kmt ファントム錆義
「ファントム…いや、黒河先生な…義勇自身に執着したわけじゃねえみたいだぞ?」 とんだ事件があって伝統のミスコンは中止になったものの、無事海陽祭が終わった生徒会室。 忙しかった分半分放心状態の生徒会役員の面々だったが、宇髄の一言で、一斉にそちらに注目をする。
部屋につくなり錆兎はそれぞれ問題の日と同じ位置につくように指示をする。 それから錆兎は黒河の遺書をPCに一旦落とすと、そのまま人数分印刷した。 そのうち、一旦は家や寮に帰っていたらしい村田と煉獄、そして井川、最後に東が入ってくる。
──…間に合わなかったかも…しれない…義勇を…助けられなかったかも…しれない… 直前まで電話に向かって叫んでいた錆兎の目が急に虚ろになって、いつでもしっかりハキハキ話すこの男が驚くほど力なく呆然とした様子でそう呟くのを見て、役員仲間はシン…と静まり返った。
むせ返るような花の匂い… どこからともなく音楽が聞こえる…。 偏頭痛のような頭の痛みに少し顔をしかめながら、うっすら目を開けると、一面の黄色い花…。 どうやら金雀枝の花がばらまかれていて、それが地面を黄色く染めているようだ。
kmt ファントム錆義 目次
1_海陽学園生徒会 2_寮 3_初日 4_ショッピング 5_往年の名優達は舞台のそでで出番を待つ 6_ファントムの恋文 7_候補者チェンジ! 8_ファントムの呪いは女優達を襲う 9_ファントムは闇の世界へとヒロインを誘う 10_ラウルはクリスティーヌを探して夜の...
こうして落ち着いたところで、錆兎は義勇から彼が見た全てを聞いていく。 そして、なるほど…と、頷いた。
【君…お荷物だよね。気づいてない?】 運ばれた病院の一室で義勇のスマホのメールを覗き見て、錆兎は今回の義勇の行動の原因を理解した。
義勇が生徒会室にいない…何故全員が全員、それに気づかなかったのか… 「と…トイレとかの可能性は?」 と言う村田に、 「見てくるっ!」 と、即、不死川が部屋を出て走っていく。
──君…お荷物だよね。気づいてない? 突然そんなメールが来た。
今日も生徒会室は忙しい。 物品が足りないだの、隣が自分達の方まで割り込んでくるだの、些細な事で生徒会室に苦情を言いにかけこんでくる一般生徒。 しかも今日はかけこんできたのは一般生徒だけではなかった。
海陽学園生徒会は翌日も忙しい。 一応学祭準備は午後だが、昼休みになればもう、全員昼食を持って生徒会室に集合だ。
「んじゃ、今日はお疲れさんてことで…」 怒涛の午後だった。 すでに時間は午後7時前。 気づけば最終下校時刻間近となっていた。 OBの来訪、各部の様々な諸手続き、その他学祭関係の諸々の雑務で全員クタクタだ。
そうして翌週の月曜日の午後…それまで家の都合で学校を休んでいてその日が2学期初登校となる不死川実弥は、それも2学期初めての生徒会室で新しい書記を紹介されて硬直していた。
「村田ァ、これで買うもん、全部かァ?」 「うん、それで全部。ホント、助かったよ、不死川。 注文しとくのすっかり忘れててさ、ネットで届けてもらったら実行委員が使うまでに間に合わないから、もう最悪買うだけ買って、タクシーで学校に帰ろうかと思ってたんだけど」
その日はそのまま煉獄だけではなく宇髄も家具を動かすのを手伝ってくれて、無事、私室 2 つが寝室と勉強部屋という用途別の部屋へと様変わりをした。
全てが夢のようだった。 一ヶ月前、いわくつきのオンラインゲームで知り合った錆兎。 その錆兎の口利きで、ここ海陽学園高等部に編入、そして寮に入ることになって、義勇は今ここにいる。
「はあ?生徒会はクラブ活動じゃないだろ?」 都内屈指の名門進学校、海陽学園。 そんな T 大進学率日本一を誇る名門高校の中でもさらにエリートの集まりと言われる生徒会。 そのトップに君臨するのが鱗滝錆兎 17 歳だ。