kmt 短編
窓際の前から二番目… 柔らかな春の日差しが差し込んで、彼の浅い黄みがかった赤色の髪を明るく照らす。
「ふう…ただいま。 …義勇は今日はどのあたりだ…」 非常に仲の良い幼なじみの母親達。 同性で唯一社会的に一緒になることを認められているためαとΩに生まれたかったβの2人がそれぞれに夫を持って生んだ子どもがαの錆兎とΩの義勇だった。
──新入生代表、冨岡義勇! 呼ばれて義勇はかちんこちんに緊張しつつ、体育館の舞台袖の階段に一歩足を踏み出した。 手には新入生代表の言葉を書いた用紙。 内容は姉と一緒に考えたものだ。 いわゆる試験勉強ができるのと、こういう作文が得意なのは全く違っている。 義勇はテストの成績はとても...
短編
その後ギルベルトの元嫁はエリザに言われた通り弁護士を介してギルベルトに金の無心をしてきた。 が、ギルベルトはこちらも弁護士を通して、ローンも名義も本人達がいる場所で本人達が納得した上で変更手続きを行って、さらに有責配偶者に対して責任を問わないどころか十分すぎる金銭を渡すことま...
こうして始まった男二人に女一人、そして幼児と赤ん坊という奇妙な家族の暮らしは、意外に平和に流れていく。
(あ~あ、明日目が腫れちまうかもな … ) と、目尻に残った涙を指先でぬぐってやり、室内に用意されていたタオルを洗面所で濡らして、身を清めてやる。 温かな濡れタオルの感触でわずかに意識が浮上したのだろうか … アーサーがぼんやりと目を開けた。
そして2ヶ月後 … 公正証書を交わして子どもを引き取って離婚。 そして転がり込んだ先では泣きそうに懐かしい顔ぶれ …
そして 2 日後のことである。 「え … 離婚?」 帰宅してその話を出した時、嫁は動揺した表情を浮かべた。
「まあ座ってくれ。何か飲むか?」 と、エリザを招き入れて、シングルなので一つしかない椅子をエリザに勧めると、エリザは短く 「たぶん激高すると喉乾くからミネラルウォーター」 と、実に彼女らしい遠慮のない返事が返ってきた。
あ~ … これは … 決定だなぁ …… ギルベルト・バイルシュミット 28 歳。 結婚 4 年目の冬のことである。
(…そろそろ帰ってくる時間かな…) まだ自分では食べられないもののスプーンを握るのは大好きなアーニーがハイテンションになってスプーンを振り回し始めるのが、ギルベルトの帰宅の合図である。
「じゃ、悪いっ!お先っ!!」 週末の今日も、いつものように勤務時間内にきちっと必要以上の成果をあげて、自身の帰り支度をしながら部下達の帰宅を見送ると、まだ残っているわずかな部下達には何かあったらメールで指示を仰ぐようにとくれぐれも言い渡して、ギルベルトは帰宅の途につく。 ...
ぎゅうっとギルベルトに抱きついたまま、自分の方が泣き疲れて眠ってしまっていたらしい。 気が付いたらソファの上。 ブランケットが上からかけられていた。
こうして自分の側の事情を一通り説明してくれたあと、彼は今度は当たり前だがアーサーの事情について尋ねてくる。 そこでそれまで美形エリートイクメンにほぉぉ~と感心していたアーサーは、一気に現実に引き戻された。
――おう。どうだ?少しは眠れたか? 目を覚ますと少しハスキーな男性の声。 ぼんやりと視線を向けると、そこには綺麗な銀色の髪に紅い目をした目の覚めるようなイケメン男性が、まるで何かのベビー用品のコマーシャルに出演している俳優か何かのように手慣れた様子で赤ん坊をあやし...
…怖い……心細い……… 不安で涙があふれてきて、アーサーは泣きながら、それでも弟を抱き上げた。 何をするにしてもしなければならないにしても、まずは今日の食事だ…。 そう思って真っ赤な顔をして泣く弟の口元に哺乳瓶の乳首を押しあてるも、赤ん坊は嫌がって顔をそらせる...
…疲れた…… 普通なら親の葬式だけでも十分疲れるし、落ち込むものだ。 しかしアーサーには落ち込んでいる暇さえない。 何もできない赤ん坊の面倒をみてやらねば… まず赤ん坊が眠っているうちにミルク用の電気ポットをセット。 そしてネットで色々調べてみる。 ...
――施設に…いれた方が良いと思うのよ? そう言ったのは叔母だった。
「ご、ごめんなっ?!こんな赤ん坊抱いて出て来たからてっきり……」 とりあえず先に赤ん坊の飢えを満たすべく手早くミルクを作って飲ませながら、ギルベルトが謝罪すると、アーサーは複雑な表情ではあるものの、 「…別に……体格良くないのもあってたまに間違えられるから……」...
ミルクを飲んでお腹いっぱいになると当たり前に排泄をする赤ん坊のおむつを替えてやって、頭を左側、心臓のあたりにくるように横抱きにして軽く背を叩いてやると、赤ん坊自身も泣いて疲れたのか、すやすやと眠り始めた。