「もしもし、ばあちゃん?ちょお聞きたいねんけど…お母ちゃんのお父ちゃんて……」
電話をかけたのは母方の祖母の家だ。
陽気で元気なばあさんで、両親がいくら老人の一人暮らしが心配だから一緒に住もうと言っても、自分は自分が好きに生きたいのだと言い張って、ガンとして聞かない。
男よりも男気のあるその祖母は女手一つで母親を育ててきた。
母親が自身の父親について尋ねると、
「あんたは実はあたしが拾ったデカイ林檎から産まれたんやでっ。
だから名前も林檎なんよ~」
と、ケラケラ笑って言うような人だった。
しかし…生粋の日本人で日本人顔の祖母の娘の母は、どう見ても欧米の血が入っている。
そういえば…ジジイも一時放蕩を繰り返して子ども作ってたとか言うてたよな…
その一人が母ちゃんとか言うオチないよな?
まさかな…とは思うものの、否定しきれない。
そんな思いでかけてみると、電話の向こうで
『あ~もしかして…ローマいまさらあんたの事見つけてちょっかいかけとるん?
それが嫌やったから子ども産まれた事も言わへんかったんに…』
と、どうやらお見通しな発言をされて、アントーニョはがっくりと肩を落とす。
「まじか…」
『マジやで~。
でも気にせんとき。
書類上は赤の他人やし、あんたを拘束する権利なんてあらへんのやし』
書類上は赤の他人やし、あんたを拘束する権利なんてあらへんのやし』
「いや…そういう事やあらへんのやけど…別に拘束されとるとかやないわ」
『じゃあなんなん?何か不都合でもあるん?』
と言われて考えてみると、そういえば何もない。
「…ないな…そか、ないやん。おおきにっ、バアちゃん」
さっさと電話を切ると、アントーニョは居間に戻った。
「なんやそういう事やったみたいやわ。
せやけど、バアちゃん子どもの事ジジイに言うてへんかったらしいから、書類上は赤の他人らしいから、気にせんといて」
あっけらかんと言い放つアントーニョに、ギルベルトが呆れた顔で
「お前…本当にこだわらない男だな…」
と溜息をつく。
「そういうとこも…ジジイにそっくりだよ、トーニョ」
と、香もため息をつく。
「とりあえず…アントーニョの事はともかく俺の方はそういうことなんだ。
結果的に騙していてごめんな」
そこで話を戻して、しょぼ~んとするアーサーに香が返って慌てて顔の前で両手を振る。
「ちょ、やだっ!マジやめてって!姫様はマジ悪くないからっ!」
「うんうん、悪いのは全部フランやんなぁ」
とそこでアントーニョが言葉を引き継ぐと、フランが叫んだ。
「え~?!俺っ?!俺なのっ?!!」
自分を指差すフランにアントーニョは
「当たり前やん、自分が悪乗りしたせいで勘違いされてんで」
と言うが…それお前もだろっ!と、ギルベルトからお約束のツッコミが入る。
そんないつもの悪友同士の空気に香は違和感なく入ってくる。
やっぱりこれ解決したらヘキサゴンかなぁ…と、フランが漠然と思っていると、突然香の電話が鳴り響いた。
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