寮生はプリンセスがお好き10章21_金の竜からSOS

「銀狼寮、恐ろしいな。
勝てる気がしてこない…」

モブース達の説明を受けたあと、ユーシスは驚きを隠せないように小さく首を横に振りながら言った。

「統率取れすぎだろ。
他の寮でも優秀な寮生は居るが、これだけ優秀なのに自己主張がほぼなくて、カイザーファーストな寮生なんて見たことがない。
しかもただ指示を待つだけじゃなく、カイザーに必要になるかもしれないと思えば自主的に動くし…。
香だけじゃなく俺も欲しいわ、こんな部下」
と言うユーシスの言葉には全く興味なさげだが、それに対するギルベルトの
「いいだろっ。
俺のお気に入りだっ」
には、やはり3人は揃って感激して涙する。

「まあとりあえずユーシスと香のとこの連絡待ちか…」
と、そんなやり取りをしながらも、今日のところはここまでか…と解散前にしつこいようだが大切なプリンセスが用意してくれたお茶だからと、アーサーが準備していった紅茶を飲んでいると、なんだか廊下をバタバタと慌ただしく走ってくる足音が聞こえてきた。

しかし部屋の前まで来ると、あれだけ慌てているようだったのに平常時のままの節度ある強さのノック。
これに対しても、──銀狼、もう全員訓練され過ぎてね?…と香が感心したようにため息をついた。

とりあえず他寮組はまだ居ることを知られない方が良かろうと、ギルベルトはユーシス、香、フェリシアーノに寝室に居るように言いおいて、リビングを出るとドアを開ける。


「…こんな時間にどうした?何か非常事態か?」
今の状況が状況なので、つい自然に非常事態という言葉が口をついて出て、一瞬しまったか?と思ったが、伝えに来た寮生は
「はい。非常事態ですっ。
金竜のプリンセスがうちに助けを求めてきましたっ!」
と、驚くべきことを伝えてきた。

「へ??シャルが?一人か?」
夜中に他寮のプリンセスが訪ねてくるなんて、確かに尋常じゃない事態だ。

通常なら寮長の護衛もなく出歩くこと自体がありえないわけなのだが、それなら金寮のプリンセスがではなく、金寮のカイザーがというところだろうから、少なくとも寮長のロディは一緒ではないのだろう。

…となると、理由は一つか…

「わかった。すぐ会うからここへ通せ」
ギルベルトが言うと、寮生は敬礼して部屋を出て…そして少し離れたあたりで走る足音が聞こえる。

──すげ。てか、挨拶敬礼って…
と、こっそり寝室のドアの隙間から覗いていた香が笑って言うと、ギルベルトは

──当然。返答はJa!かサー・イエッサー!のどちらかだ。
と当たり前に答える。

それにユーシスも
──ここは本当に訓練された軍隊か…
と、呆れたように軽く首を横に振った。










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