ファントム殺人事件_Ver錆義14_名探偵は事件の顛末を模索しファントムは悲しき生涯を終える

こうして落ち着いたところで、錆兎は義勇から彼が見た全てを聞いていく。
そして、なるほど…と、頷いた。


「じゃ、宇髄と不死川も心配して来てるし、あいつらを置いていくから、少し待っててくれるか?
俺はちょっと加藤さんに話をして、チャチャッと事件の顛末を明らかにしておきたい」

名残惜しいが今回のファントム騒動はきちんと解決しておかないと、すでに巻き込まれていることもあるし、また義勇に危害が及びかねない。

そう思って立ち上がりかける錆兎の腕を

「あ…そうだ…」
と、義勇がつかんだ。

「ん?なんだ?」
と、振り返って顔を近づける錆兎に、義勇はポケットの中から小瓶を取り出して、その蓋を開けると、色とりどりの金平糖の中から1つ取り出して、

「錆兎…考える時に甘いものが欲しいって言ってたから、この前雑貨屋見てる時にこっそり買っておいたんだ」
と、錆兎の口に放り込んだ。


…うん…甘い…可愛い…可愛い…可愛い………

これはダメだ。信頼はしているが、他人に任せたくなくなってきた。


「義勇…」
「うん?」
「お前…起きれるか?」
「うん、起きれるけど?」
「まあ、起きれなくても俺が支えるから構わんが…やはり一緒に行くぞ」
「うん!」

結局こうして義勇を伴って、別室で待機中の加藤のところに行った。





「まるで現実感のない、夢みてえな話だな」

こうして必要な情報を得て部屋を出た錆兎は加藤に状況を説明した。
それに対して加藤は半信半疑といったように首をひねる。

「これは…夢でもなんでもなくて現実です。
もちろん実際にオペラ座の怪人なんているわけはありません。
これは”ファントムに扮した実在の人間が”起こしたれっきとした普通の殺人です」

「犯人…わかってるのか?名探偵」
言いきる錆兎に加藤が問う。

それに対して錆兎が
「あ~、今回の容疑者はですね、初日生徒会室にいた全員です」
と説明を始めると錆兎の言葉に加藤はぽか~んと自分を指差す。
それに錆兎はうなづいた。

「はい、とりあえず加藤さんも容疑者ということで、俺達2人、加藤さん、東さん、宇髄、不死川、村田、煉獄、井川さん、黒河先生を海陽学園生徒会室へ集めて下さい。
集める理由は…そうですね、こうとでも言っておいて下さい。
海陽のミスコンをオペラ座の怪人になぞらえて、参加者の一人がクリスティーヌに当たる人物の目の前で殺害された。
”ファントム”を確保する予定だが、”ファントム”と知らずに関わってしまっている人間に事態の説明をして安全を確保したいので、とりあえず生徒会室に来て欲しい。
こんなところか…」

「わかった。連絡を取らせるぜ」
加藤が言うと警察官が走って行った。



その後錆兎達4人と加藤は学校に向かうため警察を出かけたが、そこで警官の一人が慌てて追って来て加藤を引き止めて耳打ちをする。

「そうか。わかった。詳しい事がわかりしだい連絡しろ」
加藤の顔色が変わる。

「どうやら…手遅れだったらしいぞ。」
警官が下がると、加藤は錆兎を振り返った。
「今学校の方に生徒会室を使うため門を開けておいてもらえるよう連絡をいれたんだが、すでに門はOBの依頼によって開けられている状態で…」
「黒河先生…ですか?」
加藤の言葉を錆兎がさえぎる。

「ああ…もしかして…先生が犯人だとわかっていたのか?」
加藤が少し驚いたように言うのに、錆兎は
「ある意味…ですね」
と微妙な肯定の言葉を使った。

「予測はついているみたいだが念のために説明すると、黒河は学校のイチョウの木で首吊り死体で発見されたそうだ。
おそらく自殺だろう。側にワープロ打ちだが遺書があった。
それには今回の一連の事件への関与を認める記述があったそうだ。
内容はお前の携帯に転送するな」

普通ならまず入って来ないリアルタイムに近い情報。
さすがOBいると便利だな、と錆兎は苦笑しつつ転送された遺書に目を通した。

そこには学校で義勇に一目惚れした事、しかし義勇には年齢相応のパートナーがいるので自分のような老人はふさわしくないであろうと思った事、それでも義勇のために何かしたいと思った事が綴られていた。

そして…義勇に花を贈り、義勇がミスコンで優勝するのに邪魔になるであろう有力な候補者を排除しようとした事、しかし自分のした事を振り返るといつまでも逃げ切れないであろう事を悟って死を選ぶ事にしたと書かれている。

それを錆兎と同じく読み終え、
「老いらくの恋という事で…事件解決か。呼び出しキャンセルしていいか?」
と、加藤が言うが、錆兎は首を横に振る。

「いえ、解決はしてませんよ。ただ、犯人が確定しただけです。
呼び出しはそのままでお願いします」
と、そのまま外へと足を踏み出した。

そして…黒河の遺体発見現場に向かう警察に混じって加藤と共に海陽学園につく錆兎達。
そのまま生徒会室へ一番乗りで辿り着く。




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