温泉旅行殺人事件_迷探偵のアリバイ崩し3

旅館の人間が共犯とかいうオチでなければ犯行推定時刻である17:20から18:40までの夫妻のアリバイは完璧だ。崩せない。

とすると…発想を転換させよう。

犯行推定時刻自体が間違っている可能性は?
夫妻は19:50までは離れにいたのは証言されているから、フリーだったのは20時以降。
いくらなんでも犯行後1時間たってない遺体を犯行後2時間以上たっているようにみせかけるのは無理だ。

とすると、可能性があるのは事件が行われたのが犯行推定時刻前という事。

皆で母屋についたのが15時過ぎ。
それから2時間強に関しては誰もアリバイがない
17:20にあった本人からの電話、それを覆せればアリバイが崩せる。

17:20に本人が生きてないとすると…本人から電話がかかってきたというのがありえないわけで…。

声紋が一致しているらしいから、その比較対象になったデータが改ざんされている?
旅館側は旅館の人間の声もあるから無理として、改ざんされてるとしたら自宅の留守電か…。

和田に小澤の簡単な身辺の情報と留守電が確かに本人の声なのか、改ざんされてる可能性がないかを調べてもらえる様にメールを送った。
ついでに念のため氷川夫妻の簡単な身辺の情報も頼んでおく。

あとは…フェリシアーノが拾ったペンダントか。
この時間でも起きていればいいのだが…と思いつつ、ギルベルトはフェリシアーノに電話をかけた。


『あ、ギル。秋ちゃんにも事情聞いたよ~。で?どうしたの?』
幸いにもフェリシアーノは起きていた。

「ん。とりあえず早急に聞いておきたいんだけど…
あの日フェリちゃんが一人になった時拾ったペンダントについてと、それをどうしたかと…」

『あ~あれね。小澤さんの離れの側で拾ったんだよ。そのせいかもね、狙われてるの』
相変わらず…のんきな人間だ…と、そののほほ~んとしたフェリシアーノの言葉にため息をつくギルベルト。

「で?何か特徴的な事はあったか?」
中でならとにかく、離れの側に落ちていたというだけならいくらでもいいわけはできる。

『ん~チェーンに指輪が通してあったよ。女物の。指輪の裏側には”K to S” って彫ってあった。
それをね、フロントに届けようとしたとき澄花さんにあって自分のだって言うから返して…。
その時自分がそれ持ってるの知られたくないから絶対に誰にも言わないでねって言うから、
浮気でもしてるのかなぁと…。Sは澄花のSで…Kって光二のKだよね?』

それ…なのか?
そう言えばルートのメールでも浮気云々という話がでていたし…。



ギルベルトは電話を切ると考え込んだ。

澄花がまだ小澤と続いてて、それに嫉妬した雅之の犯行?
そして澄花がそれをかばってるのか?

いや、今回の殺人はもっと早い時期から練られているはずだ。
でないと離れた場所にある小澤の自宅の留守電に細工などできない。
むしろ昔の事で何か澄花がゆすられていての方がありえるか…。

しかし小澤は最初の日、旅館に向かうマイクロバスに澄花がのっている事に驚いていた。
あの時の二人のやりとりを見る限り、澄花と小澤だと澄花の方が立場的強者に見えたが…。



考えながら寝てしまったらしい。

内線の音で起きるギルベルト。
いつのまにか布団が肩からかけられている。

布団をベッドに戻して和室へ向かうと、電話に出ていたアーサーがくるりと振り返った。

「ギル、ルートが戻ってくるって」
受話器を置いて言うアーサー。

すでに朝食が並べられているということは…もう7時なのか。
普段5時に起きるギルベルトにしてはあり得ない寝坊だ。


「ルッツこっちで食うって?」
一応3人分用意されているのを見て言うギルベルトにアーサーはうなづいて、タオルを渡す。

「さんきゅ」
とそれを受けとるとギルベルトは顔を洗ってしっかりと目を覚まして、和室へ戻った。

やがて雅之に送られてルートが戻ってくる。
寝不足な様子はないから、向こうで一応しっかり眠った事は眠ったらしい。

「おはよう、ギルベルト君。じゃ、確かに送り届けたよ」
とにこやかに言う雅之に

「おはようございます。昨夜は弟が色々お世話になりました。ありがとうございました」
ときちんと挨拶をしてお辞儀をするギルベルト。

それに軽く手をあげて応えると、雅之は自分の離れに戻って行った。




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