ファントム殺人事件_Ver錆義7_候補者チェンジ!

海陽学園生徒会は翌日も忙しい。
一応学祭準備は午後だが、昼休みになればもう、全員昼食を持って生徒会室に集合だ。


そこで全員集まった時に宇髄の第一声

「今回な、ちょっとコネで一流のメークアップアーティストを借りられる事になったからな、ミスコンは地味顔がどこまで派手な美人になるかってテーマってことで、村田で行くぞ~」

「はああ?俺えぇ??」
いきなりの発言に、村田が唖然と自分を指差すのに、

「義勇じゃあ、もう馬鹿みたいにぶっちぎっちまうから、どうせならあれだ、一般人に対するハンデっつ~の?
モブ顔でも生徒会にかかればここまで化けるって事を見せつけんのも悪くねえだろぉ?」
と、テンション高く宇髄が言った。

それに
「…ずいぶん突然だな」
と、さすがに目を丸くする錆兎には、煉獄が

「うむ。昨日の一件もあるしな。
これ以上ああいう輩を量産するのもいかがなものだろうと、あれから宇髄と俺と不死川で話し合った結果だ。
色々振り回して悪かった」
と、説明をする。


確かに…普通に男の格好をしていても転入して間もないのにあんな輩が出るとしたら、あの美少女っぷりを全校に晒したら、本当に危険かもしれない。

とりあえず錆兎はミスコンの候補から義勇を外すということには異論はない。

午後からは宇髄が招いたメークアップアーティストがいったん村田を見にくるというので、午後の作業は宇髄と村田を除外して4人で回すことになるな、と、思いつつも、錆兎は忙しい事を想定して持参した、何かしながら食べやすいようにとおかずを握り込んだおにぎりをかじりながら各部の貸し出し機材と予算のチェックをし始めた。


やらなければならない事はてんこ盛り。
そんな風に忙しく机に向かっていると、

「待たせたなぁ」
と、大量の衣装を抱えた宇髄が、何故か黒河幽斎を伴って生徒会室に入ってきた。

「幽斎先生っ、宇髄が何か失礼を?!」
慌てて立ち上がって駆け寄る錆兎を軽く手で制すると、黒河は

「いや、たまたま廊下であってな。
なんだか衣装を沢山抱えていたので楽しそうだなと」
と、チラリと義勇に目を向けた。

「ああ、本当は義勇の予定だったんですけど、色々あって今年は村田が出ることになったんですが…
と、それに気づいて錆兎は言うと、黒河に椅子を勧めたあと自ら紅茶を淹れ、話し相手を務める。

そうしているうちに宇髄と村田が衣装合わせに隣室へと消えていった。



そこで義勇が一人黙々と大量のコピー作業をこなしていると、妙にテンションの高い笑い声が聞こえてきて、再度生徒会室のドアが開いた。

「お~、黒河先生が来てたのか~」
と、煉獄と談笑をしながら入ってきたのは、やはり加藤だった。

「あ…錆兎になにか?」
と、義勇が応対すると、加藤は

「いや、今日は剣道部のOBとして後輩見にきたところに、煉獄がいたんで、ちょっと雑談をな。
で、煉獄にミスコンの候補者が変わったって聞いたんで、ついでに生徒会のミスコン参加者を拝みにきたってわけよっ。
お前さんを差し置いてってことはよっぽど美人なのかと思ってなっ」
と、いつものように豪快に笑って言う。

「あ~、村田なら今衣装合わせの最中ですが、待たれますか?」
義勇が椅子を勧めると、加藤はわりいなっと言って腰を下ろした。

「まあ…煉獄に聞いたんだが…東みてえなのが絡んできたら、とりあえず俺に言えよ?一応おまわりさんだからなっ。
あいつももうすぐ嫁さんもらう予定だから無茶な事はしねえと思うが、前までは随分色々ちょっかいかけてたからなぁ…。OBと称してテニス部入り浸ってたのも、目つけてた奴がいたからって話しだしな」
と、少し眉間にシワを寄せる。

いわゆる良識ある大人らしい。
まあ、警察関係者にそのあたりの良識がなくても困るが…


そうこうしているうちに千客万来というところだろうか。

今度は井川が
「黒河先生はこちらにいらっしゃるか?」
と、駆け込んできた。

それに、
「おお~、ここだ。ここだ。
昨日会ったなんだか可愛らしいミスコン候補者の衣装を見物にきたんだが、候補者が変わってしまったらしくてな。
あの子は生徒会の隠し玉である前に、鱗滝の大事な相手らしくて、外に晒すのはもったいなくてやめたらしいぞ」
と、東に苦言を呈していた時の大御所的な空気が消えて、なんだかおちゃめなおじいちゃんといった感じで黒河が手を振っている。

生徒会室にいるメンバーは昨日とほぼ変わりはないのだが、東一人いないだけでとてつもなく和やかだ。

こうして小一時間ほどして、プロに化粧を施された村田を見てみなびっくり。

「さすがプロの仕事だな…」
「十人並み以上くらいにはなった気はするなァ」
「うむ!普通に美人だ!」
と、言う役員達。

「ん~やっぱり素の義勇ちゃんの方が可愛いんじゃないか?」
「まあ、微笑ましいレベルではあるなぁ」
「先生がそうおっしゃるなら…と言ったところですね」
と、手厳しいOB。

それでもとりあえずはOB達が満足して帰っていくと、そこからは全員怒涛の仕事量だ。

こうしてその日も寮についたのは夜7時。
当たり前に裏口に置かれているオレンジの花束。

昨日の今日なので宇髄は即写真を取って彼女に送り、錆兎はビニールを用意して手袋をはめた上で、カードを手に取る。

──ラウルといつまでも幸せに。クリスティーヌの幸せだけを切に願うファントムより

それをビニールに入れた上で、錆兎は意味を問うように煉獄へ見せると、煉獄はその聞かれている意味を言外に察して

「ラウルとはクリスティーヌの恋人だ」
と、説明した。


そこで返ってきたメールを確認した宇髄が

「あ~、まあ、諦めましたってことみてえだぞ?」
と、再度メールを開いた状態のスマホをかざす。

──花名:キンセンカ。花言葉:別離の悲しみ

とあって、なるほど、と、全員が納得した。


さて、これで全てが終わったのか…それとも何かの始まりなのか……




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