寮生はプリンセスがお好き10章34_乱入者

──申し訳ありませんっ!いかなる処罰も受け入れますっ!!

それはなかなか壮観だった。

まず銀狼寮の救護班が数人の高等部生に案内されて怪我を負った中等部生が集められた部屋へと消えていくと、寮長でないが金竜の中枢にいたのであろう高等部生数名がまず、玄関先で揃ってプリンセスに土下座した。

その勢いにビクッとわずかにおののくプリンセスは、気の強い彼らしくもなく少し困った顔でギルベルトを見上げる。

それに苦笑するギルベルト。
お前が決めることだと突き放しても良いのだが、プリンセスと言えどもそこはいきなり激動の中に放り出されて乗り越えたばかりの中等部生である。

「あ~…半殺しにしても良いけど、それじゃ本人達の自己満足で終わるしな。
どうせなら助けたプリンセスの判断が正しいものだったって誰もが認めるように功績をあげさせた方が合理的じゃね?
ま、俺様はそう思うけど所詮別寮の人間だしな。
決めるのは現在この金竜の唯一の御輿で責任者なお姫さんだ」
と助け船を出してやる。

操られていただけということが明らかな上級生達を痛めつけるということには躊躇いがあったらしい金竜のプリンセスはその言葉に心底ほっとしたようだ。

ギルベルトにわずかばかりに笑みを見せたあと、スン…と澄ました顔で
「犯した罪は功績で償え。
そのために今回は不問にするが、次はないぞ」
と言いつつ手で土下座をする高等部生達に立つように合図する。
そこで彼らは一斉に立ち上がり、今度は揃って綺麗な直角の礼をした。

これでなんとかめでたしめでたしか。
武装までは必要じゃなかったか?…と、それでも平和的に終わりそうな争いにホッと息を吐きだしたギルベルトだが、次の瞬間、
「シャルルを寮内に逃がせっ!!」
と叫ぶと、彼を金寮の高等部生の方へと押しやって、自分は自寮の寮生の方へと駆け出した。


──全員、木々の中へ退避っ!!
とのカイザーの言葉に銀の狼達は急な命にも関わらず動揺することなく即訓練された動きで道の脇に生い茂る木々の下へと走る。

そうして彼らが居たはずの金竜寮前の広い敷地には、大きな音と共に土煙が舞った。

──ありえねえ…。校内で火器使ってくるか?
と、誰にともなくつぶやくギルベルト。

そう、いきなりギルベルト達が来たのと別の側の道から火器をぶっ放した輩がいた。
銀狼の寮生が来たのは銀竜側から…ということで、残る金狼側からである。

夜目がきくギルベルトにはそれが誰かもわかってしまった。
見知った顔。
先日のプリンセス戦争では自分のすぐそばにいた同級生…。

(…あ~、やっぱあいつだったんだなぁ…)
と、さして意外性もないその相手だが、一応自分の同級生でもあるが香の幼馴染ともいえる相手らしいので、少しばかり対応に悩んでしまう。

まあ、悩んでも仕方ないわけなのだが…。
さあ、どう料理するべきか…
とりあえず相手の本命の標的はおそらく自分ではないという余裕もあって、ギルベルトはガリガリと頭を掻きながら、今後の戦闘の絵図を脳内で組み立てていった。











0 件のコメント :

コメントを投稿