と不満をもらす和田。
「すみません。状況証拠のみで、さらに令状を待つ時間もなかったので非合法な手段にでてしまって…下手すれば自分の方が拘束されても仕方ないかなと思ったので…」
とギルベルトは苦笑と共に謝罪をすると、さらに続ける。
しかし同時に皆さんおわかりのように夫妻には犯行推定時刻の間の完璧なアリバイがあります。
様々な観点から考えてみましたが、これを崩すのはほぼ無理です。
という事でこの時間に夫妻が犯行を行うのは不可能でした。
そこでもう考えられる結論は一つ。
犯行は犯行推定時刻外で行われている。
ここで説明しますと、今回の犯行推定時刻はまず二つの点から特定されています。
始まりの午後5時20分というのは小澤氏が自分の離れからフロントに電話をかけているため、最後に生存が確認されている時間。
終わりの午後6時40分というのは遺体発見時刻から2時間以上はたっているということから遺体発見時刻の2時間前の時間です。
いくらなんでも犯行後1時間たってない遺体を犯行後2時間以上たっているようにみせかけるのは無理なので、動かせるとしたら始まりの時間。
午後5時20分の小澤光二氏の離れからの内線電話。
旅館側はトラブル防止のため各部屋からのフロントへの内線は録音保存してあり、警察が取り寄せた小澤光二氏の自宅マンションの留守電の声と照合した結果、確かに本人の物とされました。
マンションはオートロック式。
防犯カメラにも不審な人物は映っていませんし、留守電の方は確かに小澤光二氏の物に間違いがないと思われます。
しかし…離れからの内線はどうでしょうか?確かに本人のものだったのでしょうか?」
そこで言葉を切るギルベルトに和田が言う。
「旅館側の人間の声も入っていますし、細工は不可能です。
小澤光二氏の声は留守電の物と声紋判定でも同一人物とされています」
ギルベルトはその和田を見下ろして
「はい、それは伺ってます。」
とうなづくと、再度顔を上げて全員に目をやった。
「確かに声紋で本人と判定されたわけですが…皆さんご存知でしょうか?
世の中には自分以外にも同じ声紋を持った相手がいる人種も存在するのです。
小澤光二氏はその数少ない相手を持つ人物なんです」
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温泉旅行殺人事件始めから
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