゃない?
移動手段なくて飢え死にするしかない子の中にも僕と仲良くなれる子がいるかもしれない」

「君は馬鹿かい?」
全員を固まらせたイヴァンの独白を空気を読まずに遮ったのはアルだった。

「単にヒマワリが植えたいなら暖かい地域に引っ越せばいいし、友達が欲しいなら待ってないで自分で探しに行けばいいじゃないかっ」
と、腕を組んで仁王立ちで言い放つ。

うん…まあそうだよな、と、一同は心の中で同意する。

「あ~、そんな事考えてもみなかったなぁ…。
み~んな僕の方に取りこんじゃえば良いとしか考えてなかった」


大陸一の深淵なる呪術師…
呪術としては看板に偽りなしなのかもしれないが…中身はアーサー並みじゃね?…と、ギルベルトは失礼な事を考えていた。
もちろん、他も似たり寄ったりの事を考えている。

ただ一人ナターリヤだけは彼が自分の兄なのだと納得した。
能力がありすぎるがゆえに、それを上手に活用する術が身につかなかったのだ。
さきほどの戦闘で周りを見ずに力技で押そうとしていた自分と同じだ…と。

根本が似ているからナターリヤは兄を愛しいと思い、根本が似ているから兄は自分をあまり見たくないのではないだろうか…とも思う。

そして唯一性質を同じくしない姉だけが外の世界へと飛び立っていった。

でも私や兄さんは重すぎる能力を抱えて飛べる翼がない…と、ナターリヤは思う。

「でもさ~、いきなり知らない所に行って友達作ろうとするより、こっち連れて来ちゃった方が確実だと思うんだけど…」
「そういう後ろ向きな考えだから友達できないんだぞ!」
大陸1の呪術師様の言葉を一刀両断にするアル。

うあ~~とナターリヤをのぞく全員が内心頭を抱えた。

そしてただ一人ナターリヤはポツリと
「そうかも…な。」
とつぶやく。

「決めた。私はお前と行くぞ!」
「ほんとかいっ?!」

もういきなりすぎて誰もついていけずに反応しない中、アルだけが即ノリの良い反応を返す。


Before <<<   >>>Next (6月10日0時公開予定)


0 件のコメント :

コメントを投稿