寮生はプリンセスがお好き10章18_理性と感情による結論

最悪巻き込まれたくないと協力を断られる可能性は考えていたのだが、条件…を出されることは正直想定の範囲外だった。

それでも出来れば協力が欲しいので
「…こちらの計画に支障がないことで、俺の一存で決められる範囲のことなら?」
と先を促してみるとユーシスは言った。

「ロディを切る。
金竜のどこまでを切るかの判断は要相談だが、あいつはダメだ」
「あ~…それは前回の私怨…と捉えていいのか?」

前回…3年寮と同盟を組みながら初っ端から裏切って、ロディがこともあろうに3年寮のプリンセスを襲って怪我をさせたことでユーシスが激怒していたことは、ギルベルトとしても記憶に新しい。

プリンセスを敬い守るのは寮長の責務…と言いつつも、ずっと一番傍で守っていれば情も沸くし、単なる仕事を超えて守ってやりたいという気持ちは痛いほどわかる。

だがイベント内の恨みはイベント内で。
その後に引きずらないというのが本来の姿だとも思うし、あのあとロディは金銀虎寮の寮長二人にボッコボコにされたので、イベント後も…と言われるとギルベルトも諸手をあげて賛成とは言えない。

う~ん…と少し悩んでいると、銀虎寮長はギルベルトが考えていたよりもずっと色々を考えていたようだ。
思いがけないことを口にした。

「…もちろん銀虎寮のプリンセスの守り手としてあいつが許せないと言う感情はないとは言わないが、今の不安定な時期にシャマシュークの風習をないがしろにしているあいつを野放しにするのは危険すぎる」
「へ??」
驚くギルベルトにユーシスは苦笑した。

「伊達に3年目じゃないからな?
今年に入って学園内がおかしいのは俺もカインも気づいていた。
たぶん…学園長が替わったあたりからか…。
最初の交流イベもカインの別荘で攻撃仕掛けてきた奴も、なにかしら同じ目的で動いているんだろう。
で、たぶん行事のたび何かしら仕掛けていて失敗してを繰り返して、今回のアン・マクレガーの投入というところだと思っているんだが…」

うわぁ…と思った。
そこまで気づいてたのか…。

もう舐めていた。
3年生を舐めすぎていたぜ、俺様っ!

…と、壮絶に猛省しながらも、なら何故今まで黙認を?と聞いてみると、ユーシスは笑って

「自寮のプリンセスが一番だからに決まってるだろ。
後輩を助けてやりたい感が全くないわけではないが、下手に手を出すとうちのプリンセスにも飛び火するかもと思えば、スルーが正解だ。
そのあたり、カインと相談してこちらに実害が来るまではスルーであと1年乗り切るぞという方針だった」
と白状する。

まあ…そういう理由なら責められない。
自分が同じ立場でもきっとそうする。

ギルベルトの生温かい笑みでその考えを察したユーシスは先を続けた。

「だが今回はそうも言ってられなさそうだしな。
俺やカインも洗脳のターゲットに入っているとなれば、プリンセスの安全を守り切れない。
実際、アンを取り巻いていた馬鹿どもが、軍曹に怒られたルークがアンを置いてフェリの飯を届けに行ったことについてブチブチ言ってたからな。
それについて、アンがきっとフェリがひどく怒って軍曹をけしかけたんだろうみたいなことをもうちっとか弱く同情を引くような言い方で言ってたのを聞いて、寮長を落とすだけじゃなくてプリンセスを害そうとしている害虫女だとわかって、これはうちのプリンセスにも同じことをされかねないと思った。
…で、このあたりで俺も汚染されたのかちょっと感情がぐらぐらになったんだけどな。
寮長は実務で寮を仕切り、プリンセスは象徴として寮に君臨する。
これはシャマシュークの伝統であり、絶対的な指針でもある。
もちろん賛否両論あるだろうが、少なくとも寮長はこの伝統を受け入れることを前提で様々な特権も名誉も手にしているのだから、寮長だけはたとえ最後の一人になろうとプリンセスを守るという責務を放棄すべきじゃない。
…ってことでな、ロディが寮長であるべきじゃないというのは、そこなんだ。
プリンセス戦争の時、最悪俺とカインを裏切ったのは道義的にはどうであれ、戦略的に絶対NGというわけじゃない。
ただ、奴は自寮のプリンセスさえ見捨てて勝利に走ってるからな。
プリンセスを捨てる寮長と言うのは、このシャマシュークでは絶対に許されないし、この学園の一番の指針であり良心であり責務であるそれを簡単に捨てる人間は、自分の利になると思えばどんなえげつないことでもやってみせるぞ?
寮長は確かに実務能力がある人間がなるものだが、だからと言って良識に著しくかける人間性が最低で尊敬できない奴がなっていいものじゃない」

「あ~…なるほど、そこかぁ…。
そうだよな…。
プリンセスを守ると言うことは学園の伝統と方針を守ることで…そのあたりを破壊しにきてる輩と戦うのにそこを全く気にせず平気で裏切る奴を置いておくのは確かに危険だな…」

ユーシスの言葉で何故ロディを排除すべきとしているのかは納得が出来た。
言われてみればなるほどリスク管理上からも少なくともロディと一緒には戦えない。

「…もしその条件が飲めないとしても……」
と、ギルベルトは少し考えて言う。

「ユーシスは当然マクレガーにつくわけでも静観するわけでもなく、自分はロディを排除する方向で動くってことだよな?」
「そういうことだ。
まあ…洗脳かけられるたびに軍曹のとこに解きに来ないとダメだけどな」
「ああ、それは…大丈夫なようにする」
「え?なにか方法があるのか?」
「あ~…まあ、たぶん?
てかな、こっちは俺だけじゃなくて色々集まってて…
ロディの件については俺だけじゃ判断しきれないから、ちと他の意見も聞きたい。
ちょっとここで待っててもらっていいか?
中には身バレヤバいあたりもいて…完全に全員晒して良いかも本人達に聞かねえとだから。
でもってユーシスが今言ったことは、そっちに共有して大丈夫だよな?」
と念のため確認を取ると、なんだか確信をしているようで
「ああ、いい返事を待ってるよ」
と彼はわりあいと穏やかな様子でそう言った。








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