とりあえず嵐の元が去ってホッと息をついた菊、ネタが消えてちょっとがっかりな桜。
対照的な二人が部屋を出ようとした時、嵐を呼んだ張本人が、リヒテンの部屋に飛び込んできた。
元気を取り戻す桜。
アーサーはそれにちょっと笑いかけると、隣にいるリヒテンの方に声をかけた。
「リヒテン、ギルベルトを知らないか?」
「あ、ギルベルト様ならたった今、京を離れる前に色々教えて置きたい物もあるからアーサー様をお買い物にと誘うとおっしゃって、たった今探しに行かれましたよ~」
と、リヒテンの代わりに桜が答える。
その言葉に
「そうだったのかっ。入れ違っちゃったな」
と、眉尻をさげるアーサー。
そのアーサーを見てまたニマ~っとする桜。
さらにその花を見て滝の汗を流し始める菊。
花は何か言いたげに肘で菊の横腹をツンツンつつく。
(はいはい…ラブラブだって言いたいんでしょう?でもお願いだから言葉に出さないでくださいね…)
ヒヤヒヤする菊。
しかしその菊の心配はアーサーの言葉によって解消された。
「そいえば…桜はなんでギルベルトのこと知ってるんだ?菊にきいたのか?
あと何故二人がここに?」
まあ…別な心配が起こるわけではあるが…
桜は全く動じない。というか、まずいと思ってもいない。
「はい♪ギルベルト様は私達、都の街娘の間でもイケメンで有名ですからっ!
で、ここにいるのは、お借りしているお部屋にいたら、すごい綺麗な琴の音が聞こえてきたのでちょっと拝見したら、もう超綺麗なお姫様がいらして、びっくりしてしまって。
で、お茶頂いた上にアーサー様とギルベルト様のお話で盛り上がっちゃいました♪
お二人、お似合いですねぇなんて」
まあ…ぶっちゃけそういう事で嘘はついてないのだが、桜の奇行を知ったらアーサーはどう思うだろうか…心配性な方面に想像力豊かな菊はまた滝の汗である。
「そうだったのか。すごく可愛いだろう?リヒテン。
身分のある姫なんだけど全然鼻にかけたところもないし、ほんわかと優しくて、一緒にいるとホッとするんだ。
ギルベルトに関しては…俺はまだまだ未熟で、天才軍師の隣に立つには精進が必要だけど、並び立てるように見えているなら、喜ばしいな」
嬉しそうに言うアーサー。
ギルベルトに比べると、アーサーはリヒテンに関してはいつもすごくストレートだ。
そして、ギルベルトに関しては、絶対に桜の言っている意味はわかっていないと思う。
単に尊敬する師匠と戦場で並び立つ上での能力的な事だと思っているのだろう。
まあ…菊的にはそうとってもらったほうが平和なわけだが……
「え~!アーサー様だってギルベルト様にお似合いなレベルで素敵だと思いますよ。
むしろ私も男だったら絶対に参戦してます!」
アーサーの言葉にハイテンションで答える花。
(だ~か~ら~、やめて!その方向にもっていくのは~~!)
菊の心の声。
「参戦?」
アーサーが聞き返す。顔面からさ~っと血の気が引く菊。
「ですです♪アーサー様争奪戦♪ギルベルト様がライバルなんて燃えちゃいます♪」
(うあああああ~~~!!!)
菊は心の中で叫んで頭を抱えた。
「プッ!!桜って面白いなっ!」
桜の言葉にアーサーは意外にも怒らずに噴出した。
「それを言うなら、ギルベルト争奪戦だなっ!
俺もずっとギルベルトの隣を目指して精進してるし、負ける気はないけど。
桜が男なら本当に良いライバルとして切磋琢磨できて良かったかも知れないな!」
(…すごい勘違いしてるとは思いますけど、ナイスフォローです。アーサーさん)
ほっとする菊。
「ライバル…ですかぁ…」
「うん。だから桜もそういう気持ちがあるなら、軍師や武人としてのライバルにはなれないかもしれないけど、この軍団を盛りたてていく仲間として頑張ってくれると嬉しい」
にっこりと桜に笑いかけるアーサー。
「はい!頑張ります♪銃後の守りは任せて下さいっ!」
桜はそういうシチュエーションもそれはそれで満足らしい。
アーサーは腐っても貴族。
遊び心もあり、考え方も柔軟で、そのあたりの言葉での駆け引きも上手い。
これがギルベルトだったらライバル云々発言はとにかく…ぶっ飛んだ言動の数々に引かれて穏便に屋敷外退去を言い渡されそうだ。
(ギルベルトさんじゃなくて良かった…)
心密かに安堵する菊であった。
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俺たちに明日は…ある?目次
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