寮生はプリンセスがお好き
──申し訳ありませんっ!いかなる処罰も受け入れますっ!! それはなかなか壮観だった。
おそらくシャマシュークの他の寮長や高等部生達が見たら感動のあまり目を潤ませるであろうこの光景は、そのスピリットを根底から否定したロディには不快なものとしか映らなかった様である。 口の端を歪めて嫌な笑みを浮かべてシャルルを見た。
──おや、うちのを連れ帰ってくれたのか、軍曹。 慌てた寮生とは対照的に、少し経って出てきたロディは随分と落ち着いていて、にこやかに言う。
ユーシスがそんな風に暗躍している頃、ギルベルトは寮生達を率いて金竜寮へと向かっていた。 ギルベルトの次に戦力があるであろうバッシュとルートは銀竜の寮生全員と寮長のルークとプリンセスのフェリ、そして金狼の寮長の香とプリンセスとは名ばかりの怪力アルと共に自寮のプリンセスの護衛に残し、...
アンが自分の携帯を取り出すと、ユーシスは ──これ、借りていいかな?直接話したい。 と上から手を伸ばしてそれを取り上げた。
──こんな遅くにごめんなさい… 動揺している様子をより鮮明にするため、上着も着ずにエントランスまで出てきたアン。 さすがに肌寒いがそれもか弱さを強調するためだ。 自分で自分を両腕で抱きしめるようにすれば、紳士なユーシスはきっと ──大丈夫だよ。それより寒いだろう?これを着て? と...
『銀狼寮には手を出すな』といきなり言われた理由は、傭兵派遣や警備を担っている業界一の大企業ツヴィングリ社の社長であるバッシュ・ツヴィングリが銀狼寮の寮生として在籍していて、すでにアンがJSコーポレーションの意志で動いていることを察知されているから、ということである。
打倒、銀狼寮プリンセス!! …を当面の目標にすることを決意したアン。 明日からは本格的に落とすターゲットをギルベルトに絞って、彼と一緒にあの女…もとい、あの女に似た銀狼寮のプリンセスを追い詰めて行こう。 なんならすべてが寮対抗のこの学園でライバルにあたる他の寮のプリンセスをやっぱ...
…ふふ~ん、明日こそは彼の笑顔は私のもの~♪ シャマシューク学園の教職員宿舎の一室で、アン・マクレガーは鼻歌を歌いながらドレッサーを前に髪を梳かしている。
ギルベルトが寮内の大広間についた時には、すでに寮生達は皆、前回の寮対抗戦略大会…通称プリンセス戦争時に着用していた銀狼寮のトレーニングウェアを着用の上、モブ三銃士の一人のマイクの指示で運び込まれたソレ用の防具を身に着けた状態でカイザーを待っていた。
「おぉっ?!すげえっ!!」 立派な刺繍のマントを手に驚くギルベルトにアーサーはフフッと嬉しそうに笑う。 「誰かがプリンセス戦争で金虎のカイザーが金の虎の刺繍のマント着てたって言ってたから…うちも着たらカッコいいかなと思って、こっそり刺繍してたんだ」 と言うプリンセスは最高に可愛い...
──あ~、仕方ねえっ!三銃士、誰かお姫さんとルッツを呼んで来てくれ。 結局ギルベルトは決断せざるを得なかった。 少なくとも知らなければもう少し放置できたものでも、こうして知ってしまえば学園の伝統と誇りを踏みにじろうとする輩を放置するのは、ギルベルトの心情うんぬんは置いておいても寮...
「…軍曹、あの……」 案内の寮生に先導されて寮長室のリビングに入ってきた金竜のプリンセス、シャルルは、少し落ち着かなげにそこにいるバッシュにチラリと視線を向けつつ口を開いた。
「銀狼寮、恐ろしいな。 勝てる気がしてこない…」 モブース達の説明を受けたあと、ユーシスは驚きを隠せないように小さく首を横に振りながら言った。 「統率取れすぎだろ。 他の寮でも優秀な寮生は居るが、これだけ優秀なのに自己主張がほぼなくて、カイザーファーストな寮生なんて見たことがない...
「全員の確認終了。 結論から言うとロディの排除は了承。 ただし…それに関しての責任は銀虎で取ること。 つまり、俺らはお前に協力を求める見返りとして、ロディの排除というお前の側の条件を受け入れたという形を崩さないこと」
ユーシスを寝室に残してギルベルトは再度リビングへと戻ると、その場で待っていた自分以外の6人に事の次第を説明した。
最悪巻き込まれたくないと協力を断られる可能性は考えていたのだが、条件…を出されることは正直想定の範囲外だった。 それでも出来れば協力が欲しいので 「…こちらの計画に支障がないことで、俺の一存で決められる範囲のことなら?」 と先を促してみるとユーシスは言った。
ギルベルトがメッセを送ってからほんの数分後、今度は電話の着信音がする。 「今、外か?」 と電話に出て聞くと、 『ああ。そうだ』 と返答があった。
ギルベルトがアーサーをルートの部屋に送って行って戻ると、すでにギルベルトの寝室の窓の外の木の上に香とフェリシアーノが待機していた。
「じゃ、終わったら迎えに行くから。 お姫さん一人くらい抱えて帰れるから眠かったらルッツのベッド借りて寝てても良いぞ」