ドラマギルアサ
ギルベルトはそんな事を考えつつ、温める料理は温めて、そのままで良い物はそのままで、全てをリビングに運びきって、最後にケースに入ったままのケーキを冷蔵庫から出す。 そして一瞬沈黙。
「グーテンモルゲン、アルト」 その様子が可愛すぎて小さく笑いながらギルベルトがそう言うと、半分寝ぼけ眼だったアーサーは大きな目をきょとんとまるくして、それで今の状況に気づいたのだろう。 ぱぁああ~~っと赤くなって、ワタワタと慌て始めた。 「あ、あのっ、おれっ、おれっ、…...
バン!!と、常にもなく大きな音をたててドアを開けると、飛び込んでくるのはまるで幼稚園のお楽しみ会のような可愛らしい飾り。
1月 17 日の深夜…ギルベルトの大切な大切な恋人様は、そっとギルベルトの腕の中から抜けだして、ベッドの上で起きあがった。 その恋人様が、じ~っと自分を見下ろしている視線を感じるが、寝ているフリをする。 普段なら起きて理由をきくところだが、今回の理由はわかっていた...
チクリ…と、シャワーの湯が当たると背中に若干の痛みが走る。 それがなんの痛みかは分かっているので、ギルベルトは少し顔をほころばせた。
そして脳内…… 【いやいや、待て待て、俺様。 まずいよな? 撮影中に手を出さなかったのは理性だ。
こうして当初の計画通り目を輝かせるありえないレベルで可愛らしい恋人を堪能。 恋人の方はしばらくはただただ星空に魅入っていたが、やがて全く上方に向かないギルベルトの視線に気づいたらしい。
…え? 別荘についたのは夜だったので、互いにシャワーを浴びてパジャマに着替えたところで、昨年の夏過ごしたかつて知ったるはずの寝室に入った恋人様は、驚きの声をあげた。
(お~~~い…可愛すぎんだろ……) ギルベルトは自分の正面で真っ赤になるアーサーを前に内心悶えている。 告白したつもりが演技の練習だと思われていたっ!! そんな衝撃の事実が発覚。 そのせいで恋人が肺炎を起こして死ぬところだったなんて、本当に自分...
そして午前中、病院で診療を受け、そのまま高速へ。 ギルに言わせると今乗っている高速は山の中を通っているせいもあって、海側を通るもう一本の有名な高速道路に比べると、どこか単調で華やかさにかけるらしいが、アーサーからしたらビルの多い都会を抜けて、両側の景色が緑生い茂る山に...
──旅行に行こうぜっ!アルト それは鶴の一声ならぬギルの一声であった。
──アルト…大丈夫か?苦しくなったらすぐ言えよ? 随分と長い間、下がらなかった熱。 胸の痛みも息苦しさも完全に消えたわけではなかったのだけれど、家に帰りたいのだ…と泣きながら訴えたら、ギルベルトは自宅療養に切り替えてくれた。 そして、ちょうど撮影が終わったばかりで...
いつもいつも拒絶されるのが怖くて伸ばせなかった手… いまなら…そう思って伸ばすと、それをまるですごく大切な物のように手に取ってくれる。 伸ばした手を両手でしっかりと…しかし恭しく包まれて、指先に静かに口づけを落とされた。 そして…さきほどから何度も繰り返さ...
「え?ちょっと待てっ!! なんでそんな話になってんだ?? マジ誰かが変な事吹き込んだのか?!!」 と、こんな慌てたギルベルトは初めてで、びっくりしてしまう。 自分は何かおかしなことを言ったのだろうか?
「…よく…覚えてないんだけど……気づいたらここにいるし……ギルに迷惑かけてるみたいで……」 さらにそう言うとギルベルトの顔が険しくなって、アーサーはビクッと身をすくめた。
自分みたいなつまらないなんの価値もない人間が、みんなにとって必要な大スターであるギルベルトを煩わせるなんて事はあって良いわけがない… そう思ってアーサーは口をつぐんだ。 そして口から出られなくなった想いは目から透明な雫となって零れ落ちていく。 それに気づか...
一体何が起こってる? それが目を覚ましてまず思った事だった。 確か自分は意識を失って…次に目を覚ました時にはそれだけはしっかり抱きしめていたはずの元恋人に模したクマのぬいぐるみギー君が無くなっていて… そして今、再度気を失って目を覚ますと、その元恋人が目の前にいる。
「えっと…ギルちゃん自身の体調は大丈夫? ダメなようならちゃんと治療受けてね。 …坊ちゃん、ずっとギルちゃんのこと呼んでたから…目を覚ました時にギルちゃんが倒れてたら下手したらショック死しちゃう」 少し苦笑交じりに隣に立ったフランシスが言う。 「ああ…...
――ギルちゃん?? 苦しくて喉に手をやると、遠くで慌てたような声がした。 いや、遠くにと思ったのは間違いだったか… ギルベルトが遠くに感じていただけで、実際はすぐ隣にいたらしく、労わるように差し伸べられる手… それをギルベルトは跳ねのけた。
病院に着くと運転手に礼を言ってタクシーを降り、病室へと急ぐ。 エレベータを待つ時間も惜しく、 2,3 階くらいなら階段をかけあがりたいところだったが、あいにく 7 階の特別室なのでどう考えてもエレベータの方が早いと、イライラと足踏みをしながら待った。