コードネームは普憫!
「ただいま~」 そう言って部屋に駆け込み、リビングのソファの上のお気に入りのクッションを抱え込むアーサーが可愛らしくて愛おしくて、思わず顔に笑みが浮かぶ。
「アルトっ!平気か?!!」 ぎゅうっと抱きしめられて見上げると、見慣れた端正な顔。 窓を割った時に切ったのか、頬にツーっと傷が出来て、赤い血が滲んでいる。
5 感のほとんどを奪われていたため、どのくらい時間がたったのかはわからない。 それでも随分と時間がたったように思われた頃、アーサーを乗せたワゴンが停まって、アーサーの閉じ込められていた箱が運びだされた。
エリザとフランソワーズがストーカーを偽装していた その事を知ったのは最悪のタイミングだったと思う。 そのおかげで取らなければならない対処が遅れた。 さあ…どうする?!どうする?!! ギルベルトは焦ってバイクを飛ばした。
――たまには外に遊びに行こうぜ と、メールが来たのは終業式の日。 午前中で学校が終わって午後はギルベルトの家で過ごして帰宅して、シャワーを浴びて寝る寸前だった。
その日…アーサーは姉が帰ってくる前に泣き疲れてギルベルトにしっかりとしがみついたまま寝落ちてしまったのだが、ギルベルトは夜中に戻って来たフランソワーズに、今日あった事をきちんと説明した上で、これからは彼女が郵便を確認するように進言してくれたらしい。
ギルに自宅前まで送ってもらい、礼を言って分かれると、アーサーは門の中に入り、郵便受けを覗いた。 中にはいく通かの郵便物。 それを持って自宅に入るが、姉はまだ帰っていない。 デートだと言っていたので今日は遅いのだろう。 それでも冷蔵庫にはレンジで温めれば良...
いつもの満員電車…。 乗っている時間は長くはないが、朝はモロ通勤ラッシュの時間帯で、学校までスシ詰め電車で通っている。
それはじわりじわりとアーサーの生活に入り込んできた… 日が傾くにつれて次第に大きく伸びて行く影のように…だんだんと…大きく……
それは本当にお伽噺のようだった…… 自宅におそらく姉の趣味で自分と絡めるように呼ばれた男。 綺麗な顔はしているもののなんと 全裸! …ではなく、股間に 薔薇の花 。 全裸より 変態臭い 。 これは絶対にやばいやつだ…!! そもそもいつも ...
――根本的な解決にはなってねえよなぁ…・ アーサーを駅まで送っての帰宅後、ギルベルトはカチャカチャと洗い物をしながら考える。 元々は自分とエリザと…せいぜい桜までの問題だった。 被害を受けるのは自分だけと思えば、回避する方法なんていくらでもある。 だ...
「やっぱり家の側まで送って行った方が良くないか?」 アーサーの家の最寄り駅まで電車で 5 駅。 自分の自宅マンションの最寄り駅まで送って来てくれたギルベルトは少し気遣わしげに少しだけ身をかがめてアーサーの顔を覗き込んだ。
こうして連れて行かれたベンチにうながされるまま座ると、 「本当はカフェとかの方がいいのかもしれねえけど、人居ない方が良いだろ? 目、赤いし」 と、苦笑しながら途中で買った缶ジュースを渡してくれた。
月曜日…学校が教師の研修のため午前授業だったので、早く帰れた午後… 良い人だったなぁ…姉の変態仲間の手先だなんて思って本当に失礼だった…と思いながら、アーサーは庭先で手塩にかけて育てた花を摘んでいる。 桜に頼んでアポイントを取ってもらったので、これからギルベルト...
「アーサー、今日友達来るからねっ! あんたは強制参加よっ!!」 家の暴君がそう告げてくる。
「師匠、師匠も明日フランソワーズさんのお宅にいらっしゃるんですよねっ?!」 非常に爽やかな金曜日の放課後…。 桜が肩口で切りそろえた艶やかな黒髪を揺らしながらぴょんと、一歩ギルベルトの方へと飛び跳ねる。 屈託のない笑顔が可愛い小学校時代からの同級生。 ...
コードネームは普憫! 目次
各章リンク 1章 2章 3章 あらすじ 1章 大学生のギルベルトは腐れ縁の腐女子に騙されてBLを描くモデルにと呼びだされた先で、姉に強制的にモデルをさせられている高校生アーサーに出会う 2章 ギルベルトがモデルを断った後、アーサーの姉が代わりとし...