俺たちに明日は…ある?── 桜娘は見たっ!3

「申し訳ありません!!どうかこのことはアーサーさんやギルベルトさんには内密に!!!」
いきなり戸口でガバっと土下座する菊。

「菊~、萌え仲間ですっ!!」
顔面蒼白な菊をよそに、興奮してかけよる桜。

「萌えじゃない!!リヒテンさんになんてことするんですっ!
アーサーさんやギルベルトさんに謀殺されますよ!!!
やるなら一人でやってなさいっ!!」
混乱して叫ぶ菊に

「ん~一人で妄想も楽しいですけど、どうせなら同志と語り合いたいじゃないですか」
とノンキに言う桜。

そんな兄妹の会話ににこにこと微笑んでいるリヒテン。


「リヒテン様と一緒にめくるめく禁断の世界にレッツゴーですよっ。
兄妹のよしみで菊も特別に入れて差し上げても良いですよ?」
あくまでマイペースな桜に

「お願い黙って(泣」
と半泣きな菊。

二人の掛け合いがおかしくてリヒテンは可愛らしい笑い声をあげた。
 そして微笑を浮かべて立ち上がる。

「語りあって喉が乾いてしまいました。
お茶を煎れて喉を潤しつつ、また続きをお話しましょう」

「と…とんでもない!私達もう失礼しますからっ!」
慌てて言う菊の声を

「え~。まだまだリヒテン様と語り合いたいです♪
私よりもギルベルト様とアーサー様の日常をよくご存知ですし」
とさえぎるお気楽な桜。

そして青くなる菊

それにかまうことなく、
「では少し待っててくださいね」
とリヒテンが部屋を出て行った。


「さ~く~ら~~。頼みますよ~(泣」
二人きりになった途端に再度泣きが入る菊。

「さすがお貴族様ですね。表現がとても美麗で、ぜひそれを紙にしたためていただきたいです」
桜は菊の言葉を聞いてない。


「ギルベルトさんもですけど、アーサーさんをあなた方のネタにするのは本当にやめて下さい。
アーサーさんはリヒテンさん同様、大殿ローマ様からお預かりしている方なんですから、あまりご気分を害されると皆困るんです」
がっくりと肩を落として言う菊。


「え?!もしかしてローマ様もなんですかっ?!
アーサー様総受けっ?!素敵!!」
都合の良い言葉は耳に入るらしい。桜のはしゃぐ声に気が遠くなりそうな菊。

「お願いですから…本当にまずいですからね?桜」
当然、興味のない言葉は桜の耳には届かない。

やがてリヒテンが盆を手に戻ってきた。

皿の上に透かしの入った綺麗な懐紙。
そのさらに上には可愛らしい丸い菓子がのっている。

「わ~、お姫様のお茶ってお茶菓子からして違うんですね~」
前に置かれた皿から菓子を一つ手にとってまじまじと眺める桜。

「金平糖という…南蛮渡来のお菓子らしいです。
丁度昨日ローマ様が私へと送って下さったので」
にっこり言うリヒテンを前に

「南蛮のお菓子ですよ。菊」
「すごいですねぇさすがは大殿」
と、さきほどまでのやりとりが嘘のように顔を見合わせて笑顔で語り合う兄妹。

その二人の様子を見比べて、リヒテンは美しい笑顔を二人に向けた。

「楽しい方ですのね、桜さん。
今までわたくしの周りには同じ年頃のお嬢さんがいらした事がなくて、こんなに楽しい時間を過ごしたのは初めてです。
宜しかったらお友達になって下さいませ」
そう言ってそっと桜の手を取る。

「きゃあああ!!聞いた?!聞きました?菊!!
お姫様のお友達ですよっ?!!お姫様のヲタ仲間ですよっ?!!
京離れるってことで萌えを語り合える相手がいなくなって寂しいかなと思いましたけど、これで心置きなく都を離れられます」

歓声を上げる桜。
(うああああ…)頭を抱えてびびる菊。


「ずいぶんにぎやかだな。」
そこでさらに菊の肝を冷やす声が…

「ぎる…べると…さ…ん」
今一番会いたくなかった相手の一人が戸口に立っていた。



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