姉が壊れたのは恐らく親友だと思って居た子が実は父や兄がやらかしたことをずっと恨んでいて不死川家に復讐しようと思って姉に近づいたのだということを知った時だったのだと思う。
だけど、感謝をしつつ立ち直っているように見えた姉は静かに壊れていた。
誰も気づかない。
おそらく気づいているのは自分だけだろうな、と、寿美は思う。
そこで寿美はもう、保護が必要ではなくなる年齢まで色々をやり過ごして待っていてはダメだと思った。
このままでは父も兄達も同じように問題を起こし続けて、そのとばっちりで自分達は破滅する。
姉が壊れたと思う寿美だが、それでは自分は壊れていないのかというと、そういうわけでもない。
たぶんずっと感情が壊れているんじゃないか…と、今回のことが起きる前から思い続けて来た。
1歳年上の姉の貞子は兄達の事も弟妹の事も少なくとも壊れてしまうまでは大好きだったと思う。
いつも皆が少しでも幸せであるように心を砕いていたと思うし、問題を起こせば心を痛めた。
でも寿美は違う。
正直常に逃げることを考えていたし、逃げるとしたらどこまでは残してどこまでは切り捨てるのが安全か…ということを考え続けていた。
長兄次兄はダメだ。
資質も考え方、行動パターンも父親に近すぎる。
確かに父のように寿美たちを殴りはしなかったが、その代わり他人を悪気なく当たり前に殴っている。
いつかはそれで犯罪者になるか。法的に訴えられなくても誰かしらの恨みを買うのは目に見えている。
…というか、今回もすでに先輩達が介入してくれなければ、自分達の理性のない衝動のせいで弟妹の人生を終わらせるところだったのに、悪いとも思って居ないのだ。
いや、もうこのさい、罪悪感を持てとは言わない。
ただ、その行動がそういう結果を招くのだという因果関係は自覚して自重するなら、別にそれでいい。
それすらも出来ない馬鹿はさすがに関わられても迷惑だ。
とりあえずDV野郎の父親と共依存になっている母を覚醒させるしか、寿美たちが平和に生きる道はない。
今回の諸々は姉の一件も含めて良い説得材料にはなった。
我慢すれば良いというものではない。
このまま父や兄達と居れば、幼い弟妹まで父や兄に対する報復で危険な目にあったり人生を閉ざされたりするのだ、と、繰り返し母を説得。
ネットのお姉さま方のアドバイスに従って録画機能付きの赤ん坊用の見守りカメラで撮りためた父の暴言や暴力の画像を整理。
母にはとりあえず離婚を目指してDV被害女性のためのシェルターに駆け込むことを約束させるところまでは持ち込んだ。
それに際して、母は子ども全員とと主張したが、寿美はそれを却下。
兄達二人はすでに手遅れで、連れて行けば下の弟妹の害になるのは父親と一緒だから離婚の意味がないと説明。
家庭内で暴力を振るって居なくても、二人は外で他人様に暴力を振るうのが日常になっているのだから、目の前に起こっていないからといって、目を背けてはいけないと、そこは何度も何度も実例を挙げて繰り返し説得中だった。
本当は一人で全てを進めるのは正直しんどかった。
ネットで親しくなって親身に相談に乗ってくれる顔も知らない人達に何度も励まされ、地面をはいずるような思いで頑張った。
今回の諸々は母以外の家族…特に父と兄達に気づかれたら終わるので、家じゅうにアンテナを張り巡らせるくらいの気持ちで注意深く周りの変化も伺って…そうしていたら、なんだか気づいてしまった。
たぶん…姉が何かを企んでいる。
標的はわかる。
今回色々助けてくれた先輩の一人鱗滝先輩の彼女の冨岡さん。
学内でも有数の人気者の先輩の彼女だけあって、同性の寿美からみても綺麗な顔立ちをしていて、成績も良くて…なのに尖ったところがなくて、ほわ~んとした雰囲気の、一般的に愛らしいと言われる類の人だ。
しかも彼女、ただの先輩じゃない。
長兄が6年間嫌がらせを続けた想い人である。
姉が彼女に近づく目的もわかる気はするが、候補は二つ。
彼氏の鱗滝先輩奪取か、長兄を自分達から遠ざけるための生贄か。
どちらがメインかは絞れない。
後者だったら利害は一致するし協力しないでもないが、前者だって別に手も口も出す気はないし勝手にすれば良いと思う。
ただし…どちらも他から非難を浴びない方法でやるなら、という前提でだ。
なので、姉に何に対してとは言わずに、チクリと釘は刺しておいたが、さあ、どこまで気にしてもらえるだろうか…。
錆兎の出番が待ち遠しいです。それにしてもため息でるくらいイヤな家族ですね…( ;∀;)
返信削除このあたり、なかなかSbtをかけなくて、自分でも寂しいですw
削除錆兎の登場をお待ちしています。やはり育った環境は大事だと痛切に思いました。
返信削除自分が育った環境の常識が世間の非常識とか、ままある気がしますね💦
削除