ドラマで始まりひっそりと続く恋の話_19

そして脳内……

【いやいや、待て待て、俺様。

まずいよな?
撮影中に手を出さなかったのは理性だ。


うん、手ぇ出しちまったら多分翌日に差し支えないレベルなんて事はきっとできない。
だからそれは正解だ。

じゃ、撮影終わった今なら?

いやいや、ダメだろ。
相手は病みあがりだ。

いや…でもシチュエーション的には……

何言ってんだ、馬鹿か~、お前はっ!!
抱き殺しちまったらどうすんだよっ!

却下だ、却下っ!!! 】

脳内で天使と悪魔が格闘する。
かろうじて天使が辛勝。


そう、もちろん元々はそのためにセッティングした部屋と言うのもあるのだが、当初の予定では普通に撮影が終わって、少し時間が出来たところでゆっくりとデートを重ねて数カ月。
告白して1年後に…というつもりだった。

よもや告白を告白と受け取られていないと言う事も、それでアーサーが出て行ってしまう事も、もちろん、それで体調を崩すなんて言う事も、想像のはるか想定外の事だった。

そんな想定外だらけの事が起きたおかげで、予定よりも随分と早くここにいるわけなのだが、だからと言って、病人を押し倒して良いと言う事には到底ならない。

我慢、我慢…と思うものの、動きを止めて百面相をしているギルベルトをやっぱり不安げな目でじ~っと見あげる恋人様の可愛さは最強最凶で……

「…ギル…何か怒ったのか?
……俺の事……嫌になった…か?」

じわりと大きなまるい目に浮かぶ涙を見た瞬間、悪魔の逆転サヨナラホームランで、天使がはるか宇宙の彼方へと飛ばされて行った。


──悪い…本当に…ごめんな?我慢できねえ……

体勢を変えてポスン…と、恋人の身体を寝台に横たえさせて、理性を飛ばしているはずが、意外に冷静にスイッチをいじって、やや角度をつけている寝台を平らに戻す。

そうして枕元に備え付けてあるボックスの中からローションを出したところで、なんだ、お前ダメだとか言いながらそんなもんを用意しておくなんて、始めからそんなつもりでいたんじゃねえか…と、自分の無意識の行動に自嘲しながら、せめても…と、ギルベルトは出来る限り優しく、恋人の唇に口づけを落とした。




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