秘密なランチsbg
こうして無事合宿が終わり…年が明けると、3人だったマネージャーが1人減って2人になっていた。 …が、その後、何故か辞めたマネージャー達が戻ってきて、人数は6人に。 さらに以前にも増して練習や試合で女生徒の見物人が増えたのも特筆すべきことだろう。 主将と某1年部員が何かを相談するた...
「鱗滝く~ん、エプロン用意してきたわ、はいっ」 産屋敷学園中等科剣道部強化合宿。 春夏冬と長期休みごとに行われるそれは、産屋敷学園剣道部の伝統であり、学校所有の東京郊外の合宿所で行われる。
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そして今日、その年最後の練習を普通に終え、明日から冬休み。 冬休み2日目から泊まりで強化合宿があり、その前に話し合いをということで、放課後は錆兎の家に直行だ。 当然夕飯も鱗滝家で摂ることになる。
「ずばり言うっ!部の平和のために錆兎主将の恋人のふりをしてくれないかっ?!」 翌日の昼休み…義勇はいきなり炭治郎、善逸、不死川、煉獄、伊之助の1年生組に屋上へ呼び出された。 そしていきなり5人に囲まれたかと思うと、炭治郎のその言葉である。
今日は保険の教諭は所用で出かけていたので、義勇は保健室へ入るとそのままモソモソとベッドに横たわった。 起きていても良かったのだが一応体調が悪いということで来ているわけだし、布団を頭からかぶっていれば声も漏れない。 そう、少し泣きたかったのだ。
こうして向かった体育館… さすがに主将というべきか、錆兎は一年生組より早く体育館入りしていた。 そしてその横には寄り添うようにマネージャーの佐倉。 それまではそれほど意識していなかったが、色々を知るとその距離の近さが急に気になり始める4人。
「主将の例の弁当の彼女、誰かわかったよっ!」 それはいつもの報告会での言葉だった。 ドヤ顔で言う善逸は別に義勇の方を見てはいない。 つまり… 義勇以外の誰か だと思っているという事だ。
正直、錆兎も今の状況を楽しんでいる。
「今日のコンポート、あれ良いアイディアだな。 保冷剤にもなるデザートなんて、さすが義勇だ。 最初は俺の子どもになりたいと言っていたが、今はお前も料理がかなり上手くなったし、子どもよりむしろ嫁にでもなれそうだな」
冨岡義勇には最近学校でちょっとした楽しみがある。 それは……
可愛い…。 とんでもなく可愛い。
鱗滝家につくと一旦荷物を置き、錆兎は台所に。 程よく筋肉のついたスラっとした長身にシンプルな黒いエプロンをつけ、いかにも手慣れてますと言った感じでテキパキと茶の準備をする。
他人と違う…それは色々な意味合いがあるのだが、この人の… 鱗滝錆兎 という人物の違い方は、かなり好意を持たれる系の違いかたなのではないだろうか…。 少なくとも自分が女性なら絶賛片思いだ。 冨岡義勇は鱗滝家で台所に立つ錆兎の後ろ姿を目で追いながら、そう思った。
(あー、ようやく週末か…) 金曜日の部活が終わり、錆兎はホッと一息ついた気分で戸締まりのため部室へと向かう。
ウィンナーのヒマワリに寄り添うウサギやヒヨコ。 小さなウズラとプチトマトのキノコ。 それはさながら小さな絵本のような世界だった。 その中にある少し焦げて茶色くなってしまった卵焼きが、まだ料理に慣れてない人間が作った初々しさを醸し出していて微笑ましい。 うん、本当に可愛らしい。 …...