子どものための金の童話 第四章_2

自分の夢の中なので、やはり迷わない設定らしい。
当たり前に執務室らしい立派な部屋につくと、スペインは中に入る。


するとそこには見知った顔が…。

「ベル、自分何しとるん?」

立派な執務机の前にたたずむ少女にスペインが目を丸くすると、少女ベルは、また寝ぼけてはるんですか、と、呆れたように腕組みをして少し首を傾ける。

「もうすぐ預言者様がいらっしゃるんですから、しゃんとして頂かな困りますで?
王様がとぼけた事しはるたび、女官長のうちがちゃんとお世話してへんから言われるんやから…」
少し懐かしいようなドレス姿でそう言うベルは、ここではどうやら自分の身の回りの世話をしているらしい。

ベルはそこでチラリとスペインの方に視線を向けて、それからその横にちんまりと佇むイギリスに目をとめた。

その瞬間、ベルのそれまで呆れたように細められていた目がぱっちり開き、口元が笑みの形を作る。

「うっわぁぁ~~!かっわかわええぇぇ~!!」
ベルはいきなり国で一番偉いはずの王様であるスペインを突き飛ばしてアーサーを抱き上げた。
「どこで攫ってきはったんです?!王様かて誘拐は犯罪ですよ?」
と、言っている言葉とやっている行動が全くあっていない。

「自分…俺の事なんやと思っとるん?」
がっくり肩を落とすスペイン。

「ちょっと子供好きすぎて危ない域にはいりかけとるトマト王国の王様?」
と、ベルにきっぱり当たり前に言われるあたりが、すでにガッカリ感満載だ。

何故自分の夢の中なのにこんな扱いなのだろう。
もしかして…実は自分の中に苛められたいというドMな願望が無意識にあるんだろうか…。

スペインはそんな事を思いながら、ベルに抱きしめられて少し赤くなって身を固くしているイギリスをベルの手からひょいと取り上げる。

そしてこれ以上追及される前にと、スペインはもう一つの疑問を口にしてみた。

「預言者様て?」
ベルは取り上げられてむぅとしながらも、覚えてはらへんのですか?と、文句を言う。

「菊様が色々気にされへん方や言うても、遠くから年に1度国の行く末を占いに来て下さってるのに、さすがに怒りはりますよ?
もうええからさっさと支度したって下さい。
あと1時間もせえへんうちに時間になってしまいますわ」

と、言う事でそのチビちゃんはうちが預かっておきます、と、イギリスを取り上げようとするベルからイギリスを遠ざけると、スペインは
「支度はわかったけど、この子は一緒に同席させるで。
せやから子ども用の礼服用意したって?」
と、ベルに申しつけた。





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