子どものための金の童話 第二章_3

「ほんまに懐いてくれるん?嫌われたりせえへん?」

翌日…あれだけ飲んだ割に二日酔いもなくすっきりした顔をしているスペインに、日本がロマーノと共に【子どものための金の童話】の説明をすると、ノリ気ではあるもののやはり近づいて嫌っているような態度を取られるのがつらいと、スペインは確認をする。

「あのなぁ!てめえ、普段のイケイケのラテン気質はどこやったんだよっ!!」
と、遠慮のないロマーノにスペインは、やって…と、口ごもる。

「親分かて1000年も片思いしてるくらいめっちゃ本気の相手に目ぇ合うたびに嫌そうに顔背けられたらさすがに滅入るんやで?
せめて夢ん中くらい嫌われた態度取られとうないやん」

恋に弱気なスペインにラテンの情熱はどこにやった?!と叫ぶロマーノだが、1000年も相手に嫌われていると思いながらも片思いし続けられるというのは、それはそれで十分情熱的なのではないだろうか…と、日本は妙なところに感心をしながらも、そろそろ、と、仲裁に入る事にした。

「まあまあロマーノさん、落ち着いて」
と、憤るロマーノをいったん制して、日本はスペインの方を振り返った。

「確かに…絶対に嫌われないとは限りませんよ?」
その日本の言葉にスペインが少し引く。

そこで日本はにこりと見る者を安心させるような穏やかな笑みを浮かべると、改めて続けた。

「ただ最初の時点ではイギリスさんはイギリスさんの子供時代の性格と容姿を持った子供で、感情的にはニュートラルな状態に設定してあります。
そこで好かれるような態度を取れば素直に懐いてきますし、嫌われるような態度を取れば嫌うようになります」

「好きにしかならんようにはでけへんの?」
と言うスペインの質問に、日本は
「それではイギリスさんではなく、イギリスさんの姿かたちを取ったお人形でしかないでしょう?」
と、苦笑する。

「今回この本をお貸しするのは、何もスペインさんに一時の夢を見て自己満足して終わって頂くためではないんです。
どうすればイギリスさんに好かれるのか…それを学んで少しでも、現実のイギリスさんに接する時の参考にして頂いて、片思いを脱出して頂ければと思うのです。
あの方も寂しがり屋さんですからね。
私はご存知の通り家も遠く早々会いに行って差し上げる事もできませんし、あの方の家の近くに、あの方が心を許せる方がいて下されば、親友としてこれ以上嬉しい事はありません」

キラキラしいほどの善意に満ちた笑顔…。

自分達といた時のアレは幻だったのか…と、ロマーノとプロイセンは思う。

裏を知っている自分達ですらそうなのだ。
何も知らないスペインの眼には日本はさぞ神々しく映っている事だろう。

「せやなっ!好かれる方法がわかっとれば、現実でも最初は避けられたかて、そうやって接していけばそのうち好きになってくれるかもしれへんもんなっ!」

ここであっさり乗ってくるのがスペインのスペインたるゆえんである。
こうしてスペインとロマーノはお土産に童話を二人分と金のロウソク二人分を持って帰って行った。

決行は次の会議の1日目!
満月の夜だ!


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