「と…トイレとかの可能性は?」
と言う村田に、
「見てくるっ!」
と、即、不死川が部屋を出て走っていく。
「いねえっ!念の為下の階までみたけど、いねえぞっ!」
と、その不死川の声に錆兎は青ざめた。
「電話っ!電話かけてみたらどうよ?!」
と、宇髄の言葉に錆兎はバッとスマホを掴んでタップする。
虚しく響く発信音。
つながらない。
それでも何度も何度も短縮を切っては連打を繰り返し続けるうち、ようやくつながった電話。
番号で自分からだということは当然わかっているのだろう。
しかしつながったは良いが、向こうからの言葉はない。
「もしもしっ!義勇っ、今どこにいる?!何かあったのかっ?!!」
と必死に呼びかけるが、電話から聞こえるのはただ義勇の嗚咽だけだ。
──今どこにいる?とりあえず迎えに行くから!!
…と、続けようと思った瞬間のことだった…。
錆兎の耳に、何か衝撃音──おそらく携帯が義勇の手から落ちたような音に思える──が、聞こえた。
何?何が起こっている?!
義勇の音ではない、高い靴音…。
やがて聞こえるハァハァと荒い息遣い…。
「義勇っ?!
どうしたんだっ?!!誰かいるのか?!!
返事をしてくれっっ!!!!」
嫌な汗が全身から吹き出した。
必死に訴える錆兎の耳に聞こえるゾッとするようなしわがれた低い声…
『…クリスティーヌ…ああ…クリスティーヌ……ようやくお前を手に入れた……』
それは紛れもなくファントムの声だった……。
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