その後聞きたい情報を和田から全て聞き出してギルベルトは頭の中でそれを整理し始める。
犯行推定時刻は17:20から18:40。
18:40というのはギルベルトの推測通り20:40に発見された遺体の状況から死後2時間以上はたっていると判断されたためらしい。
旅館側では電話での口頭でのやりとりは後でトラブルにもつながるため、全て録音してあるそうで、そのやりとりのテープと警察が取り寄せた小澤自身が吹き込んだ自宅の留守電を調べたところ、ほぼ同一人物である事が証明されたとのことだ。
結果、犯行推定時刻は生存が確認された時刻から遺体発見2時間前までの1時間20分の間という事になる。
遺体は正面から数回刺された状態で湯をはった浴槽で発見された。
死因は失血によるショック死。凶器のナイフは遺体に刺さった状態で発見されている。
離れ全体に争った形跡があり、特に殺人現場となったのであろう寝室には争った後以外に何故か切り刻まれた血のついた大量の衣服が散乱していたとのことだ。
犯人は何故か被害者が持参した全ての衣服を引っ張りだして切り刻んだらしい。
その事から犯行自体は少なくとも30分以上の時間は要したものと思われる。
指紋は小澤が泊まる前に旅館の清掃を行った従業員と、小澤本人のもののみ。
その従業員はその後のアリバイあり。
夕食については予約時に本人から不要の旨を知らされており運んでいないため、遺体の発見が遅れている。
遺体発見時には離れの鍵はかかってなく、ドアは閉まっていた。
遺体の状況から犯人もかなりの量の返り血を浴びている可能性が高いが、18:25分頃からは多くの従業員が各離れに食事を運ぶため内庭を行き来していたが、不審な人物を発見したと言う報告はないため、おそらく犯行はその前に行われているものと思われる。
というところまでわかったところで、ギルベルトはルートからきた氷川夫妻のアリバイを確認した。
妻の澄花は17:30から18:50までずっとラウンジにいるのを番頭が証言している。
もちろん番頭が席を外した事はあったが、基本的に5分以内で、戻って来たらやはりいたので、犯行を行うのはもちろん、離れまで行って帰って来るのすら無理だ。
夫の雅之は17:30の時点でフロントで露天の鍵を受けとって外庭に出ている。
冬なので日の入りは早く、その時点ではもうあたりは暗く、どんなに急いでむかっても露天までは25分。
ということで露天に着くのは早くて17:55。
そこから即引き返しても母屋につくのが18:20。
さらにそこから離れまでたどりついて18:23くらい。
その頃にはもう従業員がウロウロしているため17分で犯行を全て終わらせて血まみれの状態で自室に帰るのは不可能に近い。
19:00から19:50分までは夫婦共に離れで食事。
その間どちらかが離席していたということもない。
これは料理を何度も運んでいる従業員が証言している。
17:30にアーサーが見た時になかった雅之の腕時計が19:30にあったということは、その間に絶対に露天に行ったという事で…実は行ったふりをしただけというのもありえない。
アリバイは完璧すぎるくらい完璧…お手上げだ。
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