天使な悪魔_アンアサ
エピローグ 「これ…お前が淹れてやってくれ。」 わたわたと慌ただしく数日分の着替えをまとめているフェリシアーノに、アーサーが厳選した茶葉とジャムを渡した。
愛の言葉 「僕は病状の説明はしたんだけど、それ以上は僕の仕事じゃないし面倒くさいから、君からしてやってよ。 とりあえず君の大事な恋人は2年持たないかもしれない事よりも一生無理できない事よりも、敵のスパイとかそんな噂で君に迷惑かける事の方が気になってるらしいけど…」
消された真実、造られた事実 「あんまり時間をかけると君の過保護な旦那さんが我慢しきれずに戻ってきちゃいそうだからね。要件を簡潔にすませるよ。」
目覚め 「…と…にょ…泣くな……」 重い瞼を開き言葉をつむぐと声がひどくかすれる。 まるで全てが自分の身体ではないようにうまく動かない。
溶ける意識 アーティー…いかんといて…置いてかんといて…… 全てから開放されてふわふわと温かな中で漂っていた。 柔らかく暖かい空気にそのまま溶けてしまいそうな感覚。 ああ…そういうのもいいかもしれない…と思う。
「あ~トーリス、丁度良かった。アントーニョ君呼んできてよ。」 とりあえず縫合までは終わってたらしい。
トーリスとフランシス 「僕ね、アントーニョさんのことよく知る前に雑誌で見てるんですよ。」 アントーニョの傷を消毒をし、止血をし、綺麗なガーゼを当て、器用に包帯を巻きながら、イヴァンの助手だという人の良さそうな青年、トーリスは言った。
ストレングス オブ ノット シンキング 例によってガッタンゴットン音をたてながら愛車で教わった地点までの道を急ぐギルベルトの顔にはいつもの笑みがない。
迷医ギルベルトの追跡 「ねえ、アントーニョ兄ちゃんが物凄い形相で走っていくのが見えたんだけど、アーサーの容態が何か変わったの?!」 バタン!と珍しく慌しい様子でフェリシアーノが駆け込んできた。
しかしそうやって上質な医療環境を整えられる立場になっても、生物である以上永遠に生かす事はできない。 10歳の時に拾ってちょうど10年…。 アントーニョは久々に同居者の死を迎えた。
昔の話 どうやら自分は他より若干丈夫にできているらしい。 それをアントーニョが身をもって実感したのはまだ子どもの頃、皆が死んでいく中で最後に自分だけ生き残った時だ。
死に二人を分かたれるよりも 早く…一刻も早く助けなければ…。 焦る気持ちを抑えきれずに指定された地点へと車を飛ばす。 目的はおそらく…というか絶対にアントーニョ自身だろう。 自分が殺されるのは構わない。 でもその後アーサーをどうすればいい?
真心 アントーニョは本当に一人で来るだろうか…。 こちらに何人敵がいるかわからない状態で…。 初めからもう救出など諦めて大勢で来られたら、それはそれで仕方ない。 というか、本当はそれが一番良いのだろう。 自分と大佐が一斉射撃か何かで死ねば秘密は守られる。
拉致 拾われて以来初めてアントーニョはローマを恨んだ。 アーサーが倒れた日の午後、出撃命令が下った。 ギルベルトいわく4,5日中にオペをするとのことで…手術で万が一があればそれまでの僅かな時間がアーサーと過ごせる最後の時間になる。 1分1秒ですら無駄に出来ない値千金...
企み 脱出手順は大佐が整えてくれた。 アントーニョが出動しなければならない状況の戦闘を作り出し、内部に潜入している自軍のスパイに車でアーサーを連れださせる。
決意 気がつけばベッドの上だった。 ベッドの脇には青い顔をしたアントーニョ。 ああ…倒れたのか…と、ぼ~っと思う。
終焉の予感 虫の知らせ…昔からたまに何か好ましくない事が起きる前、なんとなく落ち着かない事がある。
エンジェルブランド 「菊…今週分、そこな?」 1週間に1度、本田が訪ねてくるようになった。 理由は…エンジェルブランドの品々の仕入れ。
カミングアウト 「あのな…俺本当に敵軍の人間なんだけど……」 すっかり日常になりつつある撮影の合間の休憩時間…アントーニョに確認するようにそう言ってみる。
どうしてこうなった? 開けられたドアの向こう…空き部屋いっぱいに積まれた贈り物の山。 綺麗な風景の写真集や刺繍の図案、本、花、その他もろもろ、件の雑誌が発売されて数日後、本田によって運び込まれた編集部に届いたアーサー宛のお見舞い品だ。