――たまには外に遊びに行こうぜ
と、メールが来たのは終業式の日。
午前中で学校が終わって午後はギルベルトの家で過ごして帰宅して、シャワーを浴びて寝る寸前だった。
当たり前に『待ってるから』と、待ち合わせ場所と時間が添えられていて、『わかった』とだけ返せば、『楽しみにしてる』と返ってきた。
そう言えば事情が事情だけあって、いつも会うのはギルベルトの家ばかりだったので、一緒に外に遊びに行くのなんて初めてだ。
――嬉しい…
と、携帯を胸元に抱きしめてしばしほわほわとしていたが、次の瞬間ハッとした。
――服っ!何着てけば良いんだっ?!!
今まで同級生と出かけた事すらないので、そんな事すらわからない。
…一応…これ、デート…だよな?
と、そんな風に思えば、絶対に失敗出来ない気がして来て途方にくれた。
そしてひっくり返す引きだし。
クローゼットから出してベッドに放り出す服。
いまどきの大学生は…いや、ギルベルトはどういう服装が好きなんだろうか…
…大変不本意だが……しかたない。
「姉さん、ちょっと相談があるんだけど……」
夜中に訪ねる姉の部屋。
恐ろしい事にカリカリとどうやら薄い本を執筆中だった姉は
「なに?」
と、若干据わった目で睨んできたが、
「あの…明日、ギルと…その…で…デート?で…何着て行ったら良いかと……」
おそるおそる切りだすと、
「それ早く言いなさいっ!!」
と、キラキラした目でタブレットのペンを放り出して、草食獣に襲いかかる肉食獣のような勢いで駆け寄って来た。
ノリノリの姉のおかげで、若干不本意ではあるが、とりあえず衣装の問題は解決。
まあ…もしかしたら姉の趣味が多分に入っている可能性もなきにしもあらずだが、少なくともオシャレには煩い女なので、自分よりはセンスが良いはず…と、これに関しては信じることにした。
まあ…もしかしたら姉の趣味が多分に入っている可能性もなきにしもあらずだが、少なくともオシャレには煩い女なので、自分よりはセンスが良いはず…と、これに関しては信じることにした。
そうして準備は万端。
アーサーは明日を楽しみにしながら、早めに寝ることにしたのだった。
アーサーは明日を楽しみにしながら、早めに寝ることにしたのだった。
――お~ま~え~はあああぁぁ~~!!!!!
休日の朝。
いきなり来たメール。
エリザからの間違いメール。
――アーサー君へのstkrメールの文面…こんな感じで良いかなぁ?
と、気味の悪い粘着内容の台詞のお伺いを、どうやらフランソワーズに送ったつもりだったらしい。
さすがにキレた。
こいつら、本当にどうにかしないとっ!!!
ギルベルトはそのメールに保護をかけると、エリザに電話をかけた。
そしてキレる。
さすがにこれはない。
本当にどれだけアーサーが怯えて参っていたと思っているんだっ!
そう思って電話ごしに怒ると、エリザが暴露した。
いわく…付き合うと言いつつ進展する様子のないギルベルトとアーサーの関係に焦れて、アーサーがそうやって怯えて頼れば、もう少し色々互いを意識して何かするんじゃないかと思ったらしい。
フランソワーズも当然共犯。
下着を盗んだりしたのは彼女らしい。
「お前…今度何かふざけた事しやがったら、叔父さん叔母さんだけじゃなくて、ローデにこのメール転送するからなっ!!!」
「やめてええええっ~~!!!!!!!」
電話の向こうでエリザの大絶叫。
ローデことローデリヒはエリザが幼い頃からずっと片思いしている従兄弟で新進気鋭のピアニストだ。
ああ、本当に早い時期からこうやって脅しておけば良かった…と、ギルベルトは今更ながら思いついたそれに後悔する。
とりあえず今までのソレがエリザとフランソワーズのいたずらだったことを教えてやらねば…と、ギルベルトはいったんエリザとの通話を切って、アーサーの携帯にかける。
…が、つながらない。
早い時間だからまだ寝てるのか?
と、仕方なしにいったん携帯を置いて、先に朝食でも…とキッチンに立とうとした時に、電話が鳴った。
発信者は…フランソワーズ?!
もしかしてエリザから連絡が行ったのか…と、ギルベルトが不機嫌に電話に出ると、何か困った状況というにはあまりにもテンション高いフランソワーズの声。
『もしもし、ギル?今日、あの子にコ○ドームとかローションとかは持たせてないけど、お泊まりOKだからねっ。
あんたの方でその手のもの用意してないなら、あたしこれから届けるけど…』
会話が宇宙だ……
「おい…何の話だ?」
大きなため息と共にギルベルトが聞くと、なんだか電話の向こうでドヤ顔しているんじゃないかと思われるようなフランソワーズの声。
『も~!隠さないでも知ってるわよっ!
昨日あの子にデートの服装の相談受けたからっ!
いつもと違う逢瀬…ってことは当然ステップアップ狙いよねっ?!
お姉さん本当に協力するからっ!!』
「はぁ?何のことだ?」
『なんのことって…今日あんたたちデートなんでしょ?』
「…あんたたちって?」
『あんた…ギルベルトとアーサーが今日は外でデートって聞いてるけど?』
「…俺は聞いてねえけど………」
『ええ??じゃああの子いったい誰とでかけてんのよ』
と、そのあたりでもしかして…と思った。
Stkrの次は浮気偽装とかか…
「お前…手紙や下着泥棒の偽装ばれたからって今度は浮気偽装かよ…」
本当に呆れるやら腹立つやらで、まともに相手にするのもバカバカしくなって通話を切って携帯の電源を落とした。
散々振り回された身としては、もうひたすらに腹立たしい。
あまりに腹が立ったので、料理にそれをぶつける。
そうして出来たチャーハンをさあ食べようと皿に移してダイニングに移動。
アーサーが持って来た写真が目に入ってため息。
…あれ……でも……??
そこで沸き上がる疑問。
皿をとりあえず脇において、ギルベルトはStkrからの封筒やその中身を撮った写真の数々を凝視した。
そして結論…まずいっ!!!!
慌てて再度アーサーの携帯に電話をかけるも返答なし。
そこでフランソワーズの携帯に電話をかけて言った。
「おいっ!!アルトの行き先はどこだっ?!!!!」
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