子どものための金の童話 第五章_2

「旅用の服…用意せなあきませんなっ」
と、ベルギーが目を輝かせるのに日本も
「私も旅を重ねる者としてアドバイスできると思います」
と大きくうなづく。

なんだか危険な匂いがするが、ここは下手に関わらない方が良い。
用意されたモノがあまりにひどければあとで何か買ってやろうと、スペインは
「ほな、俺らは武器みよか~」
と提案するが、そこでイギリスからは別の意味で危険な匂いのする提案をされた。

「あのなっ桃太郎は鬼退治に行く時にきび団子を作って持っていくんだぞっ!」
子供らしくふくふくとした薔薇色の頬を紅潮させながらキラキラした目で見上げる様子は実に可愛らしいが…この子に“食べ物を作らせる”というのはあまりに危険な香りがしすぎて頂けない…。

たとえ小型化、幼児化していようが、おとぎ話の世界だろうが、イギリスはイギリスだ。
鬼に投げつけるためならとにかく、そんなものをお供にやったりしたら……

「あ、ええのか」
スペインはあっさり言った。

お供が動物とは限らないわけで…そうするとせっかく二人旅のところを邪魔する奴をていよく追い払える……などとなかなか外道な事を考えながら、
「そうやな~。台所貸したるから、頑張って作り~」
と、にっこり太陽のようなと称される満面の笑みを浮かべて了承する。

こうして桃太郎のきび団子というより、白雪姫の魔女が毒りんごを作成中という方がぴったりの毒々しい団子作成風景をちらりと確認後、スペインは自分のために昔よく振り回したような戦斧を用意し、イギリスのためには柄の処に大きなルビーの付いた可愛らしいロッドを見つくろってやる。


そして…そうこうしているうちにベルギー&日本が用意して出てきた衣装は…そう、もう服というより“衣装”である。

短めのミントグリーンのチュニックの上に胸元に大きなリボンがついた白いケープ。
あちこちにレースやフリルが施されているそれは、なんだか昔のフランスが好んで着ていたようなモノをさらに可愛らしくファンシーにしたようなモノだ。

「女の子みたいな感じやな…」
とスペインが言うと、日本がきっぱり
「魔女っ子をイメージしてみましたっ。アーサーさんと言えば魔女っ子ですよっ!」
と、よくわからない主張を始める。

こうなったらもう何を言っても無駄だ…と理解しているスペインは、街に行ったら新しい服を買ってやろうと決意して、それをスルーする事にした。

そして今度はキッチンへ…

そこでは可愛らしい子ども用のエプロンをつけたイギリスが最後の仕上げとばかりに楽しげにラッピングにいそしんでいた………暗黒物質の……。

可愛らしい真っ白な袋からプスプスと…ならまだしも、もわもわと立ち上るどどめ色の煙…。

その煙がなければ、可愛らしい子どもが可愛らしい袋の端を可愛らしいリボンで結んでいるという、実に微笑ましい光景なのだが……。

もう色々な意味で危ない光景。

KYだのなんだの言われていても、実は自分が唯一まともな支度をしているんじゃないだろうか…と、スペインは思ったが、そこは黙っておく。

思った通りの失礼な感想を口にしてひんしゅくを買うのは、某メタボ国家の専売特許だ。
古い歴史を持つヨーロッパの中でも古参の齢千年を超える身ではもう、『何も分からない子どもなので…』という言い訳はさすがに通用しない。

適度に黙って置くこと…これが島国との付き合いに大事なんやな…と、それぞれ別の意味で暴走している二人の島国を前にして、スペインは悟った。





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