俺明日ギルアサ
唯一の少年の住人が現在留守なので、乙女 2 人となった離れでのこと … その 2 人、桜とリヒテンは桜の部屋に集合している。 夜なので暗い部屋。 行灯の灯りが照らす文机に並んで座る 2 人の少女の顔は楽しげで、その口から出る言葉や手元を見なければ実に愛らしく微...
「俺は…邪魔になってる…よな?」 しばらくのち、アーサーはぽつりとつぶやいた。
こうして乙女 2 人の迫力に押されて、アーサーを抱えてぎくしゃくと広間を退出するギルベルト。
「桜ちゃんを歓迎して~。かんぱ~い!」 夕食時、またもや宴会である。 フランシスが声をはりあげて乾杯の音頭を取ると、広間に集まった面々が一斉に杯をかかげる。 フランシスの隣には主賓の桜、桜のもう片方の隣にはリヒテンが、さらにその隣にはアーサー、ギルベルトと並ん...
「ハッハッハ。光秀にあったか。 まあ、気にするな。あれも色々うるさく聞いてきちゃあいたが、アーサーが幸せに暮らしてると知って安堵したんじゃぁねえか」 突然面会を求めたのにもかかわらず、ローマはすぐに謁見を許した。 そしてギルベルトが京の街での出来事を報告す...
「アーサー様!一体何をしておいでなのですかっ?!」 最初は日々あまりに気にしすぎていたために見た幻かと思った。 少年の生母は天皇の妹。つまり皇室とは縁続き。 いくら数年前にその生母が亡くなって側室が幅をきかせているとは言っても、まぎれもなく天皇家の剣術...
「リヒテン!」 とりあえず嵐の元が去ってホッと息をついた菊、ネタが消えてちょっとがっかりな桜。 対照的な二人が部屋を出ようとした時、嵐を呼んだ張本人が、リヒテンの部屋に飛び込んできた。
「あ…ギルベルト様」 「きゃあぁ~!本物のギルベルト様~!!」 と、リヒテンと桜がほぼ同時に口を開く。
「申し訳ありません!!どうかこのことはアーサーさんやギルベルトさんには内密に!!!」 いきなり戸口でガバっと土下座する菊。
さあ、これで菊の問題は良いとして…リヒテンの方をどうするかだが… 「どうやって口説きおとすかな」 誰にともなくつぶやいて頭に手をやる。 考えながら歩いていると、ふと頭の上から目録が差し出された。
「さて…と、朱雀通りの花屋、ここか。」 しばらく後、久々に正装をしたアーサーは、にぎやかな通りを馬で闊歩していた。 元々名家の出だけあって、その気になれば立ち振る舞いは優雅な上、顔立ちも整っている。 それが極々普通の町の花屋に入っていくのだ。 行きかう...
「さて…坊ちゃんにも少しお休みをあげないとねぇ。 親御さんにもお別れを言いたいだろうし」 帰る道々フランシスは考え込む。
「今回の戦も見事だったなぁ、おい」 フランシスとギルベルトは戦勝報告にローマの城に来ていた。
ゆっくり遊びながら上機嫌のアーサーは、慣れた様子でギルベルトの庭の垣根をくぐった。
「フランシスさん、宴の支度が整いました」 お互いにお互いを気にすることなく、だが同じ空間でそれぞれ好きかってに過しているうち、夕刻になっていたようだ。 菊の呼ぶ声でフランシスはワイングラスから、アーサーは書から目を離した。 「あ、アーサーさんもこちらだった...
「クソヒゲ!いるか?!」 リヒテンの部屋を出てアーサーはまっすぐフランシスの離れに向かった。
「おかえりなさいませ。」 数日後、無事京都のボヌフォワ邸の門をくぐると、笑顔のリヒテンの出迎えを受ける。 それぞれに馬を降り、散っていくなか、アーサーはリヒテンに駆け寄った。 「リヒテン~!ただいま!」 そのままリヒテンにぎゅ~っと抱きつく。
ギルベルト率いる別働隊が敵の大将の首を討ち取って帰ってきたらしい。 対峙していた敵はクモの子を散らすように撤退していった。 戦勝を祝う雄たけびが遠くに聞こえる。
こうして迎えた決戦当日 普段ダラダラと朝の遅い面々も、この日ばかりは早朝から鎧兜をきちんと着込んでいる。
(…胃が…痛え……) 戦場まではあと数時間。 夜も更けたので敵に接近する前に野営をする。 戦闘に備えて休まねば、と思うものの、胃痛で眠れない。 しばらく寝床でゴロゴロしていたが、やがて諦めてギルベルトは身を起こした。