どうせならチビの自分ではなく、マスターを守れる大きな自分を見て欲しい、と、途中でアルはナターリヤに強請ってコーラを買ってもらい、それを口にする。
「これで俺も戦力になれるんだぞ」
というアルの言葉に
「そうだな」
と、珍しくかすかにだが微笑んだ。
宿の場所までは知らなかったが、とりあえずナターリヤの姉、ライアは本人が言っていた通り街の一部の若い娘たちには有名らしく、その娘たちに場所を聞いて、二人は“ねこのみみ亭”までたどり着いた。
「お前また来たのかよ?いい加減しつこいぞ」
丁度食堂に全員集合していたギルベルト達。
ライアの妹だと言ってフロントを通ったナターリヤとアルの姿を見つけると、ギルベルトが嫌ぁ~な顔をした。
「今日はアルトゥールの事だけで来たんじゃないんだぞ」
むかっとはしたものの、今日の主目的は一応別である。
アルはそう言ってナターリヤに場を譲った。
「今日は交渉に来た」
ずん!と一歩前に出たナターリヤはそう言ってギルベルトに目をやった。
「カトル・ヴィジュー・サクレの欠片を渡して欲しい」
思い切り端的にして直接的なその言い方に、アルを含めた全員ぽか~んだ。
「お嬢ちゃん、それ単なる要求で交渉になってねえぞ?」
と、とりあえずつっこみを入れるギルベルト。
「交渉って言うんだったらそれなりの条件提示しねえと。
まあ…提示されても聞いてやれねえけどな。俺らも石の欠片集めてんだよ」
と言う言葉には、フェリシアーノがうんうんとうなづく。
「でもまあ…集めている理由くらいは聞いてもいいんじゃないか?
歩み寄れるものじゃないとも言いきれないし」
と、答えに詰まるナターリヤを見て、アーサーが間に入った。
「ま、確かに聞くくらいはいいかもな」
とギルベルトも同意する。
「で?目的はなんなんだよ、お嬢ちゃん?」
「…兄さんが…欲しいと言うから…」
「はあ??」
「兄さんが欲しいと言うからだっ!悪いか?!」
「うん、いや、悪いとか悪くねえとか言う以前に…」
「もういい!渡さないと言うなら表に出ろッ!」
「いや、ちょっと待とうぜっ。どうしていきなり?!」
「渡さないなら力づくで奪うまで!」
ナターリヤはそう言い切った後、でも…と付け加える。
「ここで戦ったらまずいのだろう?私は構わないが」
まあ確かにそうではある。
「そう言う事なら仕方ないなぁ…いっちょ相手してやるかぁ」
ギルベルトがこきこき首をならした。
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