寮生はプリンセスがお好き10章20_顔合わせとご相談

「全員の確認終了。
結論から言うとロディの排除は了承。
ただし…それに関しての責任は銀虎で取ること。
つまり、俺らはお前に協力を求める見返りとして、ロディの排除というお前の側の条件を受け入れたという形を崩さないこと」

寝室に戻ったギルベルトはまず先にこちら側からの確認事項を明言しておく。
もちろんユーシスはそれに意義を唱えることはない。

「それはむしろありがたい。
俺の方も、排除に成功するにしてもしないにしても、他の誰でもない、銀虎の寮長である俺があいつを寮長としてふさわしい人材と認めていないということは知らしめておきたい。
たとえ軍曹達に協力は求めたとしても、誰よりそう思っているのは俺達虎寮組だ。
ま、俺は本来は先頭切る人間じゃないんだが、カインが今おかしくなってしまっているからな」
きっぱりとそう言いつつも、最後は困ったように眉尻を下げる。

「まあそのあたりも…正気に戻すことはたぶん難しくねえから。
ただ、戻しても再度洗脳される可能性を考えると今の時点では戻したくないっつ~のが本音だな」

「ああ、そのあたりはわかる。
戻したら絶対にこちらの事情を知るまで諦めん奴だし、手の内明かしたあとに再洗脳されたら目も当てられないからな。
解決後に壮絶に拗ねそうだが、それは俺の方でフォローするから気にしないでくれ」
と、彼の相方である金虎のカインに対する対応も意見の一致をみたところで、ギルベルトはユーシスを連れてリビングへと戻った。



「…香は…まあ居るんだろうなと思っていたが、フェリは正直驚いたな。
フェリの方が頼っている感じだったから、軍曹の方から声をかけるとは思ってなかった。
それとも銀竜も何かあったのか?」

言われてフェリシアーノは苦笑する。

「さすがユーシス先輩。
そう。今回はギルベルト兄ちゃんの方から声をかけられたんじゃなくて、俺の方が助けて欲しくて来たの。
正確に言うと、今回…じゃなくて、今年に入った直後くらいかな?」
と言うと、なるほど、と、ユーシスは勧められるままギルベルトの隣に座って聞く体制に入った。

そこでフェリシアーノが自分の側の説明に入る。
それはさすがにユーシスの想像の範囲を超えていたようで少し驚いたように時折り眉をぴくりぴくりと動かしながらも、表面上は驚いた表情も見せずに淡々と聞き入っているのが冷静さが売りの彼らしい。

そうしてフェリシアーノが話し終わると、まず、──事情はよくわかった…と一言言ったあとに、ソファの上で組んでいた足を解いてフェリシアーノの方に少し身を乗り出すようにして口を開いた。

「最初に言っておく。
俺は父親もシャマシューク学園に幼稚舎から身を置いていて、俺自身も同じくだ。
そして親子共に友人知人交友関係のほとんどがこの学園の学生生活から築かれている。
つまり…この学園は実家も同然だし、こういう性格だからそうは見えないかもしれんが思い入れは人一倍あるつもりだ。
なので今回の問題の解決に当たっては当然尽力するつもりだし、フェリの方で問題がなければ、根本的な解決のために外部に連絡も入れて、父が築いたシャマシューク学園OB達の人脈をも使いたいと思うが、どうだ?」

そうか、その手があったか…とギルベルトは今更ながら思う。
バイルシュミットは決して人脈がない家ではないが、親世代はシャマシューク学園の卒業生なわけではないので、この学園にがっつり思い入れがあるOB達の引き込みという発想がなかった。

その点、ユーシスは親世代からのかかわりがある上に、実家も社交界では有名な家なので、確かにかなりの人脈を持っているだろう。

「お、お願いしますっ!
俺、爺ちゃんの学園を守りたいんですっ!」
と、もちろんフェリシアーノがそれを拒否することはない。

そこでギルベルトは香にも言う。

「香、そう言えば王もそうだろ?
今回は通常出回っていないレベルの違法新薬まで使われてて学園内のいざこざじゃすまなくなりそうだし、一応、アウスレーン家は事態を重く見て介入に動く予定だと言うことも添えてな」

「らじゃっ!洗脳は下手すれば俺自身がやばい奴になる可能性あるし?
あとは…裏薬物関係なら王大人の人脈イケるかも?」
と香は即メールを打ち始めた。

「まあ…マクレガーって敵だとわかってる奴が居るから、そこからたどって行けば黒幕に辿り着く可能性も高いしな。
敵を潰しておくなら今がチャンスだし、慎重に行くか…」

出来るなら味方である大人たちのフォロー体制が整ってから完璧に…とギルベルトが出した結論に、とりあえずそこにいる面々も同意する。


「で…軍曹、質問いいか?」
すでに父親にメールを送り終わったユーシスが、唐突に言った。

「ああ?なんだ?」

まあ実家の人脈までつぎ込む時点で敵に回ることはないだろうし、と、なにごとも包み隠さないつもりでギルベルトが聞くと、ユーシスは
「香はわかる。
フェリがいる理由もわかった。
で、もう一人はツヴィンクリ社の社長だよな?
そこが居るのも大いに理解する」
と、それぞれの顔を見回しながら言うと、最後にモブ三銃士でぴたりと視線をとめた。

「で?こいつらは?初めて見た」
と聞くユーシス。

まあここに集まっているメンツは皆、それぞれに特別感のある人間なので、見るからに一般寮生と言った3人が居ることを不思議に思うのも無理はない。

しかし彼らはギルベルトにとってはここに居る皆に負けず劣らないほど特別な人間なのだ。
それを主張しようと口を開きかけるギルベルトよりも早く、香が笑顔で言った。

「あ~、モブ三銃士?
こいつらギルの隠し玉。
気が利くし仕事そつなくこなすし、何よりグレイトなのは寮長に対する絶対的な忠誠心。
もうマジうらやましす。
俺もめっちゃ欲しいっ」

「まあ、そういうことだ。
俺がルッツと同程度に信頼している最高の部下な?」
と香の言葉にギルベルトがそう添えると、
「もったいなさすぎるお言葉っ。
俺ら今日が命日かもしれませんっ!」
と3人が揃って号泣した。

そしてしゃくりをあげながらも
「我々はカイザーとプリンセスの幸せのためだけに存在するモブなんですっ。
お二人を推し続けて早11年っ!
お二人を間近に見られて同じ空気を吸えるだけで幸せですっ!!」
と主張する。

「あ~、じゃあモブ三銃士、俺のためにもうひと働きな?
ユーシスにさっき皆に説明したことを説明してやってくれ」
とギルベルトが言うと、
「承知いたしました!喜んでっ!!」
と、予備の資料をユーシスに渡して、今日1時限目からの2年の様子から昼休みの諸々までの説明を始めた。













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