子どものための金の童話
お供はヒーロー 「待たせたねッ!ヒーローの登場さっ!」 森の中を続く道をテックテックリックリック歩いていた一行。 本来の桃太郎なら犬、猿、雉の順に家来になるはずだが…
「…アヘンのくせに可愛いアヘン。ずっとこのままでいると良いある。 にいにって呼んだら桃饅やるあるよ?」
こうして支度を終えたスペインは小さなイギリスと共に城をあとにする。 鬼が島に向かう前にまずは情報収集とイギリスの服を買いに街へ向かう事にした二人。 日本提供のキュッキュッとなる子ども用の靴でとてとてと歩く小さなイギリスはとても可愛いが、やはり小さいだけあってお互いに歩調を合...
「旅用の服…用意せなあきませんなっ」 と、ベルギーが目を輝かせるのに日本も 「私も旅を重ねる者としてアドバイスできると思います」 と大きくうなづく。
「大変だぞっ!トーニョっ!!」 と、謁見の間に駆け込んできたのは見覚えのある銀髪紅眼の青年だ。 こちらも昔懐かしい十字を編み込んだ服の上に鎖帷子をつけている。
「遠路はるばるようお越し下さいました」 それからちょうど1時間後。 謁見の間のドアの横でベルが先ほどまでの様子など微塵も見せない優雅な様子で客人に向かって一礼する。
自分の夢の中なので、やはり迷わない設定らしい。 当たり前に執務室らしい立派な部屋につくと、スペインは中に入る。
「さあ、着いたで~。お目々あけてみ?」 本に引きこまれたスペインと小さなイギリスが再度ぽぉぉん!と飛び出た先は、一面トマト模様の部屋だった。 スペインに抱っこされたまま、きゅうっとスペインの胸元をつかんでいたイギリスが恐る恐るといった風に目を開けると、スペインはイギリスを見...
うわぁ、近くで見るとやっぱりかわええなぁ…。 スペインが絵本から飛び出すと、そこはさきほど見た子供部屋だ。 そして幼児のイギリスがびっくり眼でスペインとスペインが出てきた絵本を見比べている。 その可愛らしい様子にスペインは顔がほころんだ。
こうして会議が終わる前から会議終了後に即ホテルに帰れるように支度を始め、スペインは終了の宣言と共に宿泊先のホテルへの帰宅を急ぐ。
その日の世界会議の会場はアメリカだった。 会議の内容なんていつも頭に入ってないが、今日は見事なまでに頭がシャットアウトしている。 スペインの頭にあるのは日本からもらった【子どものための金の童話】の事のみ。 イギリスと仲良くなれる起死回生のアイテムだ。
「ほんまに懐いてくれるん?嫌われたりせえへん?」 翌日…あれだけ飲んだ割に二日酔いもなくすっきりした顔をしているスペインに、日本がロマーノと共に【子どものための金の童話】の説明をすると、ノリ気ではあるもののやはり近づいて嫌っているような態度を取られるのがつらいと、スペインは確...
「そうですねぇ…イギリスさんは愛情に飢えているところがおありですしね…。」 今日は酔わせようと思って飲ませている事もあり、案の定、スペインは早々に酔っぱらうと毎度同じ愚痴をこぼし始めた。 それに対してロマーノはため息だが、日本はさもお察しいたしますと言った感じに相槌を打つ。
「せめてフランスより先にみつけてかっさらってきとったらなぁ…きっと違っとったと思うんや。 なあんも知らんちっちゃい頃に怖いもんから守ったって可愛がったって…そしたらイギリスの事や、懐いてくれたと思わへん? 少なくともこんなに嫌われへんかったわ」
ホテルにつくと、食事の時の日本の言葉通り、薔薇の花が届いている。 自分がこの話に絶対に乗ってくる事は日本にはすっかり見抜かれていたらしい。 他の国なら少し悔しく思うところだが、相手は日本だからまあいいか…とイギリスは納得する。 むしろ自分が思い悩んでいる事を察してさりげなく...
まあるい月の出る晩に金の蝋燭(ロウソク)白い薔薇。 金の表紙を開いては、祈りの言葉はただ一つ。 “時の縁(えにし)を断ち切って金の鎖をつなげたい” 祈りの言葉を捧げたら、二度と戻れぬ本の中。