子どものための金の童話 第二章_2

「そうですねぇ…イギリスさんは愛情に飢えているところがおありですしね…。」

今日は酔わせようと思って飲ませている事もあり、案の定、スペインは早々に酔っぱらうと毎度同じ愚痴をこぼし始めた。
それに対してロマーノはため息だが、日本はさもお察しいたしますと言った感じに相槌を打つ。

普段そんな風に自分の話をきちんときいてもらえないせいか、スペインは目を潤ませて
「そうやろ?!やっぱ日本ちゃんはようわかっとるわ~。」
と、日本の手を取るが、そこでロマーノが
「はいはい。やめとけ。日本に絡むな」
と、その手を引きはがした。

「ロマ冷たいわ~…」
と半泣きなスペインに、プロイセンがすかさず
「まあいいから飲め」
と、酒を注ぎ、ロマーノに日本を避難させろ、と、目配せをした。


そこでロマーノはたいして飲んでもいないのに不満げに

「仏英派の私が新境地を開くために、スペインさんにその可愛がり方についてkwsk教えて頂かないとご招待した意味がないじゃないですかっ!」

と、すっかり八つ橋がはがれおちた発言をする日本を引きずっていく。

「あのな…今はまだ大人しい方だからな?あいつ飲むと力加減がわからなくなるから、その気なくても日本の手くらいは握りつぶしかねねえぞ?」
と、隣室まで日本を引きずって行き、パタンと襖を閉めたところでロマーノが顔をしかめる。

「手…左手くらいなら…夏の新刊のネタのためなら……。
私ね、西英って殺伐としたイメージだったんですよっ!
ていうか…海賊ネタなら西英ってより英西でしょうかね?
それがなんですか、このけしからん状態はっ!
片思いから甘々ハピエンフラグですかっ?!
ああ、ペドを舐めてましたっ!そうですよねっ!
あのペドが童顔のイギリスさんを心から憎めるわけないじゃないですかっ!
西英万歳っ!!!!」

「…悪ぃ…言ってる意味が半分くらいわからねえよ…」

なんだかたいして飲んでもいないのに酔ってでもいるかのような日本のテンションに、ロマーノはスペインをここに連れて来たのを少し後悔し始めた。

「つまりですね…スペインさんの楽園がここにあるんです…」
と、そこで日本が唐突に押し入れの戸をあけて、身体半分その中に入り込んだ。

そう言えば日本の絵本には押し入れから冒険に行く話があったな。
それとも○ラえもんの、なんちゃらドアの開発にとうとう成功したのか…。
と、半ばロマーノが現実逃避をしかけた時、日本は押し入れの戸をぴしゃん!と閉め、取り出した段ボールの中から一冊の本をロマーノの方に差し出した。

どうやら押し入れの戸をあけたのは、この本を出すためだったらしい。

「はあ?童話?」
ロマーノはぞんざいな言い方とは裏腹に、丁寧にその本のページをめくっていく。

金色の表紙には【子どものための金の童話】と言うタイトルが銘打ってあるものの、中を見ると1ページ目に謎の詩が書いてあるきりで、2ページ目からは白紙である。

「これ…自分で書けってか?」
わけがわからない…と、ロマーノが眉をしかめると、日本はフフッと笑みをこぼした。

「いえ、これはですね、“飛び込む絵本”と言って、絵本の中に入り込んで遊んでいると、その様子が自動で描かれると言う…わが日本国の技術の推移を集めて作成した、ド○えもんも真っ青な素敵アイテムなのですっ!」

高いテンションで説明をする日本。

この無駄に高い技術力をもう少し別の方向に生かせば不況だって簡単に脱出できるのではないだろうか…と、少し遠い目をしながらも、ロマーノは段ボールを指差して確認する。

「なあ…主旨はわかった。
イギリスもスペインの事を嫌ってはいねえけど、スペインがあの状態で嫌われてるって信じ込んでヘタレて後ろ向きになってるから、スペインにこいつを使わせて夢ん中でイギリスと戯れさせて、イギリスと一緒にいる事に慣れさせる事によって、いつものペースを取り戻させてアタックさせようって事だよな?
なのになんでこいつはそんなにいっぱい用意してあるんだよ?」

そう、段ボールいっぱいの金の絵本。
嫌な予感がしないでもない…。
そして…残念ながらその予感と言うのはしばしば当たるのだ。


「もちろんロマーノさんも一緒に入るんですよ♪」
と良い笑顔で言う日本の言葉は空耳だったと信じたい。

今結構満たされている自分が何故そんな怪しげな物に?
いやいや有り得ない…と、ジリジリと後ずさりするロマーノに、日本はそれはそれは優しげな顔で微笑む。

「ロマーノさん…ロマーノさんとスペインさんの夢はリンクさせる予定ですが、その他の夢の中の主要人物は国の方々で設定予定なんです」

「そ…それがどうしたんだよっ」

聞いてはいけない…聞いたら引き下がれなくなる…。
幼い頃からスペインに保護されて育てられたロマーノはそんな事を覚える必要もなく…当然知らなかった。

ついつい聞いてしまったその瞬間、彼の敗北は決まったと言っても良い。

「その中には当然師匠…プロイセンさんもいるんですよ?
夢の中だからこそ、普段言えないあんな事やこんな事を言う事も、普段出来ないあんな事やこんな事をする事も出来ちゃったりしませんか?」

ああ…そうなのだ。
今更素直になれないだけで、実はロマーノもプロイセンにベタベタしてみたくないわけではない。
先日などそんな欲求が大きくなりすぎたのか、プロイセンの頭に止まることりさんになった夢まで見てしまったほどだ。

普段できないだけに想いはつのりまくるのだ。

さすが日本。さすが空気を読む国ナンバーワン。
さすが元祖ツンデレ国家イギリスと長く親友をやっている国…。
ただのツンデレへたれ国家が勝てる相手ではなかった。
ロマーノは諦めのため息をついた。

こうしてロマーノをも巻き込んで、【スペインをイギリスに慣れさせよう作戦】が決行される事になったのであった。



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