温泉旅行殺人事件GA 名探偵ギルベルトと愉快な仲間の事件簿
温泉旅行殺人事件 プロローグ 夫と妻と元恋人 散歩と浴衣と露天風 捕らわれた恋人達 殺人者の影と捕らわれの姫 救出への道のり 眠れる宿の姫と捕らわれた天使 安堵の香り 天使奪還計画 救出失敗 返したい人質と返したくない人...
「なんか…色々えぐられる事件だったな…」 帰りの電車の中でルートがつぶやいた。 いつものごとくその横ではギルベルトの肩に頭を預けてアーサーがすやすや寝息をたてている。
温泉旅行殺人事件GA
「正直…志保が死んだ時、最初は私は何にも感じなかったの。 私達は孤児院で一緒に育って姉妹みたいなもので、でも私は自分の方がしっかりしてると思ってたし、いつも彼女の面倒をみてると思ってたから、出し抜かれたのが悔しかったのね。
「 1 年前失踪したあなたは多分…このために共犯者の澄花さんの夫、雅之さんにそっくりに整形したんですよね?あくまで否定するならこの場で指紋を調べてもらいますが…」
「時を遡る事 20 年前。俺達が生まれるより前の話です。 この新館はまだ出来てなかったんですが、ここから数キロ先の同系列の旅館に二組のカップルが旅行にきました。申し訳ないんですが敬称は略ということで。
ギルベルトの言葉に和田はハッとしたようにギルベルトを見上げた。 ギルベルトはそれにきづいて和田に少し笑みを浮かべてうなづく。
「それなら…我々の方に言って下されば…」 と不満をもらす和田。 「すみません。状況証拠のみで、さらに令状を待つ時間もなかったので非合法な手段にでてしまって…下手すれば自分の方が拘束されても仕方ないかなと思ったので…」 とギルベルトは苦笑と共に謝罪をすると、さらに続...
徒歩 30 分の場所に 2 時間以内に身代金を置いてくる、非常に簡単な条件です。 これで身代金を受けとる気は充分ある、と、普通は思います。 しかし実際はルートは足を踏み外して気を失って失敗したわけです。
30 分後、現在宿泊客のいない使ってない離れ。 「あ~!フェリシアーノさんっ!どういう事ですかっ?!」 きちんと香も炊かれているその離れの和室には大きなホワイトボードが用意され、毎度おなじみの 4 人組、氷川夫妻、 OL3 人組、老夫婦、秋ちゃん、そして和田が...
事件当日…被害者の小澤は特に軽食等を頼んだという事はない。 ただ予約時の電話で食事は不要と言われたと言う。 そのメールには 20 年前についても書かれている。
宿泊客のほとんどがそれ目的で来るほど有名な料理旅館。 小澤は何故わざわざ夕食を不要と言ったのだろうか…。 それによってどういう影響が出た?
その時携帯が振動する。和田からメールだ。 昨日聞いた情報について調べてくれたらしい。
「おかえり、ルッツ」 ギルベルトはドアを閉めるとルートを中に促し、自分も和室に戻る。 朝食が備え付けられた部屋ではすでにアーサーが茶碗にご飯を盛って待っていた。
旅館の人間が共犯とかいうオチでなければ犯行推定時刻である 17:20 から 18:40 までの夫妻のアリバイは完璧だ。崩せない。 とすると… 発想を転換させよう。
「俺様…実は間違ってるのか…犯人は別にいるのか…」 ギルベルトは手を枕にしてゴロンと寝転んで天井をみあげた。 「大丈夫…ギルはいつでも間違ってない」 そのギルベルトを上から見下ろしてアーサーが微笑んだ。
その後聞きたい情報を和田から全て聞き出してギルベルトは頭の中でそれを整理し始める。 犯行推定時刻は 17:20 から 18:40 。 18:40 というのはギルベルトの推測通り 20:40 に発見された遺体の状況から死後 2 時間以上はたっていると判断されたため...
ルートが氷川夫妻の離れに行って 20 分ほどした時、ギルベルト達の離れの玄関で 「ごめんください」 と声がかかった。 「は~い♪」 その声に止める間もなくフェリシアーノが転がり出て行く。
「そうやって当たり前に自分を含めて客観視できる君はすごいな…」 「そうですか?」
「心配性だな、兄さんは…」 氷川夫妻の離れへ向かう道々、ルートはそう言って苦笑した。 「俺が馬鹿な事でもするんじゃないかと、部屋にも返してくれない」 身代金の受け渡しを失敗した事によってフェリシアーノが行方不明なことで自分が滅入っててギルベルトが心配してる、そう相...
5 分ほどでルートから雅之の部屋の電話で今着いたという連絡がはいる。 それを了承して切ると、ギルベルトは部屋のカーテンを閉めた。