彼女が彼に恋した時_13_幕間12

こうして宇髄が呼んだ救急車が到着した頃…玄関先からパタパタっと足音が聞こえて来た。

──え?え?なにっ?何かあったの?
と買い物袋を手にリビングへ駈け込んで来た貞子は、逆に義勇を抱えて玄関に向かう宇髄を見て目を見開いた。

そして視線をリビングに向けると、がっくりと床に座っている実弥と、何故か弟達のプラスティックのバットを担いだ寿美。

それにさらに驚いたようだ。

一瞬青ざめて固まって、しかし貞子に気づいた寿美の

──で?目的は何?
という問いの真意に気づいてさらに青ざめる。

──…な、なんのこと?何があったの?
と、素知らぬふりでとぼけようとしたら、寿美がはあぁ~と下を向いてため息をつく。

続いて零れ出た
──我が家にはね…下二人が赤ん坊の時に買った2台の見守りカメラがあるんだよ?
という言葉で全てを察した。

反射的にリビングを確認すれば確かにいつのまにかカメラが設置してあった。
よもや疑われているなんて気づかなかった。
いや、寿美が何か察していることには気づいてはいたが、行動にでるなんて思わなかった。

貞子がカメラを認識したところで、寿美は
──もう中身は録画して自分と宇髄先輩で管理してるから今から何かしても無駄だからね
と言われて、貞子は絶望した。


「とりあえず…兄ちゃんはこれで少なくとも退学確定。
父さんがどれだけ脅そうがお金積もうが、さすがに揉み消せるレベルの話じゃない」

「ま、待ってくれっ!!退学だけはやめろっ!!
責任は取るっ!取るつもりだったんだっ!!」
寿美の言葉に実弥は青ざめて妹にすがる。

その長兄の言葉に妹は冷ややかな視線を向けた。

「責任?どうやって?腹掻っ捌いて死んでみせるの?
それともホモ親父相手の売〇ででも金稼いで慰謝料として貢ぐの?
あんたが嫁にもらうとか言うのは責任じゃないからね?
大っ嫌いなやろうに最悪な事されそうになっての結婚なんて最悪の罰ゲーム望む女なんてこの世にはいないからね?」

絶対零度の声音で心をえぐるような言葉の数々を投げつける妹に実弥は青ざめる。
幼い頃から可愛い笑顔で、兄ちゃん、兄ちゃんとまとわりついてきた妹の面影はなく、そこにいるのは、同級生に居るような、ただ軽蔑しきった相手に嫌悪の視線を向ける女子だった。

恋人への道は完全に閉ざされただけではなく、学校生活も終わり…さらに家族の中にも戻れない…
さすがにそんな理解に至ったのか呆然とそのまま固まる実弥を放置で、寿美は貞子の腕を掴んでキッチンへ移動。

そうしていったんバットを壁に立てかけ、唯一の姉を振り返って淡々と言う。

──さあ、きっちり話そうかっ






2 件のコメント :

  1. スノ様の作品の実弥って、錆兎の親友だとメッチャいい奴なのに、義勇に執着している場合はとんでもない自己中暴君なのは何故なのでしょう?まぁ父親似ならそうなるだろうけど、クズ過ぎて吐きそうです😭

    返信削除
    返信
    1. まあ、父親がクズで、なんのかんので行動性が似てるので💦💦
      実弥は原作の行動を見ていると、上司(お館様)が生きた状態で保持を命じている状況の禰豆子を勝手に刺したり、任務以外で義勇さんや玄弥を普通に怒鳴ってたり殴ってたり、悪気なく思い込みが激しくて暴力への敷居が著しく低い人という印象なんですね。
      良い人(親友とか)として書く時はそのあたりの印象を全部なかったことくらいの勢いで目をつぶって書いていて、悪い人として書く時はそのあたりの印象をややクローズアップして描いています😀

      削除