続聖夜の贈り物_11章7

こうして騒々しく言い争いをしながらも、一行は街外れの空地へ。

「一応どちらかが降参するか動けない、あるいは立てなくなるまででいいな?
死ぬまでやってもお互い困るしな」

「いいだろう」
ギルベルトの言葉にそう応じると、ナターリヤは紅い宝石のついた杖を静かに構える。




風もないのにサラサラなびく髪。
杖が彼女の強い魔力に反応しているようだ。

アルの方は大斧。
今回は打撃でいくつもりらしい。


「アルトは下がっとけよ。絶対に前に出んなよ」
ギルベルトは紅い大剣を具現化すると、もう一度宿屋で言ったのと同じ注意を口にする。

てっきりそれに反論してくるものと思ったアーサーは
「言われなくてもそんな事しねえよ」
と、あっさり了承。

「力技は…できなくはないけど、得意ではないから。任せる」
と、こちらは白い石の付いた杖をゆっくり構えつつ、後ろへ下がった。

「じゃあ俺様が右手をあげたら始めでいいな?」
ギルベルトの言葉に双方無言でうなづく。

「レディー…GO!!」
ギルベルトの合図でそれぞれが動いた。



ギルベルトは目を閉じて詠唱を始めるナターリヤへ。
それを遮るように大斧を持ったアルが立ちふさがる。

その間にナターリヤの杖の先には強大な魔力がたまって行くが、それがピタっと止まった。
驚きに目を見開くナターリヤ。
体中に痺れが走る。動けない。

雷魔法で感電させられた事を瞬時に悟ったナターリヤは焦って唯一動く視線だけをアルに向けるが、アルは動きを止められる気配はない。

それにひとまずホッとして、ついで相手側の魔術師、アーサーに目を向ける。

落ち着いてみれば相手は全身白石をつけたスピード重視装備で…と言う事は元々支援に徹するつもりだったとわかる。
それに対して自分は豊富な魔力をひたすら強い攻撃魔法に還元する事しか考えてなかった。

大がかりな戦争で相手が自分の陣地まで来ない時ならとにかく、少人数戦では詠唱に時間のかかる魔法など隙を作るだけだ。

実戦経験がない…と言ってしまえばそれまでだが、考えればわかった事なのに自分はあまりに短絡的だった。
自分の魔力を過信し過ぎていた…。

これが私の敗因なのだな…と、ナターリヤは内心苦々しく思う。

能力があってもそれを生かす術を持たない。
姉さんみたいに…限られた能力でも上手に使えば兄さんに笑ってもらえたかもしれないのに…。

私には兄さんを笑顔にする事はできないのだ……


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