ファントム殺人事件_Ver錆義16_時を超えたファントムの想い

「ファントム…いや、黒河先生な…義勇自身に執着したわけじゃねえみたいだぞ?」

とんだ事件があって伝統のミスコンは中止になったものの、無事海陽祭が終わった生徒会室。
忙しかった分半分放心状態の生徒会役員の面々だったが、宇髄の一言で、一斉にそちらに注目をする。


「これ…未発表のまま大事にしまい込まれてた作品な。
うちのジジイがやってる美術館で買い取ることになったんだけどな」
と、ピっと机の上に滑らせた一枚の写真。
金雀枝の花をバックに見覚えのある姿が描かれている。

「これ…義勇じゃん?」
と目をぱちくりする村田に、横から写真を覗きこんだ不死川が

「振り袖着てんだろうがっ!アホっ!」
と軽くその頭を叩いた。

「あ…これ…たぶんうちのお祖母様かも…
と、それを見て目を丸くする義勇。

「そう言えば…お祖母様も女学校時代に家に送り主不明の花が届いてた事があったってきいたことがある…
数回に渡って届けられたサギソウの花に必ず添えられていたカードの内容が”私のクリスティーヌへ、夢でもあなたを想うファントムより”ってものだったとか…」

「お前はぁ~!そこで何か気づけよっ!!」
と、宇髄はがっくりと肩を落とし、

「で?その時の対応は?」
と聞く錆兎には、義勇はきっぱり

「ストーカーだと思って警備を強化したらいつのまにか来なくなったらしい」
と、答える。

「あ~…まあ、仕方ねえのかもしれねえけどなァ…」
と、そこでそれまで黙って聞いていた不死川がため息をついた。

そして、
「なんだか…悲しい話だよなァ。
”ファントム”は別に危害を加えようとかいうわけじゃなくて…見返りすら求めてなくて…単に好きになった相手に花を贈りたかっただけかもしれねえのになァ…
相手に想われないなら、ソッと花を贈るのすら許されねえのかァ…」
と、うつむく。

それに村田がそっと
「”ファントム”ってさ…たまたま想い人が非常に幸運にも自分に微笑みかけてくれた少数の男以外が誰しもなる可能性のある、悲しい男の姿だよな…。
予算…少しくらいなら出せるし、花買おうか…
せめて最後に身代わりとは言えクリスティーヌに一輪の花を供えてもらえたら、気持ちよく成仏できる気がしない?」
と、申し出た。

それに宇髄が少し考え込んで、錆兎に耳打ち。
錆兎が頷くと、宇髄は村田に向かって紙飛行機を飛ばす。
……1万円札で折られている紙飛行機を…。

「一輪なんてケチくせえ事言わねえで、派手に買ってこい!
今年のミスコンは中止になったしな!
せっかく錆兎が選んだ服の趣味堪能しながら、お姫さんに花供えてもらおうぜっ!」

「うんっ!買ってくるっ!!」
と、紙飛行機をポケットに村田が走り出していく。

同じく義勇は錆兎に連れられて寮に着替えに戻った。

そして一旦生徒会室へ集合。

そこから黒河が殺されて吊られた正門前のイチョウの木へ。
そこには学生や教師のみならず、画伯の死を悼む人々の手で多数の花が添えられている。
その中に自分たちも花を供えて役員全員で合掌。

………

その後ろには学生たちが多数。


村田のチョイスで買った真っ白な百合とかすみ草の花束を抱えて、後ろに宇髄、煉獄、不死川と、ごつい男たちを従え、同じく体格のいい会長の錆兎に手を取られて歩く美少女。
その姿を拝む姿が相次いで、学校に新たな伝説が出来たのは、思わぬ事件の余波であった…




2 件のコメント :

  1. 誤変換報告です。「花を備えてもらえたら」→供えて かと(^^;その後の宇髄さんの言葉も同じ誤変換になってました。お暇が有ればご確認ください(u_u*)

    返信削除
    返信
    1. ご報告ありがとうございました。
      修正しました😄

      削除