続聖夜の贈り物_11章10

「こんなに広いのに人の気配が全くしないって…不気味だよな…」
ナターリアに案内されて中に入って広いホールに足を踏み入れた瞬間、思わずそうつぶやいたロヴィーノの言葉に

「不気味でごめんね」
といきなり声が降ってくる。


文字通り…正面にある階段の上から階段を使わずにス~っと滑るように一行の前に降ってきた大柄な男。

うあぁぁ~!!!!
と悲鳴を上げてロヴィーノはエリザの後ろに隠れ、ギルベルトはアーサーを、ルートヴィヒはフェリシアーノをそれぞれ背後に隠す。

そんな一行の態度を気に留める様子もなく、男、イヴァンは
「ナターリヤ、僕のために宝玉関係者を連れてきてくれたんだね。
ありがとう。これでようやく宝玉が完成するよ」
と、にこやかに妹に礼を言った。

それに一瞬嬉しそうな顔したナターリヤは、しかしすぐ表情を引き締めた。

「兄さん、違うんです」
「違う?」
イヴァンは大男に似合わぬ可愛い仕草で首を傾ける。

「はい。今日は兄さんが宝玉を完成して何をしたいのかをこの者達に説明して頂きたくて」
「説明…ねぇ…。ふ~ん?」
そこでイヴァンは初めて一行に目を向けた。


「君が…“選ばれし者”だよね?そんな魔力を感じる」

イヴァンは音もなくアーサーに近づき、その腕を取ってギルベルトの後ろから引きずり出す。
そこで一行は初めて身体が動かない事に気付いた。

いつのまに…!
人間でないためその魔力の効果を受けなかったアルが慌てて飛び出そうとするのを手で制して、ナターリヤは自分が兄とアーサーの間に割って入った。

「兄さん、術を解いて下さい。そして説明して下さい」
「なんで邪魔するの?可愛いナターリヤ」

「お願いします。話をして…そして話を聞いて下さい」
懇願するナターリヤをイヴァンは不思議そうに眺める。

「話してもきっと聞いてもらえないよ。外の人達は僕達とは違うもの」
まるで無邪気な子供のような口調でそう言うイヴァン。

「それじゃあダメなんです。私も兄さんも…」

「ふ~ん…まあいいや。何をしたいか話せばいいの?」
「はい。お願いします」

「僕はねぇ…ヒマワリを咲かせたいんだ」
「は?」

宝玉を使ってわざわざヒマワリ?
ぽか~んとする一同。


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