彼女が彼に恋した時_14_4

こうして二人とも制服から私服に着替えると、笑顔で手を振る真菰さんに見送られながら、鱗滝家を出た。

そしてそのまま鱗滝君はかつて知ったると言うくらいよく行ったらしい村田家へ。

村田家は幼馴染というだけあって歩いていける距離だった。
やや広めではあるが普通の住宅。

鱗滝家を出て来たばかりだからそう感じるというのもあるのだろうが、その普通っぽさがまさに村田君の家と言う感じで、なんとなくホッとする。
まあ…状況を考えるとホッとしている場合ではないのだろうが…。

鱗滝家とは違って極々普通の門の横にあるインターホンを鳴らすと、返事もなく中から飛び出てくる村田君。

──錆兎、遅いっ!!
と、いつもいつも苦笑しているか動揺している印象の彼としては珍しく、そう怒鳴って鱗滝君の腕を掴んで駅の方へと歩き出す。

目が真っ赤でなんだか緊迫した様子で、いつもの村田君とは全然違った。


急いで、急いでっ!!と、鱗滝君の腕を引っ張る村田君。
義勇のことも目に入っていないようで、義勇が居ることについての反応もない。

まあ…こんな時にそんなことを思って居る場合ではないのだが、イジメられたことはあっても、ここまで誰かに存在をガン無視されたことのない義勇は。戸惑いと…ちょっとした不快感を覚えた。

その相手である村田君が、義勇の大切な鱗滝君の腕を取って彼を急かしているという事実もそれを加速させる。

それでもなんだか憔悴している様子の村田君に追い打ちをかけてはいけないのだろうと、色々に鈍い義勇もさすがに思うので、

──約束の時間おしてるの?急がないと焼き場に行っちゃって最後のお別れができないとか?

と、こっそり鱗滝君の反対側の腕を取って聞いてみたのだが、そこでそれまでは駅の方へと前のめりだった村田君がピタッと足を止めた。

そして…その横で鱗滝君が珍しくびくうっ!!と怯えたようにすくみあがる。

え?え??

いつもとは違った二人の様子にきょとんと小首をかしげる義勇をかばうように、鱗滝君が義勇を後ろに隠すようにして

「すまんっ!!義勇はたぶん何か勘違いしてるんだっ!
悪気はない!!
それでも腹の虫がおさまらないようなら俺を殴ってくれっ!!」
と、いきなり村田君に謝罪し始めたので、義勇はますますわけがわからなくなった。

が、とりあえず二人の様子から自分はとんでもないことを口にしたのかもしれないとは思って

「ごめん…私、何か悪い事言った…んだよね?
えっと…不死川と貞子ちゃんの妹が亡くなったって聞いて…そのことで行くのかなと思ったから…お葬式とかが家族葬で、親しい人だけ参列とかなのかと思ったの。
でもだいたいお通夜とかって夕方とかからが多いから……」
と、思っていたことを口にしつつ謝罪すると、村田君はよく鱗滝君がそうするように、怒りの気持ちを逃がすように大きく息を吐きだした。

一方の鱗滝君は、何かわかったようだ。
あ~!!と小さく叫んだあとに、義勇に言う。

「えっとな、亡くなったのは不死川家の次男。弟の方。
次女の寿美は意識不明の重体で現在入院中なんだ。
で、面会謝絶だけど、寿美と仲が良かったってことで、貞子が村田をこっそり病室に入れてくれるって話だから、今目立たないように病院に向かっている」

──ええっ?!!でもニュースだと…
と、義勇が出したスマホを覗き込む鱗滝君。

──次子ってあるだろ?
──あ……なんか2番目の女の子だと思い込んでた……
──2番目の女の子なら次女な。次子は男女関係なく上から2番目。不死川家の場合、実弥の次は例の暴力事件起こした玄弥だ。


義勇と鱗滝君がそんなやりとりをしていると、村田君がまたため息。

──誤解が解けたところでもういい?急ぎたいんだけど…
と、一瞬なにか他にも言おうとしたのか口を開きかけたがそれは飲み込んで、彼にしては珍しく突き放すような声音でそう言うと、返事を聞かずにまた歩き始めた。






2 件のコメント :

  1. 良かったですぅ!いや、良くないけどやっぱり良かったですぅ!最悪の事態が寿美の死じゃなくて本当に良かった!私の予想?想像?では寿美が死んじやうのかなと思っていて、いやいや死ぬべきは父親でしょ!実弥がやり返したら打ちどころが悪くてとか、もしくは父親の激しい暴力で実弥が死ぬか、実弥を庇って玄弥が死ぬとか、忘れ物を取りに来た貞子が父親に見つかって母親の居場所を言わそうとした父親の手加減無しの暴力でとか。天罰を受けるべきは(玄弥はギリ許す)この3人でしょ!まぁひとまずは良かったけど、意識不明かぁ、後遺症無しでお願いします!9~10歳の幼女が必死に真っ当に頑張ってあるんです!オトナになってサラサラと添い遂げさせてあげて下さい🙏


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    1. 当初はその予定(寿美が死)だったんですけどね。
      あまりにやめて~という声が多かったので、展開を若干変えてみました。
      村田さんが寿美に会うの最後って書いちゃったので、それを”不死川”寿美にって書き足して、次に会う時に母の旧姓”生田”寿美になっていたということで😅

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