寮生はプリンセスがお好き10章24_プリンセスのご利益

「おぉっ?!すげえっ!!」
立派な刺繍のマントを手に驚くギルベルトにアーサーはフフッと嬉しそうに笑う。

「誰かがプリンセス戦争で金虎のカイザーが金の虎の刺繍のマント着てたって言ってたから…うちも着たらカッコいいかなと思って、こっそり刺繍してたんだ」
と言うプリンセスは最高に可愛い愛おしい。

「ダンケ!
プリンセスの香りをまとって、プリンセスが刺繍してくれたマント羽織ってたら、もう俺様は負ける理由なんて一つもねえな」

そう言って笑顔でアーサーを抱きしめるギルベルトに、モブースが──カイザー、そのことなんですが……と、口を開いた。

「ん?なんだ?」
とルートと並んでアーサーの後ろに立つモブースに視線を向けると、モブースは
「飽くまで可能性なんですが…」
と前置きをしつつ、香水の小瓶をかざして見せた。

「うちの寮の寮生にだけ敵の洗脳が効かない理由って…もしかしてプリンセスの香水が原因だったりしませんか?」
「あ……そうか…!」
モブースの言葉にギルベルトはハッとした。

確かに銀狼の寮生には暗示が効かないだけではなく、洗脳されている学生も近づけば洗脳が解けるという現象が起きている。

色々バタバタしすぎていてその原因の究明を後回しにしていたが、言われてみれば明らかに全員が他の寮と違うことと言えば、全員で同じ香水をつけていることがある。

さすがモブ三銃士。
と感心するギルベルトだが、当のモブースは
「やっぱりエルサイアオデッセイのアリアは巫女姫で、聖なる力の持ち主なので、うちのプリンセスもきっとそうなんですよっ!」
と、微妙に二次元と三次元の間をフラフラした結果、思いついたようだ。

まあそれでもいい。
結果が正しければ過程などこの際どうでもいいことだ。

「たぶんそれだっ!
最終兵器はお姫さんの香水だなっ!
…ってことで…今いくらか余分はあるか?」
と聞けば
──ありったけ持ってきますっ!
と自室に向かってダッシュしていく。

しかしその後姿を見送ったアーサーが
「ギル、香水が洗脳の解毒剤とわかると、それを作っているモブースの家は危なくならないか?」
と少し気づかわし気に眉を寄せた。

「あ~、そうだな。
お姫さんはよく気づくし優しいな」
とプリンセスに微笑みかけながら、ギルベルトは少し考えて、
「お姫さん、手芸趣味ならいくらか太めの糸か細めのリボンとか持ってたりしないか?」
と聞く。

「…飾り紐なら色々持ってるけど?」
「じゃ、それをありったけもらえるか?
あとで買って返すから」
「別にいいけど??」

言われてアーサーは自室に入って箱いっぱいの糸やリボンを持ってくる。
それを受け取ったギルベルトはハサミでそれを片っ端から切って、戻ってきたモブースが手にしていた香水をふりかけた。

「…これは?」
と聞くアーサーに
「あとで寮生皆でこいつを輪に結ばせて、洗脳から身を守れるお姫さん印のお守りのブレスレットとして他寮の奴に配る。
これなら洗脳の解毒が香水って方向にいかないだろ」
とウィンク。

「さすがギルっ!!」
と、それに感心するアーサーと
「聖なる巫女姫アリアのお守りですねっ!」
と盛り上がるモブース。

「とりあえずこれで準備は出来たし、寮生達もそろそろ集まってるだろうから俺様も広間に行くわ。
お姫さんも出陣式は出席して、その後はルッツとフェリちゃんとアルとで城の守りな?」
と、ギルベルトは大量の糸の入った箱をモブースに持たせると、アーサーの手を取って広間へと急いだ。











0 件のコメント :

コメントを投稿